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2380) 裁判には勝ったけれど… ボロが出てきた「晴海フラッグ」問題 ウチコミ・タイムズ  

 株式会社ウチコミという会社は、不動産投資家へ広告を提供している会社であり、かつ賃借人が大家さんと直接交渉するという特殊な不動産会社である。

 その株式会社ウチコミのホームページに、「ウチコミ・タイムズ」という情報提供部門がある。

 そのウチコミ・タイムズの2022年4月5日付で、「裁判には勝ったけれど… ひょんなところからボロが出てきた「晴海フラッグ」問題」と云う記事がアップされた。

 著者は、「内外不動産価値研究会+Kanausha Picks」の団体で、ウチコミ・タイムズの説明によれば、都市開発・不動産、再開発等に関係するプロフェッショナルの集まりで、主に東京の湾岸エリアについてフィールドワークを重ねているが、全国各地のほか、アジア・欧米の状況についても明るい団体という。

 記事内容は、晴海選手村土地裁判に関係するもので、東京都は晴海選手村土地価格で主張通りの一審結果を得て、裁判に勝ったが、その裁判結果がとんでもなく間違いであることを示す事実が飛び出してきたという記事内容である。

 晴海選手村土地価格の裁判は、一審裁判官の土地価格への甚だしい無知と「役所は悪いことをしない」という予断を持って、東京都に寄り添って、東京都の主張を全面的に認めた甚だ片寄った考え方による違法の判決である。

 原告住民側は、東京高裁に控訴している。控訴審がそろそろ始まるのでは無かろうか。

 判決のボロが出てきたと云うことは、中央区が東京都から晴海選手村の中にある土地及び近くの土地を、区特別出張所等用地、小学校用地として取得した3万1000uの土地価格が、総額177億円で、u当り57万円程度であるということが分かったということである。

 東京都が晴海選手村土地として売り払った土地価格は、u当り96,800円である。同じ東京都が中央区に売り払った土地価格はu当り57万円程度であるとすると、この土地単価の差は何?と云うことになる。
 
 ウチコミ・タイムズの記事を引用すれば、次のごとくである。

 「中央区の21年9月の補正予算で晴海フラッグのため必要となる小中学校建設用地を晴海特別出張所等の施設整備用地として、区が都有地を購入する必要に迫られ、177億円が計上された。

 中央区は、近隣の都有地の路線価が1平方メートルあたり約100万円だったことから、東京都に「公共施設の整備のための用地として使う公共減額により、路線価の5〜6割を支払った」と中央区の幹部は議会などで述べている。

 晴海選手村の土地は13.4ヘクタールで129億6000万円であることから、1平方メートルあたりの価格は9万6800円。しかし、中央区の購入地は3.1ヘクタールで177億円なので1平方メートルあたり57万967円となり、なんと民間デベの主に商業ベースを開発目的にした購入額の5倍以上になる。」

 上記を少し詳しく述べると、中央区が取得した都有地は、晴海4丁目と5丁目の2土地で、晴海4丁目土地は、晴海選手村と道路挟んで反対側の土地で、面積14,598.56u、金額77億5000万円である。u当り530,874円である。

 もう一つは晴海5丁目101番の土地(注)で、面積16,796.49u、金額99億5000万円である。u当り592,386円である。
 (注)この土地は晴海選手村土地の売却土地(13.39ha)対象に含まれていなかった。

 一審の裁判官は、都の晴海選手村土地売払価格は適正であると認定したが、同じ街区の一画にある都有地の売払価格が、592,386円/uであり、同一地域・街区にある都有地の平均価格が96,800円/uと、どうして6.1倍もの開きが生じるのが適正と云えるのか。

 晴海選手村の中の土地を592,386円/uで、東京都が自ら中央区に売却していることは、晴海選手村土地売却価格96,800円/uは、甚だ安く不適正な価格であることを東京都が自ら認めていると第3者からは判断され、その重要な証拠になる。

