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2616) 晴海選手村の市街地再開発事業には都市再開発法108条2項は適用出来ない

1.はじめに

 ここまでは、東京オリンピック晴海選手村土地価格の鑑定評価は間違っており、不適切鑑定であることについて論じてきた。

 このコラム編においては、晴海選手村宿舎建設の市街地再開発事業は、再開発事業として都市再開発法108条2項適用違反であり、地方自治法237条2項の法律違反を犯している違法な事業であることについて論じる。

 そして晴海選手村土地不当廉売事件の1審判決は、都市再開発法108条2項の法律解釈を誤っており、違法判決であることについて論じる。

2.何故、市街地再開発事業を選択したのか

@ 東京都は自前での選手村宿舎建設は十分出来る

 東京都は、住宅等を建設する部局を持ち都営住宅の建設(建替を含む)を発注をしていることから、晴海選手村の宿舎建設の能力を持っており、作れる。

 東京オリンピック大会終了後に選手宿舎建物を解体撤去すればよいだけである。そうすれば晴海選手村の土地価格問題も発生しなく、裁判の被告にもならなかった。

 何故、そうしなかったのか。

A レガシー目的

 平成29年7月18日付東京都監査委員会の『中央区晴海五丁目西地区の譲渡価格は違法・不当であり、損害の回復等必要な措置を講じることを求める住民監査請求(その2)監査結果について』(以下「監査回答」と呼ぶ) のP34で、「東京大会は『2020年に向けた東京都の取組−大会後のレガシーを見据えて』の中で、子育て世帯や高齢者など、様々なニーズに対応した住宅を設け、都心に近く水辺に開かれた立地特性を生かし、約13haの敷地に12,000人の多様な人々が居住するまちを創出していくこととしている」と大会終了後の土地利用の姿を述べている。いわゆるレガシー目的である。

 この目的の為に、都自らの選手村宿舎建築は出来なかったという言い訳がなされるであろうが、そのレガシー目的は、設計図書があれば、都自身で晴海の都有地を売却することなく、充分建物を建築することが出来る。

2.胡散くさい市街地再開発事業の選択

@ 殆ど建物利用されていない野原状態の地域に、都市再開発法の市街地再開発事業を適用する必要性は無い

 晴海選手村建物は、市街地再開発事業によって作られている。

 晴海選手村土地は、13.39万uの大規模な埋立地で、晴海5丁目の町名がついているが、建物としては、北東端部に中央地区清掃工場、南西端部に晴海客船ターミナルの建物があるのみである。一部が公園、運動場に利用されているが、大半が未利用地の広大地である。

 都市再開発法は、1条にその目的を次のごとく記している。

 「この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定める」

とある。

 都市再開発法は、既に市街地が形成されていて、その市街地が道が狭く、建物が密集していて合理的で健全な都市機能を果たしていない地域を、再開発事業によって合理的で健全な都市機能の地域に更新するために利用される法律である。

 晴海5丁目の晴海選手村建設予定地は、市街地が形成されている地域で無く、建物が密集している地域ではない。都市機能を更新しなければならない地域ではない。野原が大半である地域である。

 そうした土地地域に、都市再開発法を適用した市街地再開事業を行う必要性は無い。

A 市街地再開発事業を選定した理由

 東京都が晴海選手村宿舎を建築するのに、市街地再開発事業を選択した理由について、監査回答はP34で、次のごとく述べている。

 「東京都は、東京大会中の選手村のみならず、東京大会後の将来のまちづくりを支える道路等の都市基盤を着実に整備することが求められる。

 このため、複数の事業手法を比較考量し、限られた期間の中で、施工者としての都が責任を持って一元的な工程管理を行い、都市基盤と建築物とを同時並行で一体的に整備することができる事業手法として市街地再開発事業を選定した。」

B レガシー目的の選手村宿舎を自らが建てるリスクを避けた

 再開発事業を選択したことについて上記のごとく述べているが、東京都は東京オリンピックを開催することが決定したが、オリンピック選手村宿舎をレガシー目的の建物を造ることを民間にさせ、自らが建てるリスクを回避したのではないのか。

