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2651) 「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村の土地価格は1280億円 都側鑑定は129.6億円

1.はじめに
 大規模の分譲マンションは、一度に全戸販売するのでなく、何回かに分けられて販売される。

 晴海選手村土地は、晴海フラッグの名称で、現在分譲マンションとして売り出されている最中であり、最終の分譲価格がどれ程になるかは不明である。

 全戸最終販売まで待つ事は出来ないことから、現在までに販売された或いは販売中の価格から総分譲価格を求め、その総分譲価格から逆算し土地価格を求める。

2.分譲価格から逆算土地価格を求める算式
 3+2は5である。それ故、5−2は3になるのが、世の人々の認識であり、物事の道理である。

 分譲マンションの価格は、

土地価格+諸経費を含む建築費=分譲マンション価格

の算式で成り立っている。

 土地価格が「3」、諸経費を含む建築費が「2」であり、分譲マンション価格が「5」に相当と考えればよい。

 「晴海フラッグ」の名称マンションも居宅分譲マンションとして売り出される経済行為であることから、上記算式の成り立つ道理で価格形成されている。

「晴海フラッグ」分譲マンションは、上記道理の算式に当てはまらない価格形成であるという論理主張は通用しない。

 分譲マンションの土地価格が、適正価格か否か検証する算式は、下記の算式とする。

 街区土地価格をXとする。

街区土地価格(X)+建物建築費×(100/132)×1.42=街区分譲マンション価格


 上記式を変型すると、

街区土地価格(X)=街区分譲マンション価格−建物建築費×(100/132)×1.42

である。建物建築費×(100/132)×1.42を「建物価格等」と呼ぶことにする。

 建物建築費は、都側鑑定の建物建築費を採用する。

 建物建築費に乗じる(100/132)は、都側鑑定の建物建築費は規模大による建築費逓減の要因をしていないための高い工事費であるための修正率である。

 建物建築費に乗じる1.42は、分譲マンション販売のための宣伝費、販売及び事務管理費、利益、借入金利等を含めた修正率である。

 国土利用計画法施行に伴い、適正な新規分譲マンション価格の査定指針として、旧国土庁が全国の地方公共団体に課長通達として通知した数値である。経済的合理性のある割合で、現在でも使用出来る。
 
3.5-4街区、5-5街区、5-6街区の分譲されたマンションの総額と分譲済み割合

 5-3街区、5-7街区は賃貸建物棟利用の土地であり、分譲マンションとして販売される街区は、5-4街区、5-5街区、5-6街区の3街区である。

 @ 5-4街区

 5-4街区の分譲されたマンションの総額と分譲面積は、不動産鑑定士桝本行男氏の調査によれば、下記である。詳しい計算等は鑑定コラム2645)に記述してある。
                分譲総額   438.5億円
                分譲面積   47,688.48u
                平均価格   920,000円

 5-4街区の総分譲面積は、都側鑑定P97より、67,212.19uである。

 分譲面積割合は、
      47,688.48u(分譲面積)÷67,212.19u(総分譲面積)=0.709(70.9%)
70.9%である。

 A 5-5街区

 5-5街区の分譲されたマンションの総額と分譲面積は、不動産鑑定士桝本行男氏の調査によれば、下記である。詳しい計算等は鑑定コラム2647)に記述してある。
                 板状棟           タワー棟              合計
  分譲価格     486.7億円         235.2億円           721.9億円
    分譲面積     54,540.47u       19,452.74u         73,993.21u
    平均価格     890,000円/u      1,210,000円/u

 5-5街区の総分譲面積は、都側鑑定P101より、137,667.59uである。

 分譲面積割合は、
      73,993.21u(分譲面積)÷137,667.59u(総分譲面積)=0.537(53.7%)
53.7%である。

 B 5-6街区

 5-6街区の分譲されたマンションの総額と分譲面積は、不動産鑑定士桝本行男氏の調査によれば、下記である。詳しい計算等は鑑定コラム2649)に記述してある。
                 板状棟           タワー棟              合計
  分譲価格     384.8億円         301.8億円           686.6億円
    分譲面積     42,703.85u       22,833.29u         65,537.14u
    平均価格     9000,000円/u      1,320,000円/u

