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1.はじめに
東京晴海の東京オリンピック選手村建物は、オリンピックの選手村として3ヶ月程度使用したあとは、内装替えを行い、一般の人々に分譲マンションとして売り出すとして作られた。
その分譲マンションは「晴海フラッグ」という名称で、何回かに売出期日が分けられて売り出され、高い競争率で人気のマンションとして販売購入されている。規模大の分譲マンションが何回に分けて販売することは、売主のリスク回避のために行われる行為である。
選手村土地を所有する東京都及び都側不動産鑑定会社は、オリンピック選手村要因という建物であるため、建物の設計の制限、建設期間の制限等によって土地利用が制限され、土地の最有効使用が妨げられることから、オリンピック要因は土地価格に大きく影響すると云って、晴海選手村土地価格を甚だ安い価格で査定し、その安い価格で、ディベロッパーに売り渡してしまった。
3+2は5である。それ故、5−2は3になるのが、世の人々の認識であり、物事の道理である。
分譲マンションの価格は、
土地価格+諸経費を含む建築費=分譲マンション価格
の算式で成り立っている。
土地価格が「3」、諸経費を含む建築費が「2」であり、分譲マンション価格が「5」に相当と考えればよい。
「晴海フラッグ」の名称マンションも居宅分譲マンションとして売り出される経済行為であることから、上記算式の成り立つ道理で価格形成されている。「晴海フラッグ」分譲マンションは、上記道理の算式に当てはまらない価格形成であるという論理主張は通用しない。
東京オリンピック出場の選手達の宿舎として使用された晴海選手村の建物が、「晴海フラッグ」の名称マンションで売り出された。
その実際の分譲価格から、土地価格は如何ほどであるのか分析する。
2.都側鑑定の建築費は規模大要因を考えておらず、高すぎる
@ 建物規模の大きさに伴う建築工事費の単価逓減
商品の取引においては、取引数量が多くなると金額総額も大きくなるため値引き減額されることが多い。大量の商品の仕入によって仕入れ価格を抑え、小口売りは高い価格で販売することによって利益を増やす。このやり方は商いの常識である。
この大量仕入れと価格逓減の関係は、建物建築の場合にも適用されている。
建物を建てる場合、建物の規模が大きくなるにつれて建築費の総額はふくらむが、u当り単価でみると安くなっている。
この現象は建物全てに適用されるとは言い難いが、ほぼ適用出来る(拙著『賃料<家賃>評価の実際』219頁「建物面積と価格」)。
A 建築工事原価分析情報データ
『建築工事原価分析情報』大成出版社、建設工業経営研究会編著1999年4月)において、建築物の原価が調査・分析されて発表されている。建築費データの協力会社は鹿島、竹中工務店、大林組、清水建設等総合建設会社30社、設備専門会社10社である。そのP64に面積と単価の分析が行われている。以下抜粋する。
(データ)
|
|
|
|
(千円/u)
|
|
集合住宅
|
集合住宅
|
事務所
|
事務所
|
面積 u
|
SRC
|
RC
|
SRC
|
RC
|
1000未満
|
280.6
|
248.8
|
460.8
|
303.9
|
1000〜2999
|
241.6
|
213.9
|
299.2
|
251.7
|
3000〜4999
|
209.5
|
199.7
|
332.5
|
231.6
|
5000〜9999
|
189.9
|
181.5
|
314.0
|
227.6
|
10000〜29999
|
187.7
|
187.5
|
291.7
|
289
|
平均
|
221.9
|
206.3
|
339.6
|
260.8
|
標準偏差
|
35.2
|
24.0
|
62.2
|
30.6
|
変動係数
|
0.159
|
0.116
|
0.183
|
0.117
|
(注) SRC:鉄骨鉄筋コンクリート造 RC:鉄筋コンクリート造
B 面積による価格比
1000u未満の工事費の評点を100として、各面積区分の工事費を評点化すると次の通りである。
(評点)
|
|
|
|
|
|
集合住宅
|
集合住宅
|
事務所
|
事務所
|
面積 u
|
SRC
|
RC
|
SRC
|
RC
|
1000未満
|
100
|
100
|
100.0
|
100
|
1000〜2999
|
86
|
86
|