 そしてオリンピック大会に多額の税金が使われている事を都民に見せないために、選手村建設に一銭の金も出さずにタダで作る方策として、市街地再開発事業を利用して作ることを考え、選手村を民間ディベロッパーに作らせ、建物建築費及び利潤相当額の見返りに、都有地を低額に提供することにしたのでは無かろうか。

C 低廉な土地価格でなければならない

 低廉な土地価格にするには、どうしたら良いのかと、自らが考え出したやり方をコンサル会社と相談し、より良い入れ知恵を得て、公共団体でありながら「個人施行者」による市街地再開発事業を選択した。

 土地価格は、民間マンション開発業者・販売会社にその協力を得るために、提供する都有地の価格は、建物建築工事費+利潤相当額程度は安く譲渡しなければならない。

 そうするためには、オリンピック大会の為の選手村は、特殊な建物で土地利用制限が生じ、期間の制限があるというオリンピック要因を強調し、そうした建物建設条件の土地売買事例は無いことから土地の取引事例比較法は行えない。

 採用することが出来るのは開発法のみと決めつけ、開発法の欠点を隠してあたかも適正に求めているごとく見せかけて、都有地を甚だ安い金額で査定した。

3.個人施行者になると都市再開発法の適用条項の免除が多くある

@ 全員同意型再開発事業

 全員同意型再開発事業とは、施行区域内に土地や建物に権利を有する者の全員が同意した場合に、種々の規制を緩和し、権利変換計画の内容を柔軟に定めることができるとする権利変換の方法の再開発事業である。

 都市再開発法(以下「法」と呼ぶ)の第110条の規定による再開発事業である。

 個人施行の再開発事業は、施行地域内に土地建物の権利を持つ個人の何人かが集まって再開発事業を行う事業であるが、その権利を持つ個人全員が事業内容に同意して事業を行う場合、その再開発事業を個人施行者の全員同意型再開発事業という。

 そもそも再開発事業内容に反対の人は再開発事業に参加しない。それ故参加する人は同事業に同意する人に限られることから、当然全員同意型になる。

 施行者は個人施行で、地権者が一人の場合も個人施行者の全員同意型再開発事業になる。

 晴海選手村再開発事業は、施行者は個人の東京都であり、地権者は東京都のみであるから、個人施行者の全員同意型再開発事業になる。

 地方公共団体の東京都が「個人」と云うのもおかしなものであるが、敢えて「個人施行者」として施行するのには、何かの目的があることは充分予測される。

 その目的は、何かは分からないが、「個人施行者」とすることによって、作為的に何か良からぬ利益(都議会若しくは東京都財産価格審議会の土地価格審査議決の回避)を得ようとしているのではなかろうかと思われる。

 その全員同意型再開発の規定である都市再開発法110条とはどういう規定か、下記に記す。

A 都市再開発法110条

(施行地区内の権利者等の全ての同意を得た場合の特則)

 第110条 施行者は、権利変換期日に生ずべき権利の変動その他権利変換の内容につき、施行地区内の土地又は物件に関し権利を有する者及び参加組合員又は特定事業参加者の全ての同意を得たときは、第73条第2項から第4項まで、第75条から第77条まで、第77条の2第3項から第5項まで、第78条、第80条、第81条、第109条の2第2項後段、前条第2項後段及び第118条の32第1項の規定によらないで、権利変換計画を定めることができる。この場合においては、第83条、第99条の3第1項、第102条、第103条及び第108条第1項の規定は、適用しない。

 全員同意である事によって、適用を免れる法条項が大変多い。

B 110条で適用を免れる条項

 イ、73条2項
(権利変換計画の内容)

 第73条 権利変換計画においては、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めなければならない。
 (省略)

2 宅地(指定宅地を除く。)について所有権又は借地権を有する者が当該宅地の上に建築物を有する場合において、当該宅地、借地権又は建築物について担保権等の登記に係る権利があるときは、これらの宅地、借地権又は建築物は、それぞれ別個の権利者に属するものとみなして権利変換計画を定めなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

 (一〜二号省略)
 (3〜4項省略)

 ロ、75条

 第75条 権利変換計画は、一個の施設建築物の敷地は一筆の土地となるものとして定めなければならない。

2 権利変換計画は、施設建築敷地には施設建築物の所有を目的とする地上権が設定されるものとして定めなければならない。

 (3項省略)

