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地代は、建物の所有目的で土地を借りている人が、その土地所有権者に支払う土地の使用料である。
それ故、地代算出の基礎価格は、土地価格(更地価格)となる。
借地人は、支払っている地代が、妥当水準の地代であるかどうか、更地価格を基準にして知ろうとする。
借りている土地の隣接地が、更地価格として売り出されれば、隣地である借地の更地価格も同じ価格(単価)であろうと推定出来る。
しかし、現実には、隣接土地が売りに出されることなど、まず無い。
それ故、地代は自らが支払っていることから分かるが、更地価格がどれ程であるのか分からず、地代が適正水準であるのか否かを知る事が出来ない。
最善は更地価格に対する関係(地代利回り)を知ることであるが、支払っている地代の水準が他人の支払地代と較べて妥当かどうかが知りたいためであれば、更地価格以外の価格に対する関係を知ることによっても、ある程度目的を達することが出来る。
ここで、地代の基礎価格は、更地価格であると云う基本理論は脇に措いて、論を進める。
不動産取引市場では、借地権価格が売買市場に多くは無いが出て来ることがある。
借地権の売却であり、当然売却借地権の価格が明示される。
それと共に月額地代がいかほどかが明示されている。
借地権を買おうとする人にとって、借地権価格の金額は最も重要であるが、その次に堅固建物所有目的か非堅固建物所有目的の借地権かに注目する。
それに劣らず、毎月の地代がいくらなのかにも強い関心を持つ。
借地権価格とその借地権が負担する地代の間に相関関係があれば、借地権価格を知ることによって、自分の地代の妥当性を判断することが出来る。
借地権価格は、借地権割合という割合関係を持って、ほぼ更地価格に連動しており、結果において、更地に対する利回りを知ることにもなるが。
更地価格の高い土地のところの地代は、高い。
更地価格の安い土地のところの地代は、安い。
とすると、借地権価格と地代の間には、相関関係が存在するのでは無いのかという仮説が立てられる。
基礎価格云々と云うことは、脇に措いて、借地権価格と地代の関係を分析してみる。
データは、平成27年(2015年)5月に売り出されている私が入手可能な23区内の借地権の売りデータによる。
そのデータは、下記である。
番号
|
区名
|
町名
|
丁目
|
借地権価格 円
|
面積 u
|
月額地代
|
地域
|
1
|
台東
|
浅草橋
|
2
|
78700000
|
131.47
|
59640
|
商業
|
2
|
台東
|
寿
|
4
|
39000000
|
70.87
|
61100
|
商業
|
3
|
台東
|
松が谷
|
4
|
18500000
|
44.17
|
20500
|
商業
|
4
|
墨田
|
東墨田
|
3
|
10800000
|
89.68
|
15000
|
工業
|
5
|
墨田
|
文花
|
2
|
21500000
|
155.37
|
61100
|
準工業
|
6
|
江東
|
亀戸
|
7
|
9000000
|
43.93
|
9380
|
近隣商業
|
7
|
目黒
|
鷹番
|
3
|
47600000
|
56.25
|
32000
|
商業
|
8
|
大田
|
鵜の木
|
1
|
21800000
|
67.46
|
17480
|
1種住居
|
9
|
大田
|
中央
|
8
|
33500000
|
123.23
|
16956
|
1種住居
|
10
|
大田
|
西六郷
|
2
|
48000000
|
194.35
|
18378
|
準工業
|
11
|
渋谷
|
鉢山町
|
|
115000000
|
163.55
|
112000
|
2種低層
|
12
|
中野
|
野方
|
4
|
18900000
|
65.01
|
18581
|
近隣商業
|
13
|
豊島
|
上池袋
|
1
|
12600000
|
60.61
|
8505
|
1種中高
|
14
|
北
|
田端
|
5
|
28000000
|
59.40
|
10620
|
1種住居
|
15
|
荒川
|
東尾久
|
3
|
19800000
|
98.01
|
24600
|
準工業
|
16
|
板橋
|
板橋
|
1
|
57000000
|
90.39
|
43744
|
商業
|
17
|
練馬
|
大泉
|
2
|
27800000
|
185.12
|
28000
|
1種低層
|
18
|
練馬
|
栄町
|
|
16000000
|
40.77
