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2576) 2023年地価公示価格 札幌周辺都市の商業地・住宅地価の上昇率が、全国上位10位を占める

1.2023年地価公示価格の状況

 国土交通省は、2023年3月23日に、2023年1月1日時点の地価公示価格を発表した。

 地価公示地点は、全国で26,000地点である。

 市街化区域では、住宅地は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏と札幌、仙台、広島、福岡は、0.6平方キロメートルを目途に1地点、それ以外の地方圏は1.7平方キロメートルを目途に1地点設定されている。

 商業地は、0.7平方キロメートルを目途に1地点、工業地は、4.7平方キロメートルを目途に1地点設定されている。

 市街化調整区域は、28平方キロメートルを目途に1地点設定されている。

 2023年の土地価格の上昇は、全国平均では、住宅地は1.4%(2022年は0.5%、以下同じ)の上昇である。商業地は1.8%(0.4%)の上昇である。

 2023年の地価公示価格は、住宅地、商業地共に、昨年の土地価格変動率より+0.5%〜1.4%ポイント上昇率が上がっているということである。

 2023年の地価公示価格の商業地、住宅地の上昇率上位10位地点を見ると、全て北海道の土地である。

 それも札幌市に隣接若しくは周辺の北広島市、江別市、恵庭市、千歳市の土地である。

 その原因は、私が考察するには下記の要因で無かろうかと思われる。

 @ 北広島市にプロ野球日本ハムファイターズの野球場(ボールパーク)が築造・稼働し始めた。

 その経済影響が北広島市の商業地価、住宅地価に及び高くなった。

 一方、北広島市の商業地価、住宅地価が高くなったため、周辺都市の土地価格も価格の比較均衡の原則から、地価上昇が及んだ。

 A 札幌市の土地価格が高くなり、隣接郊外の地価の安い利便性の良い地域の住宅地の需要が高まった。

 B 今迄地価水準の低い地域に、需要が集中したために、地価があがったが、従前の地価が低い為、少しの単価増アップでも、上昇率は高く算出される。

 国土交通省が発表する商業地の上昇率上位10位までを記すと、下記である。


商業地            
順位 都道府県 標準地番号 所在地 令和4年公示価格 円/u 令和5年公示価格 円/u 変動率 %
1位 北海道 北広島5-2 北広島市栄町1丁目1番3 67000 86000 28.4
2位 北海道 北広島5-1 北広島市中央2丁目1番3 44000 55000 25
3位 北海道 恵庭5-4 恵庭市緑町2丁目3番7 39500 49200 24.6
4位 北海道 江別5-5 江別市元江別873番19外 24000 29800 24.2
5位 北海道 江別5-6 江別市上江別西町42番6外 30000 37200 24
6位 北海道 恵庭5-3 恵庭市島本町1丁目10番14 21800 27000 23.9
7位 北海道 江別5-7 江別市文京台東町1番25 40500 50000 23.5
8位 北海道 千歳5-2 千歳市錦町2丁目10番3 48000 59000 22.9
9位 北海道 恵庭5-6 恵庭市黄金南7丁目18番6 40000 49000 22.5
10位 北海道 江別5-1 江別市3条6丁目9番2外 27000 33000 22.2
10位 北海道 江別5-3 江別市大麻ひかり町45番8 45000 55000 22.2


 国土交通省が発表する住宅地の上昇率上位10位までを記すと、下記である。



住宅地            
順位 都道府県 標準地番号 所在地 令和4年公示価格 円/u 令和5年公示価格 円/u 変動率 %
1位 北海道 北広島-1 北広島市共栄町1丁目10番3 46000 59800 30
2位 北海道 北広島-4 北広島市美沢3丁目4番8 47000 60800 29.4
3位 北海道 北広島-6 北広島市東共栄2丁目20番5 29800 38500 29.2
4位 北海道 北広島-14 北広島市北進町3丁目3番4 53800 69500 29.2
5位 北海道 江別-2 江別市朝日町13番4 8600 11100 29.1
6位 北海道 江別-3 江別市東野幌町8番6 46500 60000 29
6位 北海道 恵庭-9 恵庭市恵み野東6丁目11番4 24800 32000 29
8位 北海道 恵庭-10 恵庭市松寿町1丁目19番4 20000 25800 29
9位 北海道 北広島-9 北広島市白樺町2丁目5番7 28300 36500 29
10位 北海道 江別-1 江別市向ヶ丘22番10 33000 42500 28.8