 ハ、76条

 第76条 権利変換計画においては、施行地区内に宅地(指定宅地を除く。)を有する者に対しては、施設建築敷地の所有権が与えられるように定めなければならない。

 2〜4(省略)

 *上記法76条は何を云っているかと云えば、再開発施行地区内で宅地を有するもの(これは土地所有権を持っていること)は、再開発後も建物の敷地の所有権が与えられる(敷地の所有権とは土地の所有権である)ことを云う。

 つまり土地所有権者は再開発後も土地所有権を持つということである。

 ニ、77条2項〜5項

(施設建築物の一部等)

 第七十七条 権利変換計画においては、第七十一条第一項の申出をした者を除き、施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)について借地権を有する者及び施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき建築物を所有する者に対しては、施設建築物の一部等が与えられるように定めなければならない。組合の定款により施設建築物の一部等が与えられるように定められた参加組合員又は特定事業参加者に対しても、同様とする。

2 前項前段に規定する者に対して与えられる施設建築物の一部等は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者に与えられる施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。この場合において、二以上の施設建築敷地があるときは、その施設建築物の一部は、特別の事情がない限り、それらの者の権利に係る土地の所有者に前条第一項及び第二項の規定により与えられることと定められる施設建築敷地に建築される施設建築物の一部としなければならない。

 (2項〜5項省略)

3 宅地(指定宅地を除く。)の所有者である者に対しては、その者に与えられる施設建築敷地に第八十八条第一項の規定により地上権が設定されることによる損失の補償として施設建築物の一部等が与えられるように定めなければならない。

 (4項〜7項省略)

 *この条項で注意すべきは、「相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。」という規定である。

 ホ、77条の2第3項〜第5項

(個別利用区内の宅地等)

 第七十七条の二 権利変換計画においては、指定宅地の所有者又はその使用収益権を有する者に対しては、それぞれ個別利用区内の宅地又はその使用収益権が与えられるように定めなければならない。

2 個別利用区内の各宅地の地積は、第七十条の二第二項第三号に規定する面積以上でなければならない。

3 指定宅地の所有者に対して与えられる個別利用区内の宅地は、それらの者が所有する指定宅地の相互の位置関係、地積、環境、利用状況その他の事情と当該指定宅地に対応して与えられることとなる個別利用区内の宅地の相互の位置関係、地積、環境、利用状況その他の事情ができる限り照応し、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない。

4 権利変換計画においては、第一項の規定により与えられるように定められる宅地以外の個別利用区内の宅地は、施行者に帰属するように定めなければならない。

5 指定宅地の使用収益権を有する者に対して与えられる個別利用区内の宅地の使用収益権は、従前の使用収益権の目的である指定宅地の所有者に対して与えられることとなる個別利用区内の宅地の上に存するものとして定めなければならない。

 ヘ、78条

(担保権等の登記に係る権利)

 第78条 施行地区内の宅地(指定宅地を除く。)若しくはその借地権又は施行地区内の土地(指定宅地を除く。)に権原に基づき所有される建築物について担保権等の登記に係る権利が存するときは、権利変換計画においては、当該担保権等の登記に係る権利は、その権利の目的たる宅地、借地権又は建築物に対応して与えられるものとして定められた施設建築敷地若しくはその共有持分又は施設建築物の一部等に関する権利の上に存するものとして定めなければならない。この場合において、借地権の設定に係る仮登記上の権利は、当該借地権に対応して与えられる権利につき、当該仮登記に基づく本登記がされるための条件が成就することを停止条件とする当該対応して与えられる権利の移転請求権として定めなければならない。

 (2項〜3項省略)

 ト、80条

(宅地等の価額の算定基準)

 第80条 第73条第1項第3号、第8号、第18号又は第19号の価額は、第71条第1項又は第4項(同条第5項において読み替えて適用する場合を含む。)の規定による30日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額とする。

2 第76条第3項の割合の基準となる宅地の価額は、当該宅地に関する所有権以外の権利が存しないものとして、前項の規定を適用して算定した相当の価額とする。

 *この条項で注意すべきは、宅地の価額の算定基準は近傍類似の土地の取引価格を考慮して定める相当の金額という規定である。

 チ、81条

(施設建築敷地及び個別利用区内の宅地等の価額等の概算額の算定基準)

