○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

2382) 「不動産鑑定評価基準に則らない価格があってもよい」とする東京地裁判決に対する平澤春樹氏の意見 

 不動産鑑定士及び再開発コーデネーターそして資産評価政策学会理事でもある平澤春樹氏(株式会社都市開発研究所代表)が、2022年4月22日に、自身のメルマガ「APPRAISAL OPINION」に、令和3年(2021年)12月23日に東京地裁が判決した東京オリンピック晴海選手村都有地不当廉売事件について、不動産鑑定評価及び不動産鑑定業界に対する警告の意見を発表した。

 内容は、不動産鑑定士及び不動産鑑定業界にとって重要なものと判断されることから、平澤春樹氏の了解の上、記事内容を転載する。

 記事中、不動産鑑定会社の名前が記載されているが、氏の了解を得て「甲不動産鑑定会社」と記載する。

 意見書には、裁判所が公表していると思われる当該裁判事件の判決文のアドレスも記載されている事から、アドレスをクリックすれば、当該事件の判決文を読むことが出来ます。

 判決文を読んで、東京都中央区晴海で騒がれている東京オリンピック晴海選手村都有地不当廉売事件とはどういう内容のものか知ることが出来る。

 判決文は、甲不動産鑑定会社が13.39haの土地を5街区に区切り、東京都の要望する建物用途規模から土地価格をどの様に求めたのか、殆ど不動産鑑定書(提出鑑定会社は「調査報告書」としているが)をなぞって判決が書かれていることから、土地価格の求め方が分かります。

 その土地価格の求め方が、一審判決が東京都勝訴としたごとく適正であるか否か、読者自身判断して欲しい。

 私は、土地価格は上に建つ建物の建築費等によって高くなったり、安くなったりするもので無く、最有効使用を前提に、近隣及び類似地域に所在する同種類の土地との代替、競争によって形成されるものと考えているから、この観点からの価格分析が抜け落ちている鑑定価格が適正であるとはとても思えない。その鑑定を適正とする一審判決は間違っていると私は判断する。

 又、判決は開発法のみの鑑定価格を適正と云っているが、その適正と云う価格を担保するものが無いことから、不適正と指摘されたら、不適正では無いと云って反論する担保する価格が無い。そのことからどれ程適正であると主張しても、適正と認めることは出来ない。適正であると主張するには、適正であることを担保するものが必要である。

 不動産鑑定評価基準が、比準価格のほかに収益価格、積算価格を求めょと云っていることは、相互の価格の存在によって、適正価格であることを担保できるからである。

 適正価格である事を担保する価格が無い、開発法1つだけの鑑定評価格が適正としている判決は失当と私は判断する。

 判決は、根本的に土地価格はどの様にして形成されるのかの基本的知識がゼロに近く、不動産鑑定評価の知識・理解があるのかと疑われる内容のものである。とてもその様な判決を支持することは出来ない。

 平澤春樹氏の意見書提案6号を行う気の無い連合会役員は、危機意識を持っていない幹部と判断され、役職を辞められた方が良い。危機意識を持たず、事なかれ主義でやる気の無い人が、業界幹部として居座っていることは業界の発展と信用向上の阻害にしかならない。即刻辞められた方が良い。  

****

 
    APPRAISAL OPINION 平澤春樹  2022年4月22日

〜不動産鑑定評価基準に則らない価格があってもよい<東京地裁判決>〜

 オリンピック村跡地開発の土地価格について、甲不動産鑑定会社の担当者が、「最有効使用」を誤認した試算価格を提出したことによって、正常価格でも限定価格でも、また、特定価格でも特殊価格でもない試算価格を東京都が採用した結果、第一審の東京地裁の判決では、困りあぐねて「ガイドライン上例外的に鑑定評価基準に則らない価格等調査を行うことができる場合に当るというべきである。」(判決書P85(エ)後段)と判示しています。(田原注記  P85(オ)後段若しくはP84(エ)後段の間違いと思われる。)

  
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/010/091010_hanrei.pdf

 (田原注記 アドレスをクリックして「このコンテンツはフレーム内で表示できません」の表示がてきましたら、「対処方法:」として書いてある「このコンテンツを新しいウィンドウで開く」をクリックして下さい。そうすれば判決文に繋がります。当方のパソコン搭載の基本ソフトが古いため迷惑をお掛けします。それでも繋がらなかったら、https以下のアドレスをコピーして、検索ソフトのグーグルの検索窓に貼り付けて検索して下さい。

或いは、https以下のアドレスをコピーして、自分宛のメールにアドレスをコピー貼り付けして、自分宛にメールを送信して、自分宛に来たメールの中のアドレスをクリックすれば、繋がります。

 それでもなお繋がらなかったら、アドレスが、https://www.courts.go.jp、とありますから、これは最高裁判所のホームページのアドレスです。最高裁判所のホームページを訪れて、当該判例を捜して下さい。事件番号は、東京地方裁判所 平成29年(行ウ)第388号 義務付け等請求事件 判決日令和3年12月23日 です。)

 私達不動産鑑定士が実務において準拠している不動産鑑定評価基準にもガイドラインにも、価格の種類は四つ以外にありません。

 前記判決は、四つの価格種類に「不動産評価基準に則らない価格があっても良い」と判示しているのです。

 不動産評価基準に明らかに違反するものは、それ自体違法であると思われますが、このことは、どの様な結果をもたらすのか考えてみました。

1. 違法な価格を採用した東京都決定は無効であり、都民からの損害賠償の対象になるのではないか。

2. 一審裁判所によって不動産鑑定評価基準にない試算価格が適正であると認定されるのであれば、国土交通省土地鑑定委員会との関係ではどうなるのか。

3. ガイドラインに則らない鑑定評価が可能であれば、不動産鑑定評価基準に違反するとして懲戒処分を受けた不動産鑑定士は遡って名誉回復されるのか。

4. どのような場合に則らなくても良いのか、明示する必要があるのではないか。

5. 今回まで、最有効使用を判定する場合、都市計画法として行政処分がされている法規を前提として、最有効使用を決定していたが、今回の東京都が条件をつけた場合には(東京都および国の機関を含む。)なんでもできることにならないか。

 この結果、不動産鑑定士はますます追認機関として信頼を失うのではないか。

6. 不動産鑑定士の集合体である日本不動産鑑定士協会連合会は、国土交通省担当部署や土地鑑定委員会と現状の見解を含めて、協議、交渉をすべきではないかと思われます。

****

    

  鑑定コラム2380)「裁判には勝ったけれど… ボロが出てきた「晴海フラッグ」問題 ウチコミ・タイムズ」

  鑑定コラム2173)「晴海オリンピック選手村土地価格は特定価格にはならない」

  鑑定コラム2381)「オリンピック要因で土地価格は減価しない 」

  鑑定コラム2386)「晴海選手村土地不当廉売事件の都側の鑑定評価は地価公示法違反である」

  鑑定コラム2387)「開発法1手法の晴海選手村土地価格鑑定を適法とした判決は不当である」

  鑑定コラム2391)「晴海選手村の都側土地鑑定書の取引事例比較法不採用の条件設定は不当である」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