 地価公示価格の鑑定書が公開されるようになった。

 公表鑑定書を見れば、その所在地の地域性、状況、市場性等がわかることから、商業地、住宅地の土地価格上昇率1位の地価公示価格の鑑定書の当該部分を転載する。

 地価公示価格の評価は、不動産鑑定士2人によって評価することが法律で決められていることから、2人の鑑定書の当該部分を転載する。

2.商業地価上昇率1位 北広島5-2

 所在等 JR北広島駅西方150m 巾員12m市道 商業地 容積率400%。

   @ A鑑定

 イ、担当不動産鑑定士 木下 俊明氏

 ロ、地域要因の将来予測

 ボールパークの開業予定(2023年3月)とJR北広島駅前西口地区の整備事業への期待感から土地需要が高まっており、地価は上昇傾向で推移するものと予測する。

 ハ、地域要因

 BP及び駅西口再開発計画の進行等の影響から、北広島駅の乗降客数増加に伴う客足の流入が期待され、商業地としての需要が高まりつつある。

 ニ、市場の特性

 同一需給圏は北広島市内の商業地域一円であるが、特に代替競争関係が強い範囲は、北広島駅前の商業地域である。

 需要者は地元の有力法人及び道内外の法人が中心である。

 周辺市の商業地価格と比較した割安感の広がりに加えて、間近に開業するBPへの期待感から、同駅の乗降客数の増加が予想され、不動産需要が高まっている。

 一方、将来の地価上昇を見込んだ商業地の売り控えが認められ、取引自体が減少しつつある。

 A B鑑定

 イ、担当不動産鑑定士 山田 浩市氏

 ロ、地域要因の将来予測

 JR北広島駅西口周辺の再整備事業が進んでおり、定住人口・交流人口の増加が期待される。

 ハ、地域要因

 JR北広島駅西口の商業地域であり、隣接地では複合ビルの建設が進んでいる。

 ニ、市場の特性

 同一需給圏は、北広島市街地の商業地域一円と把握した。

 北広島駅西口周辺で複合ビルの建設をはじめとする再整備事業が進んでおり、周辺の事業用地の需要者も道内外の企業へと広がっている。

 流通する事業用地はほとんど見られないことから実証的な地価水準の検証は難しいが、駅西口地区ではボールパーク開業に伴う交流人口の増加や土地利用の高度化等が見込まれ、周辺住宅地価格との比較からも地価の上昇幅は大きいと判断される。

 B 比準価格と収益価格

 イ、不動産鑑定士木下俊明氏のA鑑定の比準価格は87,000円/u、収益価格は50,400円/uである。

 比準価格と収益価格の割合関係は、

                    収益価格        50,400円
                ──────  =────── ≒ 0.58               
                   比準価格        87,000円
である。
 
 ロ、不動産鑑定士山田浩市氏のB鑑定の比準価格は89,000円/u、収益価格は50,000円/uである。

 比準価格と収益価格の割合関係は、
                    収益価格        50,000円
                ──────  =────── ≒ 0.56               
                   比準価格        89,000円
である。
 