 第81条 権利変換計画においては、第73条第1項第4号、第9号、第16号又は第17号の概算額は、政令で定めるところにより、第一種市街地再開発事業に要する費用及び前条第1項に規定する30日の期間を経過した日における近傍類似の土地、近傍同種の建築物又は近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して定める相当の価額を基準として定めなければならない。

 リ、109条の2後段

(施設建築敷地内の道路に関する特例)

 第109条の2 都市計画法第12条の4第1項第1号に掲げる地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち同法第12条の11の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。)内における第一種市街地再開発事業その他政令で定める第一種市街地再開発事業については、事業計画において、施設建築敷地の上の空間又は地下に道路を設置し、又は道路が存するように定めることができる。

 ヌ、118条の32第1項

 第118条の32 前条の規定により第一種市街地再開発事業が施行される場合においては、権利変換計画において、一個の施設建築物に係る特定仮換地以外の施設建築敷地及び施設建築敷地となるべき特定仮換地に対応する従前の宅地に関する所有権及び地上権の共有持分の割合が、当該宅地ごとにそれぞれ等しくなるよう定めなければならない。この場合においては、第75条第1項の規定は、適用しない。

4.個人施行者は都市再開発法108条2項を適用出来ない

@ 晴海選手村土地の市街地再開発事業の施行者は東京都という「個人施行者」である

 監査回答によれば、晴海選手村市街地開発事業は、東京都という地方公共団体で有りながら、

      ・事業の種類は第一種市街地再開発事業
     ・施行者は個人施行
とある(回答書P13)。

 その個人とは東京都という個人である。

 つまり晴海選手村13.39万uの再開発事業は、東京都という「個人施行者」が行う第一種市街地再開発事業ということである。

 東京都は行政体では間違いなく地方公共団体であるが、晴海選手村土地の市街地再開発事業では、地方公共団体の施行者では無く、「個人施行者」ということである。

 施行者は「個人施行者」であると云うことは大変重要である。

A 市街地再開発の事業の種類と施行者

イ、事業の種類

 都市再開発法は、 事業の種類を第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業2つに分けている。

 その違いは下記である。

 a. 第一種市街地再開発事業<権利変換方式>

 権利変換手続きにより、従前建物、土地所有者等の権利を再開発ビルの床に関する権利に原則として等価で変換する。

 b. 第二種市街地再開発事業<管理処分方式(用地買収方式)>

 公共性、緊急性が著しく高い事業で、一旦施行地区内の建物・土地等を施行者が買収又は収用し、買収又は収用された者が希望すれば、その対償に代えて再開発ビルの床を与える。

 ロ、施行者

 そして施行者については、次の5つに分けている。

 個人(第一種のみ施行)、組合(第一種のみ施行)、再開発会社、地方公共団体、都市再生機構等

 事業区分そして施行者区分をしている為、都市再開発法は、それぞれの区分に対応して規定がなされている。

B 都市再開発法108条2項は個人施行者には適用出来ない

 イ、都市再開発法第108条2項は、次のごとく規定する

 「第百八条 第一種市街地再開発事業により施行者が取得した施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地は、次に掲げる場合を除き、公募により賃貸し、又は譲渡しなければならない。この場合において、施行者は、賃貸又は譲渡後の施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地が当該第一種市街地再開発事業の目的に適合して利用されるよう十分に配慮しなければならない。

 (一〜五号までは省略)。

2 施行者が地方公共団体であるときは、施行者が第一種市街地再開発事業により取得した施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の所有を目的とする地上権、施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地の管理処分については、当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は、適用しない。」

 同項の書き出しは「施行者が地方公共団体であるときは」とある。

 同項が適用出来るのは「施行者」が「地方公共団体」の場合に限るのである。

 本件の市街地再開発事業は、「施行者」は東京都という「個人施行者」である。東京都という「地方公共団体」では無い。

 ハ、晴海選手村土地市街地再開発事業には都市再開発法108条2項は適用出来ない

 東京都は地方公共団体であるが、晴海選手村土地の市街地再開発事業では、敢えて「個人施行者」と申し出ている。

 それ故、晴海選手村土地市街地開発事業には108条2項は適用できなく、都有地を処分する時には、地方自治法第237条第2項に従わなければならない。

C 国土交通省都市局市街地整備制度調整室長 澤野宏氏の回答

 『晴海・選手村土地投げ売りを正す会ニュ−ス』(編集責任者市川隆夫)23 2023年3月22日発行の3面に、淵脇弁護士と原告の一人の関口氏が、国土交通省都市局市街地整備制度調整室長 澤野宏氏に、都市再開発法108条2項についてヒアリングした記事が掲載されている。