 5-6街区の総分譲面積は、都側鑑定P105より、129,663.08uである。

 分譲面積割合は、
      65,537.14u(分譲面積)÷129,663.08u(総分譲面積)=0.505(50.5%)
50.5%である。

4.5-4街区、5-5街区、5-6街区の土地平均価格

 5-4街区、5-5街区、5-6街区の板状棟、タワー棟の分譲済み価格と都側鑑定の建物価格を、分譲土地価格の適正な価格を逆算して求める下記算式に入力する。

街区土地価格(X)=街区分譲マンション価格−建物建築費×(100/132)×1.42


 上記算式から求められた板状棟、タワー棟の土地価格に、その面積割合に配分された土地面積を乗じて、3街区の総土地価額を求める。

 その求められた各街区の総土地総額を、各街区の土地面積で除して、街区のu当り土地平均価格を求める。

 それ等の分析計算は、5-4街区は鑑定コラム2645)、5-5街区は鑑定コラム2647)、5-6街区は鑑定コラム2649)に記述されている。

 その結果は、下記である。
                   土地価格総額         u当り価格

    5-4街区   189.5億円    u当り802,000円    5-5街区   355.4億円    u当り949,000円     5-6街区   379.5億円    u当り1,080,000円 平均 u当り944,000円
単価の平均は、 u当り944,000円である。

5.5-3街区、5-7街区の土地価格の総額

 5-3街区、5-7街区は、賃貸建物棟利用の土地であり、分譲マンションとして販売される街区では無い。

 それ故、その土地価格は、5-4街区、5-5街区、5-6街区の平均価格から求めるのが妥当と思われる。

 5-4街区、5-5街区、5-6街区の平均価格は、上記よりu当り944,000円と求められている。この単価に各街区の土地面積を乗ずれば、下記である。

 (5-3街区の土地価格の総額)
          944,000円×26,300.14u=24,827,332,160円
                                ≒24,830,000,000円(248.3億円)

 (5-7街区の土地価格の総額)
          944,000円×11,355.86u=10,719,931,840円
                                ≒10,720,000円(107.2億円)

6. 晴海選手村の土地価格

 上記より、「逆も真なり」で土地価格を験証した晴海選手村の土地価格は、
        5-3街区      248.3億円
    5-4街区   189.5億円
      5-5街区   355.4億円
     5-6街区   379.5億円
        5-7街区      107.2億円
          計       1,279.9億円≒1,280億円
1,280億円である。

7.都側鑑定の言う晴海選手村要因とはどういう内容か

 @ はじめに

 上記より、晴海選手村土地価格は、分譲価格からの土地分析で、1280億円が適正価格と分かった。

 都側鑑定の晴海選手村土地価格129.6億円の価格が適正であれば、分譲価格からの土地地価格の分析で129.6億円にならなければならなく、なるはずであるが、結果として129.6億円にならなかった。

 このことは、都側鑑定の晴海選手村土地価格129.6億円の価格は、適正では無いと云うことを立証したことになる。

 A 晴海選手村土地価格減額する4つの要因

 129.6億円は、晴海選手村要因があり、その要因が土地利用を阻害し、土地利用は最有効使用で無いからという理由で求められている。

 東京都も一枚絡んでいると充分予測されるが、その土地価格を安くするという都側鑑定の「晴海選手村要因」とは、具体的にどういうものか。

 都側鑑定はP50〜54で、「晴海選手村要因」について論述している。

 都側鑑定は、晴海選手村要因として12項目を挙げる。

 その内、土地価格に大きく悪影響を及ぼす要因、即ち土地価格が大きく減額になる要因として4つの要因を挙げる。

 それは、下記である。

  イ、建物の計画が定められている
  ロ、建物用途(分譲棟と賃貸棟、賃貸棟の特殊用途)が定められている
  ハ、開発スケジュールが定められている
  ニ、建物工事費の支払い時期及び支払額割合

 上記4つの要因について、果たして、土地価格減額になるのか検討する。

 B 建物の計画が定められている要因について
 
 都側鑑定は、土地価格減額要因の「建物の計画が定められている」について、次のごとく述べている。見出し番号は@〜Cとあるが、これをa〜dに置き換えて表示する。以下同じ。