 ハ、収益還元法の必要諸経費の土地固定資産税

 両不動産鑑定士は、比準価格の他に収益価格を求めている。対象地の収益還元法の必要諸経費の固定資産税は同額となっている。

3.住宅地価上昇率1位 北広島-1

 所在等 JR北広島駅北方1500m 巾員8m市道 第1種中高層住居専用地域 容積率200%。
 
 @ A鑑定

 イ、担当不動産鑑定士 山田 浩市氏

 ロ、地域要因の将来予測

 札幌圏の郊外部に流れる宅地需要に加え、ボールパークの立地による定住人口の増加等も期待され、宅地の需給関係はタイトな状況が続くことが予測される。

 ハ、地域要因

 ボールパーク開業が迫っており、経済効果等が期待される。

 ニ、市場の特性

 同一需給圏は北広島市街地の住宅地域一円と把握した。札幌市のベッドタウンとしての性格を有しており、需要者は北広島市内居住者のほか札幌市等からの転入者も多くを占める。

 開業が予定されているボールパークに比較的近く、新駅の設置による利便性の向上も見込まれる。

 需要はあるが、流通する物件が少なく、宅地の需給関係は逼迫している。

 戸建用地として需要の中心となる価格帯は1500万円程度までで、地価の上昇により画地の小規模化が認められる。

 A B鑑定

 イ、担当不動産鑑定士 塩野 未来氏

 ロ、地域要因の将来予測

 周辺でボールパークの建設が進んでいる影響から、大幅な地価上昇が続いている地域で、ボールパークの開業も間近に迫っており、上昇傾向は続くものと予測される。

 ハ、地域要因

 周辺においてボールパーク開業が間近に迫っているほか、数年後にはJR新駅も設置される等、新たな需要が見込まれる住宅地域。

 ニ、市場の特性

 当該標準地の同一需給圏は北広島市中心市街地を主として、北広島市全域の住宅地域である。需要者は市内居住者が大半であるが、札幌市等の市外からの流入もみられる。

 札幌市に比べ割安であることから、堅調な需要がみられたが、ボールパークの建設が決まってからは、期待感から著しい価格上昇がみられる地域である。

 売り物件も少なく、価格の上振れも大きいため、間近に迫るボールパークの開業に向け価格の推移に注意が必要な地域である。

 B 比準価格と収益価格

 イ、不動産鑑定士山田浩市氏のA鑑定の比準価格は59,800円/u、収益価格は32,300円/uである。

 比準価格と収益価格の割合関係は、
                    収益価格        32,300円
                ──────  =────── ≒ 0.54               
                   比準価格        59,800円
である。
 
 ロ、不動産鑑定士塩野未来氏のB鑑定の比準価格は59,800円/u、収益価格は34,500円/uである。

 比準価格と収益価格の割合関係は、
                    収益価格        34,500円
                ──────  =────── ≒ 0.58               
                   比準価格        59,800円
である。
 