 中央区が取得した都有地が具体的にどこにあるかと云えば、晴海5丁目の土地の所在は、下記図の「文」の文字のある場所である。晴海選手村のど真ん中にある土地である。

 東京オリンビックの時は、選手の食堂等として使われていた土地である。




晴海小学校用地



 中央区が取得した晴海4丁目の都有地は、上図の画地Bの右側前面道路の反対側にある土地である。

 図の中のA.B.C.D.E画地の数値は、平成28年時の鑑定評価単価である。

 上図A画地の左隣都有地が、中央区が小学校用地として取得した晴海5丁目101番の土地である。土地売買登記日は、令和4年1月31日売買登記である。売買代金99億5000万円の買戻特約登記付の東京都から東京都中央区への所有権移転である。登記受付年月日は令和4年2月24日である。

 買戻特約登記の売買代金99億5000万円(u当り592,386円)と登記された。

 中央区が学校用地として取得した99億5000万円は、売主東京都も了解し、買主中央区も区議会で討議して納得した金額である。

 売買金額が返済出来ない状態の債務不履行時の為に用意された買戻特約登記である。

 こうしたいきさつを知れば、売買代金99億5000万円(u当り592,386円)の買戻特約登記の公示力、公信力は、半端無い力を持っている。

 この登記の公示力、公信力は、上記図のA.B.C.D.E画地の鑑定評価価格など吹っ飛ばす力を持っている。A.B.C.D.E画地の鑑定評価価格は、即刻不適正価格とみなされる。

 土地単価を比較すれば、A画地は27,000円/u、中央区の小学校用地取得価格が592,386円/uである。価格時点が違うという反論が出るであろうが、時間差があるとしても、土地価格に上記の開差が大きく縮まるということはない。

 裁判官は、Aの27,000円/uは適正な価格であると判決した。

 冗談では無い。

 土地価格の種類の明示が無くて分からなく、その様な価格を、何の価格種類であるから適正価格であると云えるのか。

 土地価格は、上に建つ建物の建築費によって高くなったり低くなるものでは無い。

 加えてオリンピック要因は、土地価格減価要因には成り得ない。オリンピック要因は土地価格減価の要因になると勝手に決めつけて求めている土地価格を適正であると判断できるものでは無い。

 更に、地価公示価格との規準及び均衡を行わなければならないのに、それを全く行っていない。そのことは地価公示法8条、11条違反の不動産鑑定評価である。

 地価公示法という法律違反が明白な不動産鑑定評価の価格を、適正であると判断する裁判官の方がどうかしている。まともな判断力のある裁判官かと云いたくなる。

 晴海選手村のど真ん中にある都有地を東京都が中央区に売却するとしても、都有地であるからそれは適正価格で無ければならなく、かつ都議会の承認を得なければならない。地方自治法237条2項違反となる。

 それ等手続きが行われているのであろうか。

 その不動産鑑定評価額は幾らなのか。都議会はいつ承認したのか。

 晴海選手村土地13.39万uの原告側の不動産鑑定評価額は1611億円(120万円/u)である。これを東京都は129.6億円(96,800円/u)で売却した。

 そして、その選手村のど真ん中の土地16,796.49uをu当り592,386円で、学校用地として中央区に売却した。

 同じ街区にある土地として、土地価格の単価差が激しすぎる。

 一体、東京都は不動産の価格というものを何と心得ているのであろうか。

 都有地は、政治の道具、自らの損得の手段として、どうとでもなると考えているのでは無かろうか。

 都知事、副知事、財務局長及び部長は何をしているのか。

 都議会議長、副議長、担当委員会会長及び都議会議員は何をしているのか。

 「役人ほど悪いことをするものは居ない」という巷間囁かれる言葉が、そのまま当てはまる官庁のようである。

 13.39万uの都有地を、議会の承認を経ずに、自分達の思う価格で自由に売り払うにはどうしたら良いかと考え、それには市街地再開発事業の網をかぶせ、「個人施行」にすれば、知事が全ての権限を持っているから、事業認可もOK、施行もOKとなる。

