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2613) 「家賃が土地価格だとした誤りになぜ気づかなかったのか」西田紘一氏寄稿

 不動産鑑定士の西田紘一氏が、「家賃が土地価格だとした誤りになぜ気づかなかったのか」の課題で、東京都側鑑定会社のオリンピック晴海選手村土地価格調査報告書(実質的には「不動産鑑定書」である)についての意見論文を、寄稿して下さった。

 この論文は、現在東京高裁で争っている晴海選手村土地不当廉売事件の控訴審に提出された意見書に一部手を加えた論文と聞く。

 下記にその意見論文を掲載する。

****

          
「家賃が土地価格だとした誤りになぜ気づかなかったのか」

(晴海オリンピック選手村土地評価 A鑑定機関の調査報告書への意見)



不動産鑑定士 西田紘一

          

第1 はじめに

 著名な鑑定機関(以下「A社」と呼ぶ)の土地価格調査報告書は極めて不適正である。

 理由1 土地価格96.1億円(価格時点2016/4/1)の算出が極めて不適正である。

 適正な価格は、土地価格1396億円である。

 理由2 土地価格調査委託書の対象でない家賃を土地価格に上乗せ している。

   A社の土地調査価額は土地価格になぜか選手宿舎の家賃を加算して129.6億円と記している。A社調査報告書(以下「調査書」と呼ぶ)90頁参照。

   土地価格96.1億円  +  家賃33.5億円 = 調査価額129.6億円
      90頁@列合計(74%)       A列合計(26%)      B列合計(100%)


 以下に理由1、理由2について論述する。

第2 理由1 土地価格96.1億円(価格時点2016/4/1)の算出が極めて不適正である。適正な価格は、土地価格1396億円である
 
1.土地価格96.1億円がA社調査書に全く記載されていない

 土地価格96.1億円は、調査書90頁の@列を合計すると判明する額である。

 余りに不自然な驚くべき低い土地価格である。

 133,906uの銀座から2.5kmの広大な土地の価格が、その上に建つ選手宿舎家賃2.87年分と同額であると評価している。

   (土地価格96.1億円÷家賃年額33.5億円=家賃2.87年分)

 土地価格は家賃から算出される。高い家賃が得られる土地の需要は高く、買手間の競合で高い土地価格が成立する。逆も成立する。

 土地価格=宿舎家賃2.87年分は、突出しすぎた、あり得ない利回りであり、土地価格が極端に低額か、家賃が極端に高額か、いずれかを意味している。

 土地価格96.1億円が異常値であることをA社は自認してか、最も重要なこの価格を調査書のどこにも記載していない。

 適正な土地価格1396億円は、別紙「開発法価格の算出」に記した。(別紙省略 東京高裁には提出)

2.土地の正常価格は1424億円である(調査書の価格時点2016(平成28)/4/1)

@ 控訴人の評価は1611億円

 晴海選手村土地の更地を控訴人は1611億円と評価した(価格時点2016/5/25)。

A 選手村食堂跡地の売却価格からは1424億円

 東京都は、選手村のほぼ中央に位置しオリ/パラ開催中は選手村食堂が仮設されていた更地を学校予定地として公共減額50%を適用し、中央区へ99.5億円で売却した。(移転登記2022/1/13)

 (公共減額・・地方自治体や国の相互で公益目的用地を条例に基づき減額譲渡)


 東京都は選手村更地を概ね1638億円と登記時に認識していたと推測される。
 (公共減額後価格÷50%÷学校予定地地積) ×選手村地積=選手村更地価格
  (99.5億円÷50%÷16,264.64u=122.3万円/u)×133,906u=1638億円


 調査価格時点から登記時点まで6年弱の価格上昇を至近の公示地・基準地共通地点価格の推移から1.15倍を得て逆算し、1424億円が算出された。

    1638億円÷1.15倍=1424億円(調査書価格時点2016/4/1)

B 近くの地価公示価格を選手村地積に乗じた更地価格は1319億円

      985,000円/u(中央10 公示地) × 133,906u=1319億円(公示価格時点2017/1/1)


 公示地中央10は、5-3街区から210mの至近にある20階建てのマンション敷地である。

 上記@ABで求められた価格に照らすと、いかに過大な選手村要因減価でも96.1億円のA社調査価格が算出できないことは歴然である。

 正常価格1424億円−A社調査価額96.1億円=(選手村減価が1328億円??)