 ハ、収益還元法の必要諸経費の土地固定資産税

 両不動産鑑定士は、比準価格の他に収益価格を求めている。

 収益還元法の必要諸経費の対象地の固定資産税は、残念であるが同額では無い。

 同一の土地を評価するのに同一価格時点で土地の公租公課が異なることは論理的にあり得ないことである。

 次年度からは同額にすることを願う。

4.変動率下位1位 北海道奈井江−2

 @ 北海道奈井江−2の下落率

 国土交通省が発表する2023年地価公示価格の住宅地価の下落率の1位になったのは、北海道の空知郡奈井江町の住宅地の奈井江-2の公示地である。

 奈井江-2の公示地の最寄駅等は、下記である。

 JR奈井江駅南東方1000m、巾員8m町道 第1種中高層住居専用地域 容積率150%。
 
 その所在価格等は下記である。

 イ、標準地番号 奈井江−2
 
 ロ、所在  北海道空知郡奈井江町字奈井江575番83

 ハ 令和4年公示価格   3,500円/u

 ニ、令和5年公示価格   3,300円/u

 ホ、変動率        ▲7.0%

 A A鑑定

 前記上昇率1位の地価公示価格と同じく、下落率1位の地価公示価格の公表鑑定書の地域要因、市場性等を転載する。

 イ、担当不動産鑑定士 宮崎 信彦氏

 ロ、地域要因の将来予測

 JR線東側の既成住宅地域で、町内住宅地としての位置づけはやや低位である。

 今後も地域発展の可能性は少ない。このため不動産需要は弱く、地価も下落基調にて推移するものと予測する。

 ハ、地域要因

 新たな不動産需要は乏しく、空家も見られるなどで、地域人口の減少傾向が続いている。

 ニ、市場の特性

 同一需給圏は、概ね奈井江町市街地内に存する住宅地域一円と把握する。

 需要者は大半が奈井江町の居住者で、他市町村からの需要は少ない。

 住宅地として人気薄の地域であり、宅地需要は弱く、今後もこの傾向が続くものと予測する。

 需要の中心となる価格帯は土地は100万円未満、中古の戸建住宅で1000万円前後の取引が中心になる。更地を購入し建物を新築する動きはほとんど見られない。

 A B鑑定

 イ、担当不動産鑑定士 鷲北 順一郎氏

 ロ、地域要因の将来予測

 住宅地域として熟成しており、今後も現状を維持するものと考えられる。

 人口減少や高齢化の進行に歯止めがかからず住宅地の需要は低下傾向にあり、地価は弱含みで推移すると予測した。

 ハ、地域要因

 JR函館本線以東に位置する住宅地域であり、特段の地域変容はなく、利便性が劣る地域環境から需給関係は停滞している。

 ニ、市場の特性

 同一需給圏は奈井江町の住宅地域一円の範囲。

 需要者は壮年期の町内居住者が中心となっており、町外からの転入は少ない。

 人口減少や地域経済の低迷により住宅地需要は弱い。

 取引の中心となる価格帯は土地が100万円未満、中古の戸建物件の取引も見られるが、価格帯は建物の状況により様々である。


5.北海道不動産鑑定士協会の副会長NHKインタビュー

 2023年3月22日18時14分のNHK・北海道のウエブは、「「地価公示」 上昇率全国上位10地点を道内が独占」のタイトルで、2023年地価公示価格について、北海道の商業地、住宅地の上昇率が全国の上位10位を独占していることについて述べている。

 その記事の中で、評価を担当した不動産鑑定士の団体である北海道不動産鑑定士協会の齋藤武也副会長は、NHKの記者のインタビユーに応じて、下記のごとく述べている。

 「札幌市では、近郊の自治体より利便性が低いとされる市内の周辺部でも地価の上昇が進み、ピークを迎えつつあるため、札幌市の地価は今後はある程度、上昇が落ち着いてくるとみている。

 そうすると札幌市中心部でも住宅を買いやすくなるため、近郊の自治体でも地価の上昇がおさまってくるのではないか。

 ただ、北広島市に関しては新球場の活況次第では上昇傾向を維持する可能性がある。」

 そして「道内ではかつての産炭地を中心にこれまでの産業が衰退した自治体が多くある。そうした自治体では地価が下落していくとみられ、札幌市やその近郊との差はますます開いていくことになる」。

 北海道不動産鑑定士協会の副会長である不動産鑑定士の齋藤武也氏は、北海道内の土地価格の二極化を指摘する。

6.終わりに

 北海道不動産鑑定士協会の副会長である不動産鑑定士の齋藤武也氏が指摘する北海道内の土地価格の二極化は、地価上昇率1位と、地価下落率1位の住宅地の状況を読み比べると、その地域、環境状況の違いがはっきりと分かろう。

 同じ北海道であって、土地価格u当り59,800円と3,300円の違いは、地域性、市場性として具体的にはどういう状態の違いであるのか分かるであろう。



  鑑定コラム2456)
「驚き 北海道の土地価格 令和4年基準地価格」

  鑑定コラム2529)「地価公示価格評価担当の不動産鑑定士に2つのお願い」

  鑑定コラム2374)「2022年地価公示価格が発表される」

  鑑定コラム2712)「2024年地価公示地地価上昇トップ 住宅地北海道富良野市 商業地熊本県大津町」
  


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