 具体的に云えば、東京都が単独に所有する土地の地権者となり、東京都知事が、同時に市街地再開発事業の単一個人施行者となり、また同時に個人施行事業の認可権者である東京都知事が認可を行うという、市街地再開発事業では例を見ない手法を導入する。つまり一人三役である。

 何故、日本一の地方公共団体である東京都が、わざわざ単一「個人施行者」となって市街地再開発事業を行わ無ければならないのか。

 それは、「個人施行者」になる事によって、都市再開発法108条2項を適用して、都議会承認の必要性を無くするためである。


 議会の承認は必要無く、自分達で自由に13.39万uの都有地をいかような価格でも処分出来る。

 この様に内部で考え、謀議したのでは無かろうか。この謀議は、脱法行為を画策しょうとしたものでは無かろうか。

 私は、東京都が個人施行となって事業を行った場合は、個人施行を選んだのであるから、都市再開発法108条2項の適用は出来ないと解釈する。

 個人施行の再開発事業と考えても、本件の場合、従前価格評価を行っていない。従前価格がいくらしているのかもわからずに再開発事業を行っている。この行為は再開発法違反であろう。

 個人施行の場合、個人が納得すれば従前価格評価をする必要は無いというのが、都市再開発法の考えであるから、従前評価をしていなくても法律違反にはならないという反論がなされるであろう。だがその反論こそが、東京都が敢えて個人施行を選択しょうと企んだ証拠となる。それは脱法行為の証拠となる。脱法行為に対しては法律の保護は無い。

 単一個人施行とは云え、都所有地の市街地再開発事業である。事前に、その都有地の価格がいかほどか不動産鑑定評価して、従前価格はどれ程であるかと知って、事業を行うべきである。

 再開発事業が始まり、関係者は、従前価格評価を行っていないことは、脱法行為と批判される可能性があることに気づき、苦し紛れに、鑑定評価で求められている従後価格を従前価格に持ってきて、従前価格は従後価格と同額として、あたかも事業開始前に従前価格評価を行っていたごとく装っている。

 市街地再開発事業とは、従前価格が先にあり、事業完了時に、その価格相当が従後価格として配分され、余った保留床を売却処分して事業費にあて利益を得ると云うのが市街地再開発事業の基本ではなかろうか。

 従後価格を従前価格にもって来るやり方など間違っている。

 この様な行為を見ると、内部も腐り切っている官庁である。地方自治法遵守のお目付役として、旧自治省直結の総務省からバリバリの官僚一人、副知事としての出向が必要であるようだ。

 下記アドレスで、ウチコミ・タイムズの記事を読むことが出来ます。

    https://uchicomi.com/uchicomi-times/category/topix/main/14826/


***追記 2022年4月20日  売買代金99億5000万円は50%減額後の価格

 上記で記した晴海5丁目の学校用地の価格は、公共減額50%した価格です。

 50%減額しない前の土地の更地価格は

         592,386円÷0.5≒118万円/u
となります。詳しくは、鑑定コラム2381)をお読み下さい。
 

  鑑定コラム2175)「個人施行者の再開発事業には都市再開発法108条2項の適用はない」

  鑑定コラム2381)「オリンピック要因で土地価格は減価しない」

  鑑定コラム2382)「「不動産鑑定評価基準に則らない価格があってもよい」とする東京地裁判決に対する平澤春樹氏の意見」

  鑑定コラム2386)「晴海選手村土地不当廉売事件の都側の鑑定評価は地価公示法違反である」

  鑑定コラム2387)「開発法1手法の晴海選手村土地価格鑑定を適法とした判決は不当である」

  鑑定コラム2391)「晴海選手村の都側土地鑑定書の取引事例比較法不採用の条件設定は不当である」


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