 当事者のやりとりを転載すると、下記である。

 「(国土A)・・・108条2項でございますけれども、施行者が地方公共団体である場合の、いわゆるその地方自治法等の規程を適用しないということとしている規程であるという形でございます。

 (淵脇) 2項も保留床の処分に関する規程だという理解でよろしいですか。

 (国土A) そうですね。権利変換計画の中で、いわゆるその保留床の管理処分のあり方が定められれると、という形になっているので、それを実現するというところの中でですね、自治法の財産管理処分の規定を排除していくという形で特例として設けているものです。

 (関口) ちょつと確認でもう一度、保留床の処分について、いわゆる地方自治法の規程等は適用しなくていいということですね、保留床の処分についてはですよね。

 (国土A) そうですね。はい。

 国土交通省都市局市街地整備制度調整室長 澤野宏氏は、都市再開発法108条2項は、施行者が地方公共団体である時に適用できることを明言している。

 東京都は地方公共団体であるが、晴海選手村土地の市街地再開発事業においては、施行者は地方公共団体で無く「個人施行者」として届けて事業の認可を得ている。

 それ故、個人施行者には都市再開発法108条2項は適用出来ない条文であると国交省は明言したのである。

 法律条文を読めば、その様な条文である事はわかる。

 東京都は、施行者の個人と行政の地方公共団体であることを使って、あたかも地方公共団体が施行者と思わせるごとく論理のすり替えを見事に行って、違法性は無いと主張している。つまり人を騙くらかしている。

 見事なトリック弁証である。これに一審の裁判官も引っかかって、とんでもない判決をだした。判決のその部分を次章に記す。

5.一審判決は108条2項の解釈を間違えており、判決は失当

 一審判決P35で、判決は次のごとく判示する。

 「イ、そこで、本件譲渡契約の締結における再開発法108条2項の適用の有無について検討するに、同項は、施行者が地方公共団体であるときは、施行者が再開発事業により取得した施設建築敷地等(保留床)の管理処分については当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は適用しない旨を規定している。

 しかるところ、本件再開発事業の施行者は、地方公共団体である東京都であり・・・」

 判決は、晴海選手村土地市街地再開発事業の施行者は、地方公共団体であると判示している。

 そうでは無い。東京都という「個人施行者」が施行者である。

 一審裁判官は全く分かっていない。

 施行者については、前記した監査回答にはっきりと「施行者 個人施行」即ち「個人施行者」と記してある。

 個人施行者として認可され、個人施行者であるから適用され無い都市再開発法の多くの条文による利益を受けているのである。

 控訴審も同じ間違いの法律条文解釈して判決したならば、この法律解釈の間違いは最高裁の判断に委ねるとして上告である。

 108条2項は、個人施行者には適用される条文では無い。

 108条2項が何故「施行者が地方公共団体であるときは」の文言を入れているのかと云えば、地方公共団体が公有地を売却等する場合には、地方自治法237条2項によって、売却等について議会の承認を得ているために、再び、同じ手続きをする必要性が無いとして設けられているための条項である。

 「所有者が地方公共団体であるときは」でないのである。

 東京都が108条2項の適用を受けたいのであれば、何故施行者として「地方公共団体」として認可申立をしなかったのか。

 東京都は行政体としては地方公共団体に間違い無いのであるから、「地方公共団体」として市街地再開発事業の施行者として認可申請をすれば済むことである。

 それを、わざわざ「個人施行者」として認可申立をしたのか。

 それは、都有地の売却には都議会の承認が必要であり、都議会に約129.6億円(9.68万円/u 実態は96.1億円)の土地売却とする書類提出したならば、至近に基準価格中央−3の89.5万円/u(平成27年7月1日時点 所在地・東京都中央区晴海五丁目1番4)がある事から、議会の承認は得られない為に、地方公共団体の東京都であるにもかかわらず「個人施行者」として認可申請し、個人施行者による都市再開発法の条項の適用除外の恩恵があり、都議会の都有地財産売却の承諾の必要性が避けられると判断したのであろう。

