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2510) 地価公示価格鑑定書の土地公租公課がA・B鑑定書で違うのはおかしい

 国土交通省は、地価公示法に基づき、選定した標準地(地価公示地)の1月1日時点の適正な土地価格を毎年調査し、毎年3月20日頃に発表している。地価公示価格と呼ばれるものである。

 それは、適正な土地価格を公表することによって、土地取引の指標となり、又、公共事業の土地買収が適正価格で行われることに資するためである。そうして利用されることによって、適正な土地価格の形成に寄与するためである。

 選定されている公示地の地価公示価格は、2人の不動産鑑定士によって鑑定評価(A鑑定書、B鑑定書)され、2つの不動産鑑定評価額から、国土交通省の委員会の一つである土地鑑定委員会が鑑定評価額を決定し、3月末に発表される。

 2人の不動産鑑定士の鑑定評価額は、土地取引事例比較法と収益還元法の2手法で、公示地の土地鑑定評価額を求める。

 画地規模の大きい場合には、収益還元法に代えて、開発法による価格が求められる。

 取引事例比較法は、公示地周辺の土地取引事例と比較して求める手法である。

 収益還元法は、公示地の土地上に、最有効使用の賃貸建物を想定して、その賃料総収入から必要諸経費を控除して求めた純収益を還元利回りで除して収益価格を求める手法である。

 収益還元法の必要諸経費は、維持管理費、修繕費等であるが、その中に土地建物の固定資産税、都市計画税と呼ばれる公租公課がある。

 建物は担当する不動産鑑定士が想定することから、規模、構造、建築費が異なることから建物の公租公課そして維持管理費、修繕費、火災保険料が異なることは止むを得ない。

 土地は同じ土地を、同一時点の価格を求めるのであるから、課税される公租公課が異なることは無い。同じ公租公課額である。

 東京の地価公示鑑定書のA鑑定書、B鑑定書の土地公租公課額はほぼ同額である。

 地方の鑑定評価の仕事で、対象地域と類似している地域にある地価公示価格と均衡を計る為に、類似地域にある地価公示地の公開されているA鑑定書を読んだ。試しに公開されているB鑑定書も読んで見た。

 A・B2つの地価公示価格鑑定書の収益還元法の収益価格を求めている必要諸経費の土地公租公課を見て私は驚いてしまった。

 驚いたことから、他の県の地価公示価格鑑定書を任意に選んで調べてみた。

 任意に選んだ平成4年地価公示価格A・B鑑定書の収益価格の土地公租公課で次のものがあった。



番号 A鑑定書 円 B鑑定書 円
1 467800 131000
2 1408700 1296400
3 26886700 25310000
4 40700 145800
5 1014500 887400
6 435200 538900
7 28529700 33284800
8 3369400 2988500
9 485000 575400
10 2036000 2710000
11 707500 353000
12 675200 472700
13 7439600 6086900
14 27674500 25368200
15 4700100 5142200
16 4280000 5667500
17 8156700 6408700


 任意で地域を選んで調べてみたが、A・B鑑定書の土地公租公課が違うのが余りにも多くて、あきれてしまい、途中で止めた。

 各地域には地価公示価格評価の幹事がいるはずであるが、その幹事は一体何をしているのか。

 日本不動産鑑定士協会連合会は一体何をしているのか。協会会長、担当委員会会長及び委員は何をしているのか。

 国土交通省の地価調査課は何をしているのか。情報が入っていないのか。全く情報収集をしていないのか。

 土地鑑定委員会の委員である不動産鑑定士は何をしているのか。国交省地価調査課に情報を全く入れていないのか。

 同じ土地の公示地を評価するのに、土地の固定資産税・都市計画税は異なっていても良いと考えているのか。

 A鑑定、B鑑定の土地公租公課が上記のごとくかけ離れた金額でも良いと考えているのか。

 同じ金額で無いことに何も考えないのか。

 賃料訴訟で、評価土地の公租公課が実額と違っていたら、相手側代理人弁護士から徹底的に叩かれ、鑑定書の信用を貶められる。そうしたことが生じる程土地公租公課の違いは重要なことである。そのことが分からないのか。

 しっかりせい。

 上記のごとくで求められた地価公示価格に信頼性は無くなる。



  鑑定コラム2345)
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