65.0
|
83
|
3000〜4999
|
75
|
80
|
72.0
|
76
|
5000〜9999
|
68
|
73
|
68.0
|
75
|
10000〜29999
|
67
|
75
|
63.0
|
95
|
平均
|
79.2
|
82.8
|
73.6
|
85.8
|
標準偏差
|
12.4
|
9.7
|
13.5
|
10.1
|
変動係数
|
0.157
|
0.117
|
0.183
|
0.118
|
C 平成28年の東京RC造住居専用住宅の建設統計
国土交通省が発表している『建築着工統計調査』によると、平成28年(2016年)の東京のRC造住居専用住宅の建築統計は、下記である。
建築物の数 2090棟
床面積の合計 3,208,451u
工事費予定額 94,513,914万円
これよりu当り建築工事費は、
94,513,914万円÷3,208,451u=29.46万円/u
である。これに設計監理費を5%加算すると、
29.46万円×1.05≒30.93万円/u
である。
1棟当りの面積は、
3,208,451u/2090棟=1,535u
である。
つまり、1棟の建築面積1,535uのRC造居住専用建物のu当り建築費は、30.93万円ということである。
D 5−4街区B棟(RC造14,454.66u)のマンションの建築費(平成28年時)
5−4街区のB棟マンションであるRC造14,454.66uを例にとり、東京におけるマンションの建築費を算定すると、以下の通りとなる。
国交省の『建築着工統計調査』によると、東京のRC造の居住専用建物の建築費はu当り29.46万円である。これに設計監理費5%を加算するとu当り30.93万円である。
1棟の平均面積は、上記の通り1,535uである。
前記の建築面積と価格の関係の評点を利用すれば、
1,535uの評点 86
14,454.66uの評点 75
である。
14,454.66uの建築費の単価は、
30.93万円×(75/86)= 26.97万円/u
である。
総額は、
26.97万円/u×14,454.66u=388,396万円(38億8396万円)
である。
E 都側鑑定の建築工事費に根拠の証拠提示がないこと
都側鑑定の調査報告書(以下「都側鑑定」と呼ぶ)においては、東京中央区にある地域街区に建設予定の板状棟居住建物の建築工事費について、調査報告書P79で、いきなり工事費は、
5-4街区 u当り355,000円
5-5街区 u当り350,000円
5-6街区 u当り360,000円
と単価が記載されている。しかし、これらの単価がどの様にして求められたのか、合理的根拠の説明は全く無い。
かかる単価が適正であると判断するためには、建設会社或いは設計事務所の見積書の証拠とか、類似建物の実際の工事費の証拠提示とか、国交省の建設統計データを示して決めたとか、根拠の証拠提示が必要である。
タワー棟(50階)の建築単価も、同頁で402,000円/uと価格数値のみ記載されても、その根拠の証拠提示も無く、適正であると判断することは不可能である。
未着工ではあるが、開発法で24棟の建物の建物建築工事費を控除して土地価格を求めるのであるから、建築工事費は非常に重要な金額となる。
その建築工事費の見積書等の証拠となるものも無く、どれ程建築工事費が適正であると主張しても、根拠の証拠提示がないものを適正と認めることは出来ない。
この鑑定評価は失当である。
まして、裁判は証拠が重視され、証拠の真贋の判断によって論が進められるものである。
建物建築工事費見積書という書類を証拠提出せよ。
F 建築工事費を意図的に高額としていると考えられること
上記によって同じRC造の面積の同じ用途の建物建築費で、2つの価格が求められた。
イ、国交省の建設統計の平均工事費から 38億8396万円
ロ、報告書工事費 355,000円/u×14,454.66u 51億3140万円
両工事費に12億4744万円の差が出た。u当りでは14,454.66uで除すと、
12億4744万円÷14,454.66u=8.63万円=86,300円/u
である。
その開差は、ロ/イ≒1.32、即ち32%の開差にもなる。
何故この様な大きな価格差が生じたか。
それは建物の建築工事費は、延床面積が大きくなると単価は安くなるという事を考えずに、都側鑑定は工事費を決定しているからである。
かかる手法は、建物価格の総額を意識的に高くするやり方であると判断せざるを得ない。
