道路際には除雪した雪がうず高く積まれ、北側の歩道の雪は、踏み固められてカチカチに凍っていた。
粉雪の舞い散る北海道の札幌に行ってきた。
札幌での評価は初めてである。
東京の不動産鑑定士が、どうして札幌に来て評価するのだと、地元札幌在住の不動産鑑定士にテリトリーを荒らすなと怒られそうであるが、その辺りはあまり怒らないでいただきたい。
ススキノのド真ん中にあるビル賃料の評価であった。
東日本一といわれる飲食店、風俗店がひしめく歓楽街・盛り場ススキノのど真ん中に、評価する建物はあった。東京で云えば、新宿歌舞伎町の盛り場のど真ん中の建物ということになる。
なぜ私が札幌のススキノの賃料の評価をと、自身いぶかりながら調査を行った。
ススキノ条例というものがあり、強引な客引き、風俗営業が厳しく地域制限されている。東京新宿の歌舞伎町の店舗の賃料評価を行ったこともあるが、それとほぼ同じくらいの厳しい制限である。
北海道の経済の不況は、ススキノ地区にも及び景気はあまり芳しくない。
飲食店は1992年には5,043店あったが、2005年には3,615店にまで減ってしまった(「すすきの新聞」調査)。最近は少し盛り返しているようである。
一方、風俗店は逆にその間、店舗の減少は全く無く、168店舗が355店舗と2.1倍の増え方である。
こうした店舗用途による減増の状況は、賃料にも跳ね返り、飲食店の賃料は下落、風俗店の賃料は上昇という経済のセオリーに従うことになる。
増加傾向にある風俗店の地域制限を確認するために、道警札幌中央署まで足を運んだ。
不動産鑑定評価で警察署まで調査で足を運んだのは、今回が初めてである。 生活課に行き話を聞いた。
北海道条例「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」10条の第2号、第3号、第5号が許可されているのは、南4条の南側から南6条西2丁目及び西5丁目の地域のみである。
そのうち西2丁目は病院があり、病院より200Mの範囲は営業許可されない。それ故実質的に営業許可されるのは西5丁目に限られていると警察はいう。
広い札幌の中で、且つススキノの盛り場の中にあっても、風俗営業が許可されるのは、南4条の南側から南6条西5丁目だけの狭い限られた地域である。
ススキノという地域にある店舗の賃料を評価するには、賃貸事例はその地域の同一類型の店舗賃料から比較しなければならない。
賃貸建物の所有者はどこにいるか分からず、昼間は店は閉まっているのが多く、又気安く賃料を教えてくれるものでは無い。
貸事務所と違い賃料の収集は容易では無かった。
地元のススキノにビルを所有する不動産業者、評価依頼者の協力を得て、何とか賃料データを集めることが出来た。
ススキノの風俗店、飲食店の6つの賃貸事例と、その土地建物の価格から還元利回りを求めた。還元利回りの平均は22%であった。賃料評価であるからこの22%という還元利回りは、減価償却後の利回りである。
還元利回りと期待利回りとは、貨幣の表と裏の関係にあることから、期待利回りは22%ということになる。
期待利回り22%というと大変高い利回りと思われるかもしれない。事実高い利回りである。しかし、それはそれだけのリスクが伴うと云うことである。
貸事務所ビルを経営するプロの不動産業者でも利回りが高いからといって手を出さない。
生かじりの知識を持ったど素人が、投資利回りが高いからといって手を出したら大やけどをする不動産である。
仮に、札幌の大通り北11丁目付近の貸事務所の利回りが6%であったとすると、その貸事務所ビルの6%の利回りと、ススキノの利回りとが同一に論じられる内容の利回りでは無い。
ススキノの情報紙として「すすきの新聞」というものがあった。
札幌中央図書館に行き、「すすきの新聞」を閲覧した。
最新の「すすきの新聞」(2006年2月1日号)に、下記のススキノのスナック・バーの貸店舗募集広告が載っていた。
所在 u賃料 @ 南6西3 3,938円 A 南5西6 3,965円 B 南6西3 3,942円 C 南6西3 3,950円 D 南6西3 3,938円 E 南5西6 3,949円 F 南6西3 3,933円 G 南5西6 3,948円 平均 3,945円 (坪当り 13,038円)