 しかし、市街地再開発事業を多く手掛けている東京都の専門部局が、それを知らないと云うことは信じがたい。

 知っていて、敢えて知らんふりしてやったのでは無かろうかと私には思われるが。

 一審裁判官は、見事に東京都の策略に引っかかり、晴海選手村都有地売却については、地方自治法237条2項の都有地の処分には都議会の承認を得なければならないという法律適用は無いと判示してしまったのである。
 
 一審判決は、最も重要な条文の解釈を間違えており失当の判決である。

 判決の誤誘導をしたのは、監査回答では無かろうかと思われる。監査回答の当該部分を次章に記す。

6.誤魔化した監査回答

 監査回答はP60で次のごとく云う。

 「ところで、再開発法の解釈について、国土交通省に関係人調査したところ、本件については、認可権者である都において法令の規程に基づき、適切に判断、対応すべきものとした上で、一般論として、
  @・・・(省略 田原) 
  A・・・(省略 田原)
  B 再開発法第108条第2項(施行者が地方公共団体であるときは、・・・当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は、適用しない。)の規定は、個人施行及び同法第2条第4項に定める施行者(地方公共団体施行)のいずれの場合であっても適用されうるとの見解を得た。」

という判断を示して、違法・不当では無いと監査回答する。

 上記引用に出て来る法第2条の2 1項〜6項は、市街地再開発事業を行う事が出来る人及び組織の規定である。

 4項は、「地方公共団体は、市街地再開発事業の施行区域内の土地について市街地再開発事業を施行することができる。」の規定条文である。

 この規定条文は、施行者になれるという資格を有するという宣言だけである。

 地方公共団体が、自らが個人施行者を選択して市街地再開発事業を行えば、施行者の区分は「個人施行者」になり、個人施行者の区分規定に従って事業を行わなければならなく、地方公共団体であるからと云って施行者の区分が「地方公共団体」に入るものでは無い。

 このことから監査委員の回答書は法律の解釈を間違えている。

 「国土交通省に関係人調査したところ」と明示しているが、前記4章C節で、国土交通省都市局市街地整備制度調整室長 澤野宏氏が、はっきりと108条2項は「施行者が地方公共団体である場合の、いわゆるその地方自治法等の規程を適用しないということとして」と明言している。

 監査回答は、「国交省の見解を得た」と云って、108条2項の適用出来ると誤魔化している。

 監査委員も東京都から頼まれて監査しているのであり、東京都に不利なことを回答することは出来ないのであろうか。

 しかし法律解釈を誤魔化すことは許されない行為である。それが判決に大きく影響を与えているとすれば、裁判官の失態も問われるが、東京都監査委員としての責も問われて当然である。

 誤魔化し解釈して、国交省に責任転嫁するごとくの行為は行うべきでは無かろう。

7.晴海選手村市街地再開発事業は違法

 東京都の晴海選手村土地の市街地再開発事業は、個人施行で、全員同意型の個人施行である。

@ 全員同意型の再開発の土地所有権

 イ、都市再開発法76条は、都市再開発法(以下「法」とする。)の基本的土地所有権の扱いである。法76条については、前記3章B節で記した。

 しかし、全員同意型の場合、法110条によって法76条の適用が無くなる。

 つまり全員同意型の権利変換は、法76条の適用がなされないことから、土地所有権の権利変換は土地所有権で無くとも建物の所有権でも良いということになる。

 ロ、法77条は、権利変換は「相互間に不均衡が生じないように、かつ、その価額と従前の価額との間に著しい差額が生じないように定めなければならない」と規定するが、全員同意型の権利変換では法77条の適用が無いことから、相互の不均衡がでても良く、かつ従前の価格と従後の価格との間に著しい差額が出ても良いということになる。

 ハ、法80条は権利変換の宅地の価格について近傍類似の取引価格を考慮した価格で決めると規定するが、全員同意型の権利変換ではこの規定が適用され無く、同意があればどの様な価格でもよいと云うことになる。