5-7街区(S造の店舗であるため除く)を除く、5-3〜5-6街区にある全ての建物についても、概ね同様に高額な工事費とされていることから、同様な不自然な操作をしているであろうと予測される。
上記で求められた86,300円/uに、5-3〜5-6の総延床面積を乗じて概算の建築工事費のかさ上げ額を求めると、以下の通りとなる。
街区全棟床面積
5-3街区 115,764.50u
5-4街区 107,599.73u
5-5街区 227,870.11u
5-6街区 211,199.98u
合計 662,434.32u
工事費:86,300円/u×662,434.32u≒57,168,000円(571億円)
建物価格(建築工事費)が、およそ571億円程度かさ上げされていると云うことになる。
この様な建物の鑑定評価を行うべきものでは無い。建物価格は失当である。
このことについて、控訴審判決はP56〜57に掛けて、次のごとく判示する。
「また、田原意見書は、国土交通省の「建築着工統計調査」等を用いて、本件調査報告書の建築工事費がかさあげされている旨主張するが、上記「建築着工統計調査」から建築工事費単価及び一棟当りの床面積を求めるに当たり、建築面積による相違等を勘案せず各種数値を単純平均して求めている上、選手村要因を考慮しておらず、これにより本件調査報告書における建築工事費が高額となっているということもできない(乙69)。」
全く証拠の裏づけの無い都側鑑定の建築工事費が適正と裁判官は判示している。
証拠不要の裁判姿勢である。
証拠不要の判示姿勢であるから、これでは、建築工事費はu当り40万円でも50万円でも、全て適正ということになる。
その様な控訴審裁判官の証拠無視の判決は失当も甚だしい。
3.国土利用計画法の施行に伴う新築分譲マンション価格査定指針の課長通達
『国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について』(昭和50年1月20日 50国土地第4号 旧国土庁土地局地価調査課長)の第2.5.イは、「土地と新築建物を一括譲渡する場合の当該建物の譲渡額相当額の算定については、別記2により算定した額を基準とすることができるものとする。」としており、別記2は「土地の建物(新築に限る)を一括譲渡する場合の建物の譲渡相当額は、次式により算出するものとする。
「建物建築原価×142%=建物の譲渡価額相当額」
としている。建物建築原価とは、建築工事費をいう。
要約すれば、新築分譲マンションの建物価格は、建物原価の42%増までしか認めないという通達であり、いわゆる「42%通達価格」と言われている。
当時は土地価格が急騰し、マンション適地土地の地価高騰を抑制する為に、旧国土庁が課長通達として出したものである。
42%の中には、マンション分譲の諸費用及び分譲業者の利潤も含まれている。
算式は、マンション価格と土地建物価格の関係を端的に表したものであり、現在においても利用価値は高い。
通達は、「土地と新築建物を一括譲渡する場合の当該建物の譲渡額相当額の算定」と云っている。これは新築の分譲マンションの価格のことである。つまり適正分譲マンションの価格の査定指針を述べた課長通達である。
上記の建物の譲渡価額相当額に土地価格を加算すれば、分譲マンションの適正な分譲総額が求められる。すなわち、下記の算式で求められる分譲価格が「42%通達価格」である。
土地価格+建築工事費×1.42=分譲総額
42%通達価格は、実際の販売額が適正な範囲か検証するための査定指針である。
4.「晴海フラッグ」5-4街区の部分的分譲マンション価格
分譲マンションは、一棟全部同時に売り出される訳では無く、数回に分かれて販売されるのが、業界の一般的な販売方法である。この販売行為は、前述したマンション販売業者のリスク回避のために行われる行為である。
5-4街区も5棟のマンションがあることから、数回に分かれて販売されるであろう。
街区販売全戸の分譲を待っていることは出来ず、販売1期目等の数棟の分譲戸の価格の平均価格を街区の分譲マンションの平均価格とみなして、街区の分譲マンションの価格とする。
2019年11月に晴海フラッグ5-4街区のマンション(「シービレッジ」と呼ばれている)のA棟、B棟、D棟の部分戸が売り出され、その後C棟も売り出された。
売り出された「シービレッジ」A棟、B棟、C棟、D棟の部分戸の販売価格総計、専有面積の総計、平均価格の計算は、不動産鑑定士桝本行男氏によれば、下記の通りである。