 「[影響を与える事項]

  a 選手村仕様のため共用廊下幅が広く、一般的な分譲マンションと比較して有効率が低下する

  b エレベーター等の共用設備が過剰に設置されている棟がある

  c 地下に大規模駐車場が設置されている

  d 板状棟主体の建物計画である

[各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]

  a 共用廊下部分の建築工事費単価は低いものの、延床面積が増加することにより建築工事費総額が増加する

  b 建築工事費総額が増加する

  c 建築工事費単価が高い地下部分の延床面積が増加することにより建築工事費単価・総額とも増加する

  d 周辺の分譲マンション開発で散見されるタワー棟主体の場合と比較して分譲単価が低位となる」

 [影響を与える事項]のaについては、「共用廊下幅が広い」ということは、居住利用者に空間的開放感を与え、居住の満足感を与える。それはマンションの品位の向上に繋がる。土地価格の減額には繋がらない。

 「一般的な分譲マンションと比較して有効率が低下する」と述べるが、共同住宅の廊下は容積面積に算入され無いことから、有効率が低下することは、共用部分が多いと云うことを意味し、逆に、火災等の避難対策に優れているマンションと考えられ、マンション購入希望者の市場拡大に繋がる。土地価格の減額には繋がらない。

 マンション建物の土地利用を是として考えていることから、対象地の用途の最有効使用はマンション用途と認めている。土地使用に用途の制限があると考えていないことになる。

 bについては、エレベーターが多くあることは、それだけ居住者の居住の利便性、快適性があり、マンションの品位の向上に繋がる。土地価格の減額には繋がらない。

 cについては、地下に大規模駐車場があるということは、マンション購入希望者の市場拡大に繋がり、土地価格の減額には繋がらない。
  
 建物地下にある駐車場は、延べ床面積の1/5以内であれば容積面積に入らない。その分、居住建物部分に使え、収益増になる。土地価格の減額には繋がらない。

 dについては、板状棟主体の建物計画であることが、土地価格減額にどういう理由を根拠にしてなるのか。土地価格の減額には繋がらない。

 [各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]のaについては、共用廊下が広くて延床面積が増加するから工事費が増加すると主張しているが、この主張は、選手村要因は建物に関することであることを、自らが自白していることになる。

 bについても、「建築工事費総額が増加する」と云うことは、それは選手村要因は建物に関することであると、自らが自白していることになる。

 cについても、「地下部分の延床面積が増加することにより建築工事費単価・総額とも増加する」と云うことは、それは選手村要因は建物に関するすることであると、自らが自白していることになる。

 工事費が増加するから、土地価格が減額するという論理は受け入れられるものでは無い。

 dについては、都市計画法の許容容積率、高度制限規定に応じた建物しか建てることが出来なく、全ての土地にタワーマンションが建つものではない。土地面積、許容容積率及び高度制限の規定を無視してタワーマンションの分譲単価を比較しても意味ない。

 50階建のタワーマンションが建つ土地価格単価は、50階建マンションが建たない土地の価格よりも高い。5-5街区、5-6街区のタワーマンションが建つ都側鑑定の土地単価u当り108,000円(5-5街区)、u当り77,300円(5-6街区)が、中央区にあって適正な価格と言えるであろうか。

 述べていることと行っていることが矛盾している。

 C 建物用途(分譲棟と賃貸棟、賃貸棟の特殊用途)が定められている要因について

 都側鑑定は、土地価格減額要因の「建物用途(分譲棟と賃貸棟、賃貸棟の特殊用途)が定められている」について、次のごとく述べている。

 「[影響を与える事項]

 対象不動産周辺の不動産市場、各街区の規模等を勘案した場合、賃貸マンション等の運営と比較して分譲販売を行う方が収益性が高く、5-3街区を賃貸用住宅等の敷地とすることにより対象不動産全体の収益性が劣る。

 また、5-3街区は一般賃貸住宅のほか、高齢者向け施設やシェアハウスが計画されているが、これら用途は一般賃貸住宅と比較して賃貸可能面積割合が小さく収益性が劣る。

[各種調査手法において影響を与える諸元]

 5-3街区D棟1の賃料単価(高齢者向け施設・シェアハウス部分)」

[影響を与える事項]については、5-3街区について賃貸棟利用は、分譲棟に比して収益が劣るといい、その設計・用途であるから、土地価格が減額するという主張である。

 この主張は、そのまま受け入れることは出来ない。その賃貸棟の土地建物の所有者は誰かと云うことを考えれば、賃貸棟の土地が安くなるという主張がインチキであることがわかる。

