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662)帝国ホテルの黒字決算発表(平成22年3月期)

 帝国ホテルが、平成22年3月期の決算を発表した。

 私が鑑定コラム564)「2009年ホテル業界に何が起こっているのか」(2009年7月27日記事アップ) の記事で、過去の帝国ホテルの売上等の実績から、勝手に下記のごとく予測した。

     売上高      48,976百万円
          原価・販売費      52,032百万円
          営業損失        ▲ 3,056百万円

 但し、「帝国ホテルの経営者は、この様な事態にならないように、経営改善の努力をするであろうから、実際には、この様な数値にはならないと思う。」と記した。

 事実、上記の数値にはならなかった。
 帝国ホテルの経営者は、見事に黒字化した。

 平成22年3月期の売上高等は、次のごとくである。

     売上高      50,117百万円
          原価・販売費      37,821百万円
          営業利益           709百万円

 帝国ホテルがプレスリリースする決算短信によれば、2009年のホテル業界の状況というものが、どういう状態であったか、以下のごとく述べる。

 @ 世界的な不況
 A 円高による外国人客の大幅な減少
 B 法人需要の急激な縮小
 C 個人消費の低迷による価格競争の激化
 D 新型インフルエンザの影響

のホテル業界であったと述べる。

 即ち、私が2009年ホテル業界に何が起こっているのかと疑問を呈した時には、ホテル業界では、上記のことが生じていたのである。
 ホテル業界はその対応の真っ最中で、その対応に頭を痛めていたのである。

 この2009年ホテル業界の状況の中にあって、帝国ホテルがとった対応は、経費面として、次の手を打ったという。

 @ 全社的なコストダウン
 A 経費執行の見直し
 B 業務全般の効率化

 この様にして、何とか7億円余の黒字決算とした。

 次年度、即ち今年2010年のホテル業界の状況について、下記のごとくの見通しを述べる。
  
 @ 法人を中心とした需要の急速な回復が見込めない
 A ホテル間の販売競争が一層激化する

 帝国ホテルの決算短信を読んでいて、目についた項目があった。
 事業リスクとして、

 「戦争などによる国際情勢の変化」

を述べていることであった。

 事業リスク要因として、私は初めて「戦争」リスクという文言を、企業の決算書の文章の中で見たのは初めてである。

 「うちの会社では戦争リスクはとっくの昔から折り込んでいるよ。」

といわれる企業の方がおられるかもしれない。
 私は投資家でもなく、多くの決算書を見ているわけでは無い。
 その場合には、その会社の人に、私の無知を謝る。

 帝国ホテルの決算短信で、初めて「戦争のリスク」の文字を見た時、日本企業も「戦争のリスク」を考え始めたのかと感じたのである。

 というのは、鑑定コラム149)「積み上げ方式の割引率に実証性はあるのか」(2004年2月29日記事アップ)で述べているが、「リスク」の勉強会で、韓国からの留学生が放った言葉が忘れられ無いのである。
 
 韓国からの留学生は、次のごとくの発言をした。

「あなた方の考え方がさっぱり分からない。
 リスク、リスクと言うが、戦争によるリスクを考えているのか。
 今迄の討論を聞いていても、誰一人その事に言及していない。
 リスクを考えるならば、戦争によるリスクを考えるべきだ。」
と。

 話を戻す。
 帝国ホテルのセグメントを見ると、ホテル部門は、

     売上高     44,197百万円
     営業費用    44,944百万円
     営業損失    ▲ 746百万円
 
で、7.46億円の赤字である。

 客室稼働率は、

     本社     71.8%
     大阪     72.5%
     上高地    75.4%

である。

 東京の帝国ホテル本社の客室売上高、客室稼働率は、

                             客室売上高            客室稼働率
   平成21年3月期     7,957百万円      71.7%
   平成22年3月期     6,928百万円      71.8%

である。客室稼働率はほぼ同じであるが、客室売上高は12.9%減じている。
 このことは、客室料金単価の下落を意味する。
 プレスリリースが述べる2009年のホテル業の5つの状況を反映した結果と思われる。

 では、具体的に客室料金単価はどれ程下落したのか試算してみる。

 東京の帝国ホテル本社の客室数は、931室である。
 平成21年3月期の一室あたりの宿泊料金は、下記のごとく求められる。

     931室×0.717=667.5室≒668室
     7,957,000,000円÷668室=11,911,677円
     11,911,677円÷365日≒32,600円
 
 平成21年3月期の一室あたりの宿泊料金は、32,600円である。

 平成22年3月期の一室あたりの宿泊料金は、下記のごとく求められる。

     931室×0.718=668.4室≒668室
     6,928,000,000円÷668室=10,371,257円
     10,371,257円÷365日≒28,400円
 
 平成22年3月期の一室あたりの宿泊料金は、28,400円である。

 まとめると、一室当りの宿泊料金は、

      21年3月期   32,600円
      22年3月期   28,400円

である。

 ホテルの客室総売上高が12.9%減少したと聞いても、その数字以外具体的に実感がさっぱり分からないであろう。
 客室稼働率とホテル客室総売上高とホテル客室数より、一泊宿泊料金を求めてみれば、12.9%の売上高減が具体的に実感出来るであろう。
 そして、帝国ホテルの宿泊費はいくらぐらいであるのかということが、はっきりと知る事が出来よう。


  鑑定コラム564)「2009年ホテル業界に何が起こっているのか」

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  鑑定コラム637)「帝国ホテルの営業利益は不動産賃貸に助けられている」

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  鑑定コラム778)「平成23年のホテル業界は震災により厳しい経営環境に」

  鑑定コラム936)「平成24年4〜6月の帝国ホテルの業績は著しい回復」

  鑑定コラム948)「東京の帝国ホテルの1室料金は26,300円(平成24年3月期)」


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