総販売額 総専有面積 戸数
A棟 1,521,050万円 16,501.59u 161戸
B棟 774,650万円 8,407.88u 78戸
C棟 639,040万円 6,478.46u 60戸
D棟 1,450,892万円 16,300.55u 175戸
計 4,385,632万円 47,688.48u 474戸
平均u当り価格は、
4,385,632万円÷ 47,688.48u=91.9642万円/u
≒920,000円/u
u当り920,000円である。
都側鑑定の価格は、u当り770,000円(都側鑑定P63)である。
現実の分譲価格は920,000円である。
770,000円÷920,000円=0.837
都側鑑定の分譲価格は、▲16.3%安く設定されている。
都側鑑定の分譲価格は安すぎると指摘すると、都側鑑定会社は適正価格であると猛反撃して、指摘する田原意見書を悪しく批判する。そのことについては鑑定コラム2587)「晴海選手村土地控訴審採用意見書の『中古マンション値づけ法』の駅距離修正率への激しい批判について」に記してある。
上記の実際の分譲価格より、都側鑑定の分譲価格はおよそ▲16%安いことが実証された。
以下に、不動産鑑定士桝本行男氏が価格分析した5-4街区「シービレッジ」A棟、B棟、C棟、D棟の売出価格一覧と計算を転載する。
5-4街区 A棟 (左クリックすれば大きくなります)
5-4街区 B・D棟 (左クリックすれば大きくなります)
5-4街区 C棟 (左クリックすれば大きくなります)
5.適正土地価格を立証する算式
都側鑑定は、街区5-4の板状分譲マンションの平均価格をu当り770,000円とする。
建物建築費は、東京都のRC造延床面積1,535uの居住専用建物の価格がu当り30.93万円であるにも係わらず、14,454.66uの大規模な5-4街区のB棟の建物の建築費をu当り35.5万円とする。
建物規模が大きくなると建築工事費は安くなると云うのが経済経験則による原則であるが、そのことを都側鑑定は全く考慮していない。
それ等の数値によって、5-4街区の土地価格をu当り49,500円(調査報告書P100)と求める。
総額11億7千万円と求める。但し、この金額にはオリンピック組織委員会が借り上げる家賃は含まれない。
<(注) 都側鑑定は、5-4街区の土地価格を1,879,000,000円と鑑定評価する。この金額の中にはオリンピック組織委員会が借り上げる家賃が含まれている。
開発法土地価格+家賃=土地鑑定評価額
という算式で土地鑑定評価額を求めている。
家賃額が土地評価額になる不動産鑑定評価額など無い。不動産鑑定評価として失当である。不動産鑑定評価基準違反も甚だしい。>
都側鑑定の5-4街区のu当り49,500円と云う金額が、実際の分譲価格u当り920,000円から求められるか否か分析する。
u当り49,500円の土地価格が求められれば、都側鑑定のu当り49,500円は、「逆も真なり」で適正と云うことになる。
大きく離れた土地価格が求められた場合は、都側鑑定の土地価格は間違っており、「逆も真なり」の算式で求められた価格が適正価格ということになる。
適正価格か否か検証する算式は、下記の算式とする。
街区土地価格をXとする。
街区土地価格(X)+建物建築費×(100/132)×1.42=街区分譲マンション価格
上記式を変型すると、
街区土地価格(X)=街区分譲マンション価格−建物建築費×(100/132)×1.42
である。建物建築費×(100/132)×1.42を「建物価格等」と呼ぶことにする。
建物建築費は、都側鑑定の建物建築費を採用する。
建物建築費に乗じる(100/132)は、都側鑑定の建物建築費は前記したごとく、規模大による建築費逓減の要因を考えていないための修正率である。
建物建築費に乗じる1.42は、分譲マンション販売のための宣伝費、販売及び事務管理費、利益、借入金利等を含めた修正率である。前記した国土利用計画法施行に伴い、適正な新規分譲マンション価格の査定指針として、旧国土庁が全国の地方公共団体に課長通達として通知した数値である。
6.5-4街区の土地価格
@ 分譲価格
5-4街区は、A、B、C、D、E棟と5棟の板状マンションのある街区であり、そのうちE棟を除くA、B、C、D棟の住戸が分譲された。
その平均価格は、上記に記したごとく不動産鑑定士の桝本行男氏の計算によれば、u当り920,000円である。