 5-3街区は、東側に巾員60mの都道環状2号線に面する晴海選手村土地の5街区の中で、最も立地が優れる街区である。

 近い将来地下鉄がひかれ、駅が出来れば、定期借家による建物賃貸借契約にしておれば、賃貸住宅入居者の対象建物の明渡立退は容易に出来る。

 駅舎が出来た時点に、事務所ビルに建て替えれば、高額な賃料が安定的に入ることになる。

 こうした状況を見込んで、賃貸マンションの土地利用にしているのでは無かろうかと充分推測される。

 賃貸マンション街区にしたのは、土地取得建築者と充分協議した上での用途利用決定であろう。そのことをおくびにも出さず、東京都から押しつけられた用途利用計画で土地取得する建築者は、甚だ損失を被るという主張をしている。

 この様な偽善の主張は認められない。

 2022年11月25日のNHKウエブは、「東京都が地下鉄の新路線計画 東京駅〜東京ビッグサイト付近に7駅新設」の見出しで、小池都知事の記者会見発表を下記のごとく伝える。

 「25日、小池知事が定例会見で発表しました。

 それによりますと、事業計画案がまとまったのは仮称「都心部・臨海地域地下鉄」でJR東京駅付近から江東区の東京ビッグサイト付近までのおよそ6キロを結びます。

 「東京駅」を起点に、臨海部に向けておよそ1キロごとに、「新銀座駅」、「新築地駅」「勝どき駅」、「晴海駅」、「豊洲市場駅」、そして「有明・東京ビッグサイト駅」のあわせて7駅の新設が検討されています。」
(https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20221125c.html)

 小池知事が発表した東京都が造る地下鉄は、東京駅から有明ビックサイト駅を結ぶ路線で、5駅の設置であり、その一つに「晴海駅」がある。地下鉄路線は大きい道路の下を通るであろうから、晴海駅は都道環状2号線の道路の下を通ることが推定される。

 そうすると、晴海駅の出来る所は、選手村跡地に造るとすると、5-3街区しか無い。

 選手村土地上の建物を分譲マンション棟にせずに賃貸マンション棟にしたのは、都有地を取得する建築者の将来利益を得るためであると充分推定出来る。

 それを賃貸棟は収益が落ちると云って、土地利用制限がある土地を買わされる建築者が不利益を被るがごとく主張することは、人を欺く行為である。

 見逃してはいけないのは、5-3街区で無く、5-7街区を述べるべきであるのに述べていないことである。

 5-7街区については、都側鑑定は一言も述べていなく、触れていない。

 5-7街区は、許容容積率500%のところを鉄骨造4階建の賃貸店舗棟にしている。実際の容積使用率は、500%の内0.52の割合しか使用していない。

 土地利用の制限があると云うのであれば、こちらの5-7街区を取り上げて主張すべきであろう。それが全く5-7街区に触れない。5-3街区に注目させて、5-7街区を隠している。

 5-7街区の建物は、5-3街区と同じ賃貸である。土地建物の所有権が、都有地取得者の建築者に残されている。

 5-3街区の賃貸棟と同じく、定期借家で賃貸借契約をしておいて、地下鉄駅が出来た頃に、賃借人の退去要求をし、鉄骨造の4階建であるから建物解体は容易であることから解体し、容積500%と高度制限をフルに利用して、中層の店舗併用事務所棟に建て替えるつもりではなかろうか。

 そのことは、晴海選手村土地利用計画する時に、東京都整備局と都有地を取得する建築者のデベロッパーとは相談して、或いはコンサルタントを関与させて間接的にも意思合意して、土地利用計画を作っているのではなかろうかと、充分推定出来る。

 土地利用に制限があると主張するのであれば、5-7街区の土地利用の状況を声大にして主張するのが、一般的であろう。それが、5-7街区について全く触れず、5-3街区にのみ触れるのは甚だ不自然である。

 この様な疑惑が推定されることから、都側鑑定の「建物用途(分譲棟と賃貸棟、賃貸棟の特殊用途)が定められている」ことによって、晴海選手村土地価格が減額するという主張は受け入れることは出来ない。

 D 開発スケジュールが定められている要因について

 どの様な建物を建てる場合でも、建物を建てる場合には、その建物を建てる為のスケジュールというものがある。そのスケジュールに従って建物を建てるのが、結果的には最も経済的であり、合理的であり、時間も短く済む。