 96.1億円は、適正な土地価格1396億円からも1300億円下回っている。
      1396億円−96.1億円≒1300億円


3.選手村要因による減価

 分譲マンションを主とし計画的に高層建物が建ち並び、許容される最高限度の床面積を建築して、選手村土地はほぼ最有効使用されていると認められる。

 従って、選手村要因による減価は限定的である。

 総販売額の 30%を占める 50階建タワーの 2棟はオリンピック後に着工であり選手村要因による減価はない。

 一方、総販売額の70%に当たるその他の棟および街区の多くは選手宿舎としての賃貸とその後の内装修復、設備改修工事により1年間の事業期間延長が余儀なくされ、駐車場、大型エレベータ、広幅廊下、その他の負担をはじめ種々の制約を受けることによる減価が認められる。

 工事期間に異常に過大な月数を、工事費に過大な額を意図的に計上して開発法を適用し土地価格を操作したと言わざるを得ない。

 なぜか A社は選手村要因による減価額を独自に算出していない。

4.適正な土地価格 1396億円を算出

 A社調査書には、開発法の採用数値に違和感が多く見受けられる。

 市場水準と異なる分譲価格や建築費を採用して、予め目安にした評価額からの逆算と見られかねない計算である。

 開発法は精緻に適用しても結論が暴走するリスクが常にあり得る。まして操作すればいかなる価格をも算出できる危険に強く留意しなければならない

 分譲価格、建築費、事業期間、投下資本収益率、ほか計算の前提数値について、控訴人、被控訴人の認識に大きな差、あるいは小さな差があり、これらは僅かな差異でも開発法では相乗されて、算出される評価額に大きく影響する。

 一方、控訴人が主張する適正な前提数値を用いて、選手村要因の負担も検討した土地の評価額を算出した。

 A社評価額より15倍高い、適正な土地価格1396億円が算出された。

 別紙「開発法価格の算出」に記した。(別紙添付省略)

 売却価格 (A社評価)96.1億円は実質的な無償譲渡と言えよう。

    適正な土地価格    1396億円(1,043,O00円/u)A社評価の15倍
    売却価格(A社評価 )  96.1億円 (71.766円/u)
    A社評価との差額    1300億円 ( 971,234円/u)


第3 理由2 家賃は土地価格調査委託書の対象に記載されていない

1. 評価対象は土地である

 評価対象は土地である。

 選手宿舎家賃は土地価格ではない

 土地価格 96.1億円の他に評価対象外の家賃 33.5億円との合計額を A社調査書は表示部に「更地としての調査価額」129.6億円と記載している。

 一方、A社調査書に96.1億円の記載は絶無である。

 自らが関知していない選手宿舎家賃を土地評価額に加算し、かつ、加算の事実を意図的に隠蔽しているのは不動産鑑定士として極めて不適切である。

 専門職は、責任を負う範囲を明確に表示する義務がある。

 東京都から聞き知らされた家賃の記載は専門職務でない。この区分を明確に表示せず監査部はじめ調査書の読者には専門職が評価した家賃であり、かつ家賃が土地価格であるかに誤認させる恐れがある。

2. 家賃 33.5億円をA社は評価していない

 東京オリンピック招致委員会が国際オリンピック委員会へ2013年に提出した開催立候補ファイルに同上額(38億円を上限に(割引現価33.5億円)が既に印刷されている。

 評価していない家賃を調査書に評価額として記載すべきでない。

 家賃が土地価格だとした誤りにA社はなぜ気づかなかったのか。

 民法 85条 この法律において「物」とは、有体物をいう。

 民法 86条@土地及びその定着物は、不動産とする。

      A不動産以外の物は、すべて動産とする。

3. A社は家賃評価に関与していない

  家賃評価に関与していないA社が、評価対象でない家賃を土地価格に合算し全額をあたかも土地価格であるかのように調査書に虚偽表示した。

 家賃は土地価格ではない

 削除を要する

第4 結論

 土地価格 1396億円。
 家賃削除。

以上

****

          


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