この価格を5-4街区の板状マンションの平均価格とする。
<(注)5-4街区全戸の分譲価格では無い。全戸の分譲価格が分かった場合、その平均価格より高かったり、低かったりの開差が生じるかも知れないが、その開きが生じることは止むを得ないものとする。>
5-4街区の分譲可能面積は、都側鑑定のP97によれば67,212.19uである。
総分譲価格は、
920,000円×67,212.19u=61,835,214,800円
≒61,840,000,000円 (618.4億円)
である。
A 建物建築費
建物建築費は、都側鑑定P97より、38,197,904,150円≒38,200,000,000円(382.0億円)である。
B 建物価格等
建物価格等は、
382.0億円×(100/132)×1.42=410.939億円≒410.9億円
である。
C 土地価格
イ、2019年の土地価格
5-4街区の分譲マンションが売り出されたのは、2019年である。
2019年時の土地価格は、分譲価格が上記より618.4億円、建物価格等が410.9億円であるから、
618.4億円−410.9億円=207.5億円
である。
5-4街区の土地面積は、都側鑑定P8より23,633.20uである。
5-4街区の土地のu当り価格は、
20,750,000,000円÷23,633.20u=878,002円
≒878,000円
である。
ロ、時点修正
時点修正とは、取引時点が異なる事例や評価時点が異なる評価例を、同じ価格時点での価格にするために、地価変動率を乗じて、同じ時点での価格にする行為をいう。
価格時点は、平成28年(2016年)4月1日である。
2016年〜2019年までの時点修正率を求める。
対象地の近隣地域の中に、東京都の基準地中央−3がある。
(中央−3)
中央区晴海5−1−9
2016年7月 u当り950,000円
2019年7月 u当り1,040,000円
この基準地価格の変動率採用する。
950,000円÷1,040,000円=0.913
時点修正率を0.913と求める。
ハ、土地価格
平成28年4月1日時点の土地価格は、
878,000円×0.913=801,614円
≒802,000円
u当り802,000円と求める。
総額は、
802,000円×23,633.20u=18,953,826,400円
≒18,950,000,000円
である。189.5億円である。
5.結論
実際の分譲価格によって求められた5-4街区の土地価格は189.5億円(u当り802,000円)である。
都側鑑定の5-4街区の価格は、11.7億円(u当り49,500円)である。
「逆も真なり」であるから、現実の分譲価格から求めても11.7億円の金額になるべきであるが、その金額にはならなかった。
ということは、「都側鑑定の求めている金額は適正な金額だ。都側鑑定の求めた価格が、オリンピック要因を反映した適正な金額である。」という主張は、明確に間違っていると言うことになる。
オリンピック要因は土地価格に全く影響を及ぼさないことが立証された。
上記立証に基づいて、結論を下記に論述する。
5-4街区の土地価格がu当り802,000円であるという事は、近隣地域にある基準地中央−3のu当り950,000円に近い金額である。
基準地中央−3の950,000円と比較して、5-4街区の地積大或いは奥行長大の要因修正すれば802,000円に近い価格が求められる。このことは、オリンピック要因の土地価格の影響は全く無いことの再びの立証となる。
加えて中央−3の価格は正常価格であるから、その価格と均衡すると云うことは、5-4街区の土地価格は、正常価格の種類価格にあると云うことになる。基準地価格の存在が、大変重要な存在であることになる。
一審裁判官の正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格以外の第5の価格が必要であるという判示など必要性は無く、その判示は、裁判官の証拠分析能力の著しい欠如を晒けだしてしまっただけである。
5-4街区の土地価格の種類は正常価格であることが立証された。
このことから、周辺の土地取引事例と比較して求めることが出来、それを行わなければならない。
土地取引事例比較法の手法の適用が出来ないという都側鑑定の主張は、誤魔化しの主張と云うことになり、その主張の正当性は無い。