 そうしたスケジュールについて、定められていることが土地価格減額に結びつくという考えは、随分と身勝手な、自分都合の考え方である。

 都側鑑定は、土地価格減額要因の「開発スケジュールが定められている」について、次のごとく述べている。

 「[影響を与える事項]

  a 開発期間が長期にわたる

  b 建築時期が一定の時期に集中する

[各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]

  a 分譲収入時点が一般的な開発案件と比較して遅くなる

  b 資材等の大量発注によるスケールメリットは享受できるものの、作業員の手配や資材の調達が困難となり、建築工事費単価及び建築工事費総額が増加する。」

 [影響を与える事項]のaについては、東京オリンピック終了後に着工するタワーマンションがある事から、開発期間が長期に渡ることは当然である。

 タワーマンションにオリンピック選手が宿舎として使用する訳では無いにも係わらず、タワーマンション建設を「選手村要因」であると主張することは間違っている。

 それによって、開発期間が長期にわたるから、土地価格減額が発生するという主張の論理に正当性は無い。

 開発期間が長期にわたることは建物価格の問題であり、土地価格には関係なく、土地価格が減額になる事は無い。

 bについては、建物工事費に関するすることである。建築工事が一定の期間集中するから、その建物の建つ土地価格が減額するということなど無い。

 [各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]のaについては、選手村要因に当てはまらなく、かつ、遅く着工するタワーマンションを選手村要因と入れるからこうした問題が生じるのである。

 大規模マンションの場合は、売出は数回に分けて行われる。それは分譲収入の一部を、建築工事費等の返済に回すためである。

 それ故、売出時期を分割して行えば、この問題は済むことである。土地価格の減額には結びつかない。

 bについては、建物工事費即ち建物価格の問題であり、土地価格がそれによって減額されるというものでは無い。

 「資材等の大量発注によるスケールメリットは享受できるもの」と云っている。

 この資材とは、生コンクリート、鉄筋等であり、それ等がメーカーに大量に注文することにより、資材の単価が安くなる。このことは建築工事費の低額に結びつくのである。

 本件の建物工事費が、根拠も示されずP79で板状棟の建物工事費が、u当り325,000円〜360,000円はおかしいと私は指摘した。

 面積大の建物であるから、その要因によって建築費は安くなり、その要因が都側鑑定には抜けており、工事費は高すぎると指摘した。

 面積が大と云うことは、使用する生コンクリート、鉄筋の使用量は多くなり、スケールメリットで購入費は安くなる。それは建築費がu当り360,000円よりも安くなる事を意味する。

 都側鑑定は、スケールメリットで資材が安くなり、それは建築費の低額に繋がることを知っていながら、そのことを工事費に反映させなかった。

 逆に、土地価格は減額すると主張している。

 その様な主張に正当性があると認めることは出来ない。

 E 建築工事費の支払い時期及び支払額割合

 都側鑑定は、土地価格減額要因の「建築工事費の支払い時期及び支払額割合」について、次のごとく述べている。

 「[影響を与える事項]

 開発期間が長期にわたり建築工事費の支払い金額割合が一部前倒しになることにより収益性が劣る

[各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]

 建築工事費の支払い時期及び支払金額が一般的な案件と比較して早まる」

 [影響を与える事項]について、「開発期間が長期にわたり」と云うが、東京オリンピック終了後に着工するタワーマンションがある事から、開発期間が長期に渡ることは当然である。

 タワーマンションにオリンピック選手が宿舎として使用する訳では無いにも係わらず、タワーマンション建設を「選手村要因」であると主張することは間違っている。

 それによって、開発期間が長期にわたるから、土地価格減額が発生するという主張の論理に正当性は無い。

 「支払い金額割合が一部前倒しになる」と云うが、金額割合が一部前倒しという日本語は無い。意味不明である。

 建築工事費は、着工事時支払、中間時払い、完了時払いの3つに分けて支払うのが慣例である。

 それに従って支払えば、支払金額が前払になる事はない。

 支払金額が前倒しになる云々は建物の問題であり、それによって土地価格が減額するという論理に正当性は無い。

 [各種調査手法において影響を与える諸元とその内容]については、「支払金額が一般的な開発案件と比較して早まる」と云うが、支払金額が早まることは建物に関することであり、支払金額が早まるから、土地価格が減額されるという論理に正当性は無い。

