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605)驚愕 新日本製鐵の激しい売上高減

 日本経済新聞の報じる商品市況で、19ミリ異形棒鋼のトン当り価格が、6万円を切って、5.8万円になった。

 東京の19ミリ異形棒鋼の価格は、長い間トン当りの高値は、60,000円で推移していた。それが、先週(2009年11月9日〜13日)に、高値ゾーンでトン当り60,000円を切り、58,000円になった。大阪も58,000円になった。

 いつトン60,000円台を切るのかと、商品市況の動きを辛抱強く見ていたが、2009年11月に、トン60,000円を切った。

 19ミリ異形棒鋼の価格の動きは、土地価格の遅行指数であると思われることから、鋼材価格が下落していることは、土地価格は既に下落していることと推定される。
 土地価格は、未だ下落しているということが推定出来るバックデータが出て来た。
 
 上記のごとく鋼材価格は、下落している。
 では、鉄鋼製造メーカーのトップの新日本製鐵の売上高はどうなっているだろうかと、インターネットで、新日鐵のホームページを覗いて見た。

 2009年10月29日付で、新日鐵は、2010年3月期の上半期(2009年4月〜9月)の決算を発表していた。

 その発表数値を見て、驚愕した。

 新日鐵の売上高が大幅に減り、経常利益が赤字である。その金額も半端な金額では無い。下記のとおりである。

                        売上高            経常利益
  2009年上半期        15,733億円     ▲869億円
  2008年上半期        26,021億円     2,622億円

 対前年上半期と比べると、売上高は、▲39.5%である。
 経常損益は、2,622億円の黒字から、一転▲869億円の赤字である。

 大変な上半期の決算状況である。

 粗鋼生産高の推移を見ると、下記の通りである。 年度、万トンである。

     1998年度     2,320万トン
          1999              2,562
          2000              2,784
          2001              2,614
          2002              2,990
          2003              3,015
          2004              2,988
          2005              3,120
          2006              3,160
          2007              3,311
          2008              2,861

2009年上半期 1,155

 2007年度が最高の粗鋼生産高で、それ以降急激に減少している。

 2009年は、上半期を単純に2倍すれば、

      1,155万トン×2 = 2,310万トン
 
の粗鋼生産高になる。1998年度並の生産高である。

 これほど製鉄産業界の生産高が落ち込んでいるとは、予想もしていなかった。

 新日鐵の決算書の説明の中に、世界の粗鋼生産高を示す数値があった。
 出所は、world steel association である。

 その発表数値によれば、2009年9月の世界の粗鋼生産高は、10,703万トンである。

 各国の同月の生産高を記すと、下記の通りである。括弧内は対前年同月比である。

    日本    827万トン(▲18.0%)
        米国    538      (▲31.4%)
        EU27   1,317      (▲23.6%)
        ロシア   486      (▲20.3%)
        ブラジル  260      (▲13.7%)
        インド   462      (▲0.2%)
        中国   5,071      (+28.0%)

 各国の粗鋼生産高を見て、私は再度驚いた。自分の知識の浅さ、無さを痛感した。

 中国を除き、他の国は全部対前年月比はマイナスである。
 中国のみ+28.0%である。

 中国の粗鋼生産高は、世界の粗鋼生産高の約半分を占める。

     5,071÷10,703 = 0.473
 
 中国の粗鋼生産高は、1ヶ月で5,071万トンである。日本の一年間の粗鋼生産高は、2008年度で10,550万トンであるから、中国は2ヶ月で日本の1年間の粗鋼を生産してしまう。

 日本の鉄鋼業は、世界をリードしていると私は思っていた。生産高は一番では無いとしても、中国とこれほどの生産高の開きがあるとは思ってもいなかった。

 5,000万トンと800万トンでは、横綱と十両若しくは幕下の差である。
 とても競争相手になれる存在ではない。日本が世界の鉄鋼業をリード出来る存在ではない。

 中国の粗鋼生産高の1割が、日本に集中輸出攻撃されたら、日本の鉄鋼業は吹っ飛ぶ。

 中国元は強い為替であるにもかかわらず、不当に安く為替交換レートが設定されおり、加えて、アメリカドルに半分ドルペックして、1ドル6.8元前後で固定している中国元は、ドルが下落すれば、それにつれて元も下がることになる。

 実質的には強い元が下がるのであるから、元は益々実質強く成り、中国製品の輪出は甚だやりやすくなる。

 そうした為替レートで、中国から鉄鋼が輸出されてきたら、日本の鉄鋼業は本当に吹っ飛ぶ。

 そんなことは起きないとタカをくくっていると、中国経済が不況になった時、中国鉄鋼業が製品をよりやすい価格にして、販路を海外に求め、日本に押し寄せて来ることを否定することは出来ないであろう。
 その時どうする。

 商品の質が違うと強弁しても、この生産高の数の差の力には、とても太刀打ち出来ない。
 中国商品はダンピングだ等と云って抵抗している間に、当の日本の鉄鋼会社は潰れてしまっている。

 日本の鉄鋼業は、産業の雄だと言うことなど、言えるものではなかろう。
 私の青年の頃、東大法学部等の超一流どころの学生は、八幡製鉄や富士製鉄若しくは日本鋼管という日本、イヤ世界を代表する鉄鋼メーカーに入社することが、エリートであり、出世のコースであり、ひいては収入を得る道であった。

 今もその考えが続いているかどうか知らないが、現在、中国のこの粗鋼生産高の量を知ると、日本の鉄鋼業は一流云々などと言っておられる状況ではないようだ。

 中国恐るべしである。


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