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2873) 地代の基礎価格は更地価格か底地価格か AIの回答


1.知り合いの不動産鑑定士のメール

 不動産鑑定業者として大手鑑定業者の一つであり、1965年に旧大蔵省OBによって創立された株式会社中央不動産鑑定所(東京都中央区日本橋茅場町)の社長である不動産鑑定士の田島 洋氏が、私の鑑定コラム2868)、2869)、2870)、2871)を読んで試みたと云って、AIの回答のメールを送って下さった。

 「地代の基礎価格は更地価格か底地価格か」という問を、AIはどう答えるかと試みたというのである。

 AIで試みるという田島氏の斬新で、かつ、大胆な発想に驚く一方、その試みたメールを見て、私は更に驚いてしまった。

 私は、田島氏が試みたAIの回答を、田島氏に「鑑定コラムにアップしても良いですか」と、問い合わせたところ、快く了承を得ましたので、田島氏が取得したAIの回答を下記に転載する。

 2つの機関のAIの回答がある。それぞれを2章、3章として、転載する。

2.人工知能ChatGPT による回答

 不動産鑑定評価において、地代を求める場合の土地の基礎価格として、「更地価格」を用いるべきか「底地価格」を用いるべきかについては、実務上および理論上の見解が分かれることがありますが、原則的には「更地価格」を用いるのが正しいとされています。以下にその理由を解説します。

(1) 地代を求める基礎として「更地価格」を用いる説(主流・原則)

◎ 理由・根拠
 @ 地代とは、借地人が土地を借りて使用する権利に対して支払う対価であり、その土地が仮に自由な状態(更地)であった場合の価値に対する使用収益分を支払うものとされるため。

 A 収益還元法で地代を評価する場合:
 地代=更地価格×期待利回り
 このように、更地価格を基礎にするのが一般的です。

 B 不動産鑑定評価基準(国土交通省)でも、更地価格を基準とする旨が示唆されており、実務的にも「更地価格 × 適正利回り」から地代を導くことが多いです。

(2) 「底地価格」を用いる説(少数説・補足的)

◎ なぜ底地価格を使うという説が出るのか?

 @ 底地価格(=借地権が設定されている土地の所有者の権利部分の価格) は、既に借地関係がある土地の評価に使われるものであるため、現実の地代に近い値が出るという理由で用いられることがあります。

 A  特に継続賃料の評価(すでに契約中の地代が妥当かの判断)などでは、 底地価格をベースにして判断することがあるため、混同が起こることがありま す。

(3) 結論

観点 更地価格説 底地価格説
主な適用場面 新規地代の設定 継続大の妥当性評価など
理論的な妥当性 高い(市場原理に基づく) 補足的・実態的な補完
実務的主流 ◎ (正当な評価方法) △(補足的な参考)

 したがって、地代を求める際の土地の基礎価格は「更地価格」を用いるのが原則的かつ正しい方法です。

3.人工知能Gemini (Google) による回答

 不動産鑑定評価において地代を求める場合の土地の基礎価格については、「更地価格」を基礎とする説が有力であり、不動産鑑定評価基準の考え方に沿っていると考えられます。以下に詳しく解説します。

(1) 更地価格説が有力な理由

 @  元本と果実の関係: 土地と地代は元本と果実の関係にあります。つまり、土地という元本から地代という果実が生み出されるという考え方です。最初の借地契約を考えると、建物の建っていない更地の状態で土地を借りて建物を建てるのが一般的であり、この更地が地代の元本になると考えられます。底地はすでに借地権が設定されている状態であり、そこから直接新たな地代が生 み出されるわけではないという見方です。

 A 新規賃料の考え方: 不動産鑑定評価基準において、新規賃料(新たに契約する際の地代)を求める際には、まず対象地の価格を評価し、そこから賃料にアプローチするという考え方が基本となります。この「価格」は、一般的に更地としての価格を指します。

 B 賃貸事業分析法: 平成26 年の不動産鑑定評価基準の改正で導入された「賃貸事業分析法」においても、建物及びその敷地に係る賃貸事業に基づく純収益をもとに土地に帰属する部分を査定して宅地の試算賃料を求める、という 考え方があります。これは、土地が更地であった場合にどのような事業を行い、 そこからどれだけの収益が土地に帰属するか、という視点に立脚していると言 えます。

(2) 底地価格説について

 一部の不動産鑑定士の中には、底地価格を元本と考え、積算法や利回り法の基礎価格に底地価格を採用する意見もあります。これは、既に借地権が付着している底地を所有している者にとっては、その底地価格を基礎として地代を収受することに納得感がある、という考え方に基づくものです。

 しかし、この説には以下のような課題が指摘されます。

 @ 価格差の発生: 更地価格と底地価格には大きな差があり(一般的に底地価格は更地価格の10〜60%程度)、同じ期待利回りを用いた場合、算出される地代に大きな差が生じます。

 A 底地価格形成の背景: 底地価格は、更地価格を元にしつつも、賃料の遅効性、契約時の権利金の授受、担保としての不完全性など、さまざまな要因によって更地価格より低くなるものです。このため、底地価格自体が、更地から生じる地代の元本と考えるには限界があるという指摘があります。

(3) 結論
 不動産鑑定評価において地代を求める際の土地の基礎価格は、更地価格を基礎とするのが、不動産鑑定評価基準の考え方や、土地と地代の元本と果実の関係を考慮すると、より適切であるとされています。

 ただし、継続賃料(既存の賃貸借契約の賃料を改定する場合)の評価など、個別の事情によっては、底地の収益性を考慮した評価も行われることがあります。

 しかし、新規の地代算定においては、更地価格を基礎とすることが一般的かつ妥当であると考えられます。

4.AIの回答

 上記2つの機関のAIの回答は、地代の基礎価格は更地価格であるという説を支持して、結論する。

 GoogleのAIの回答の「@ 元本と果実の関係」、「B賃貸事業分析法」の説明は、私が鑑定コラム1319(下記添付資料)で述べている内容とほぼ似かよったものである。

 AIは、瞬時に私のホームページの鑑定コラム1319)を訪れ、私の鑑定コラムの記述が、論理的説明として優れていると、比較検討して認め、採用記述したのであろうか。

 そうであれば、私はAIの判断・記述に驚かざるを得ない。

 無視出来ないAIの時代が、すぐ傍まで来ているようである。


  鑑定コラム2868)
「不動産鑑定士協会連合会の2025年実務修習テキストの地代評価の求め方は間違っている」

  鑑定コラム2869)「2025年不動産鑑定士実務修習テキストの地代評価の期待利回りの求め方について」

  鑑定コラム2870)「借地権割合85%で取得した借地の地代評価なのか 2025年実務修習地代鑑定評価例」

  鑑定コラム2871)「比準地代は更地価格の85%の権利金を支払った借地権の地代事例と比較したものなのか 2025年実務修習地代鑑定評価例」

  鑑定コラム1319)「地代の基礎価格は、更地価格である」

  鑑定コラム1320)「底地割合による底地価格は鑑定評価基準違反である」

  鑑定コラム2563)「地代は底地基礎価格で求ていた地裁の鑑定人がやっと更地基礎価格にした (1)」


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