 F 都側鑑定の挙げる選手村要因では土地価格減額は無い

 上記で、都側鑑定が本件土地価格減額に大きく影響するという4要因について検討したが、4要因のいずれも本件土地価格減額に影響するというものでは無いと判断出来た。

 即ち、都側鑑定の主張は、間違った主張であると判断出来る。

 選手村要因による土地価格減額は無い。

 被控訴人の東京都及び都側鑑定が、選手村要因による土地価格減額があると主張するのであれば、その金額を具体的に算式を用いて金額で示さなければ信頼性は全く無い。

 文言、口先だけで「選手村要因による土地価格減額がある」とどれ程云おうが、その主張は、証拠の提示の無い主張であり正当性は無い。

 具体的算出金額の根拠も提示されていないのにも係わらず、「選手村要因による土地価格減額がある」と信じ込んでしまって、判決を書いた裁判官は、証拠調べを怠ったのであり、証拠に基づかずに判示された判決に正当性は無い。

 開発法の価格は、選手村要因による土地価格減額の証拠にはならない。

8.結論

 晴海選手村土地は、一部準工業地域にあるが、大部分が商業地域にあり、都市計画法による法定許容容積率に対して実際の建物延べ床面積割合は1.39倍であり、土地利用制限があるとは認められない。

 対象地の属する地域の標準的土地使用は、マンション土地利用であり、その土地利用で対象地は利用されており、対象地は最有効使用に使用されていると判断される。

 分譲マンションの実際の分譲販売価格より求められた土地価格は、近隣地域にある東京中央−3の基準地価格u当り950,000円(平成28年7月1日時点)と均衡する価格が求められている。

 基準地価格は、正常価格であることから、基準地価格と均衡する土地価格が求められると云うことは、対象地の土地は正常価格が求められる土地と云うことになる。

 対象地は土地利用制限が無く、最有効使用に使用されており、近隣地域にある基準地価格と均衡した土地価格が求められ、正常価格が求められる土地であることから、選手村要因によって土地利用が制限されるとか、対象地は最有効使用の土地利用で無いから土地価格減額があるという主張は、通らない主張となる。

 また、その主張の要因を個別に検討しても、土地価格減額は生じ無いと判断された。

 正常価格が求められる土地であると基準地価格の存在によって立証されることとなれば、土地利用の制限がある土地とか、最有効使用出来ないという主張は退けられることになる。

 取引事例比較法が使用出来ないという主張も退けられることになる。

 正常価格が求められる土地であると基準地価格の存在によって立証されることから、地価公示価格との規準を行わなければ、鑑定評価基準違反そして地価公示法違反となる。

 都側鑑定は、地価公示価格と規準せずに土地価格を求めていることから、鑑定評価基準違反そして地価公示法違反となる。

 都側鑑定129.6億円(u当り96,800円 但しこの金額には家賃が含まれており、不動産鑑定評価額といえない金額であり、鑑定評価基準違反の金額の評価額である。)は適正価格とは程遠く、対象地の適正価格と呼べる鑑定評価額では無い。

 対象地の適正な土地価格は、近隣地域の基準地価格東京中央−3(u当り950,000円)の価格と均衡する1280億円(u当り956,000円)程度と判断される。

 適正な土地価格は1280億円程度であるのを、129.6億円が適正であると評価した不動産鑑定士は、不動産鑑定士という名に大きく傷をつけ、不動産鑑定士の信頼を甚だしく貶めてくれた。その責は問われるべきであろう。

 住民が本件都有地の売却がおかしいと裁判を起こさなかったならば、1280億円程度の都有地が、甚だ安い価格で民間会社に売り飛ばされ、膨大な利益譲渡と不正行為は闇に葬り去られていた。都有地の売却金額は安すぎると裁判に訴えた住民の行動は称えられるべきものであろう。

 裁判官しっかりせよと云いたい。


  鑑定コラム2645)
「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村街区5-4の土地価格は189.5億円 都側鑑定は11.7億円」

  鑑定コラム2646)「晴海選手村土地は最有効使用に土地利用されており、土地の利用制限は無く、土地価格減は発生しない」

  鑑定コラム2647)「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村街区5-5の土地価格は355.4億円 都側鑑定は40.6億円」

  鑑定コラム2649)「「逆も真なり」 晴海フラッグの実際の分譲価格より逆算すると、晴海選手村街区5-6の土地価格は379.5億円 都側鑑定は27.2億円」

  鑑定コラム2654) 晴海選手村都有地売却は都市再開発法108条2項の適用を受けるという控訴審判決は間違い


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