5-4街区の土地価格の種類は正常価格であることから、地価公示価格との規準を行わなければならない。
地価公示価格との規準をしていない都側鑑定は、地価公示法違反の鑑定となる。
このことに関して、控訴審判決P57で、次のごとく判示する。
「控訴人らは、田原意見書に基づき、本件調査報告書は、地価公示法により定められた地価公示価格を規準としておらず、同法に違反する旨主張する。
しかしながら、前述のとおり、本件調査報告書は、本件土地の使用収益を制限する条件である選手村要因を考慮することによって最有効使用を前提とする正常価格を求めることは出来ず、鑑定評価基準に定めの無い価格の種類を求めるものであるから、公示価格を規準としていないとしても、地価公示法に違反しないものと解釈される。
したがって、控訴人らの上記主張は採用することはできない。」
と判示する。
判決は、地価公示価格の規準が出来ない理由として、下記の条件を挙げる。
イ、本件土地の使用収益を制限する条件である選手村要因がある。
ロ、最有効使用の土地利用がなされていない。
ハ、鑑定基準に定めの無い価格の種類を求めるもの。
イの選手村要因は、土地収益を制限する条件と判示するが、前記「逆も真なり」で求められた土地価格より、判断すれば、選手村要因は何ら土地収益を制限していないことが立証された。
求められた価格が近隣にある基準地価格と均衡している価格水準で求められたことが、さらに、そのことを立証補強する。
ロの本件土地は、選手村要因で最有効使用の土地利用がなされていないと判示するが、その判示は、裁判官の甚だしい勘違いである。
本件土地は、最有効使用の土地利用がなされている。
5-4街区は、都市計画法上の用途地域は、商業地域及び準工業地域で、容積率は300%である。
そこに建てられている5つの建物の都市計画法による許容延床面積は70,899.60uであるが、実際に建てられている延床面積は107,599.73uである。
許容される建築面積の1.52倍の面積の建物の土地利用がなされている。
この土地利用の状態であるにもかかわらず、最有効使用の土地利用がなされていないと判示するのか。
最有効使用で無いと判示する裁判官は、最有効使用の状態とはどういうものを云うのか、全くわかっていないのでは無いのか。
全く分かっていない知識の状態で、5-4街区は最有効使用の土地利用がなされていないと判示しているようであり、失当の判決と非難されても仕方無かろう。
5-4街区の土地は最有効使用されている。
それ故、土地利用の制限はされていると云う主張は失当である。
稿を改めて、晴海選手村土地は最有効使用の土地利用がされていることについて論じたい。
ハの「鑑定基準に定めの無い価格の種類を求めるもの」と判示するが、5-4街区の「逆も真なり」で求められた土地価格は、正常価格の種類の価格と判断出来るものであり、上記判示は間違っている。
上記各項目の検討から、「公示価格を規準としていないとしても、地価公示法に違反しないものと解釈される」の判示は間違っている。
都側鑑定は地価公示法違反の鑑定評価である。
都側鑑定の価格の正当性を担保するものは何も無く、著しく失当な鑑定である事が立証された。
5-4街区の土地価格は、189.5億円程度ということが、「逆も真なり」によって、立証された。
鑑定コラム2587)「晴海選手村土地控訴審採用意見書の『中古マンション値づけ法』の駅距離修正率への激しい批判について」
鑑定コラム2646)「晴海選手村土地は最有効使用に土地利用されており、土地の利用制限は無く、土地価格減は発生しない」
鑑定コラム2647)「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村街区5-5の土地価格は355.4億円 都側鑑定は40.6億円」
鑑定コラム2649)「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村街区5-6の土地価格は379.5億円 都側鑑定は27.2億円」
鑑定コラム2651)「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村の土地価格は1280億円 都側鑑定は129.6億円
」
鑑定コラム2654) 晴海選手村都有地売却は都市再開発法108条2項の適用を受けるという控訴審判決は間違い
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