A 全員同意型の同意とは財産の処分行為を意味する

 全員同意型の個人施行の再開発事業は、土地所有権が等価の土地所有権で無く、建物の所有権でも良いという類のものであり、それは土地という財産の処分行為を行うことになる。

 「同意」が無ければ、それ等行為が行えないことから、「同意」すると云うことは、財産の処分行為を行うということになる。

B 地方自治法237条2項

 地方自治法237条2項は、「普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない」と規定する。

C 同意は財産処分であるから都議会の承認が必要である

 晴海選手村再開発事業は、施行者は個人の東京都であり、地権者は東京都のみであるから、個人施行者の全員同意型再開発事業である。

 全員同意型再開発事業に同意することは、前記したごとく参加者の東京都の晴海選手村土地財産の処分になる。

 個人施行の市街地再開発事業を行う土地は都有地である。

 知事個人の所有地で無い。

 東京都という地方公共団体の所有のものである。知事であるから自分の所有物であるがごとく処分出来るものでは無い。

 知事の職務の1つとして都有地という財産を適正に維持管理する義務を負う。

 都有地の土地という財産を処分する場合には、地方自治法237条2項が適用される。即ち都議会の承認又は適正な価格で無ければならない。

 上記より、個人施行で全員同意型の市街地再開発事業の「同意」とは、財産処分をするということを意味することから、晴海選手村市街地再開発事業をするには、同意の前に都議会の承認が必要である。

 都議会の承認がなければ晴海選手村市街地再開発事業は行ってはいけないのである。

 そうであるにもかかわらず、都知事は、議会の承認を得ずに、勝手に独断で晴海選手村の再開発事業に同意し、事業を進めてしまった。

 議会の承認がなくとも適正な価格の処分であり、違法性は無いという反論がなされるであろうが、その処分価格は適正な価格とは認められない価格である。

 「処分価格は適正な価格ではない」と云うことは、別の鑑定コラムで論述した。

 それ故、「適正な価格の処分であり、違法性は無い」と云う反論主張は通らない。

 つまり晴海選手村市街地再開発事業は、事業開始の手続に瑕疵がある。

 最初の事業開始の手続に瑕疵がある事から、その後の手続及び行為が適正であったとしても、晴海選手村市街地再開発事業は法的に適正であるということには成らない。

 違法でも事業を始めて終えてしまえば、事業の違法性は問われ無いというものでは無い。

D 晴海選手村市街地再開発事業は違法

 全員同意型の再開発事業は、参加者の同意と云う行為は土地という財産の処分ということになる。

 それ故、都知事は、晴海選手村市街地再開発事業を始める前に、都議会に都有地処分の承認を得て、事業用地の処分に同意を得なければならなかった。

 都知事は、何故、都議会に承認を求めることをしなかったのか。

 都知事は都議会の承認を得る手続を怠った。即ち晴海選手村市街地再開発事業開始の手続に瑕疵があった。

 それを怠ったことから、晴海選手村事業は違法な再開発事業である。

 このことから晴海選手村の再開発事業そのものは初めから違法ということになる。

 個人施行の「同意」行為は財産処分行為するということ、個人施行者には108条2項を適用出来ないということ、これらを否定した法律解釈を控訴審がした場合は、上告理由になると私は思う。

8.地方自治法237条2項が骨抜きになる

 東京都の晴海選手村市街地再開発事業のやり方は合法であるとしたならば、各地方自治体が真似して全員同意型の個人施行の市街地再開発事業を行いだす。

 そうすると地方自治法237条2項は骨抜きになり、地方自治体のやりたい放題で、地方自治体所有地が、適正価格から著しく低額な価格で処分する事がおおっぴらに行われる事になる。

 何の為に議会があるのか問われる事になろう。何の為に地方自治法237条2項があるのかと云うことになろう。

 日本一の繁華街の銀座に2.5kmの距離にあり、約1610億円する土地が、96.1億円(家賃33.5億円を除いた土地評価額)で取得出来、市街地再開発事業が出来るのであるとすれば、ディベロッパーや市街地再開発事業者はウハウハである。

 裁判官はもっとしっかりと書類を精査し、証拠を吟味して、法律家として間違わない法律判断しなければダメだ。裁判官失格の烙印を押されかねない。



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