|
12560
|
近隣商業
|
19
|
足立
|
西新井栄町
|
2
|
25000000
|
104.29
|
30020
|
近隣商業
|
20
|
葛飾
|
青戸
|
1
|
17000000
|
82.54
|
22100
|
工業
|
21
|
葛飾
|
金町
|
6
|
24500000
|
58.00
|
28000
|
商業
|
22
|
葛飾
|
東立石
|
4
|
32500000
|
150.51
|
89600
|
商業
|
23
|
江戸川
|
北小岩
|
4
|
11000000
|
55.05
|
7620
|
1種中高
|
24
|
江戸川
|
平井
|
1
|
28000000
|
131.20
|
32000
|
1種住居
|
住宅地の地代と商業地の地代とでは、地代水準に違いがあると思われ、その違いを知るために、ダミー変数を使用する。
Y 年間地代 u円
X1 借地権価格 u円
X2 ダミー変数
1 住宅地・準工・工業地
2 商業地
(注X1、X2の右側の1,2は、添え字の小文字であるが、添え字表示が出来無いためX1、X2の表示とする)
とする。
上記データを分析用にまとめると、下記である。
番号
|
地代単価円/u
|
年額地代円/u
|
借地権価格円/u
|
商業・それ以外
|
1
|
454
|
5448
|
598616
|
2
|
2
|
862
|
10344
|
550303
|
2
|
3
|
464
|
5568
|
418836
|
2
|
4
|
167
|
2004
|
120428
|
1
|
5
|
393
|
4716
|
138379
|
1
|
6
|
214
|
2568
|
204871
|
2
|
7
|
569
|
6828
|
846222
|
2
|
8
|
259
|
3108
|
323154
|
1
|
9
|
138
|
1656
|
271849
|
1
|
10
|
95
|
1140
|
246977
|
1
|
11
|
685
|
8220
|
703149
|
1
|
12
|
286
|
3432
|
290725
|
2
|
13
|
140
|
1680
|
207886
|
1
|
14
|
179
|
2148
|
471380
|
1
|
15
|
251
|
3012
|
202020
|
1
|
16
|
484
|
5808
|
630601
|
2
|
17
|
151
|
1812
|
150173
|
1
|
18
|
308
|
3696
|
392445
|
2
|
19
|
288
|
3456
|
239716
|
2
|
20
|
268
|
3216
|
205961
|
1
|
21
|
483
|
5796
|
422414
|
2
|
22
|
595
|
7140
|
215932
|
2
|
23
|
138
|
1656
|
199818
|
1
|
24
|
244
|
2928
|
213415
|
1
|
データをグラフに落とすと、下図である。
YX1X2 の関係式は、下記と求められる。
Y=−329.755+0.006431X1 +1489.716X2
(3.19) (1.91)
X1のt値は有意であるが、X2のt値は僅か有意水準に届かない。
重相関係数 R=0.730
但し、 100,000円<X1<900,000円
重相関係数が0.730とやや低く、かつX2のt値が有意水準に無いことから、上記関係式は信頼性にやや劣るが、それを考慮しても重相関係数が0.73あることから、全く相関関係が無いとは云えない。相関関係があると云える。
上記算式に住宅地、商業地の借地権価格等を代入して地代を求めると、下記である。
住宅地
|
|
|
借地権価格円/u
|
年額地代円/u
|
月額地代円/u
|
100000
|
1803
|
150
|
150000
|
2125
|
177
|
200000
|
2446
|
204
|
250000
|
2768
|
231
|
300000
|
3089
|
257
|
350000
|
3411
|
284
|
400000
|
3732
|
311
|
450000
|
4054
|
338
|
500000
|
4375
|
365
|
550000
|
4697
|
391
|
600000
|
5019
|
418
|
650000
|
5340
|
445
|
700000
|
5662
|
472
|
750000
|
5983
|
499
|
800000
|
6305
|
525
|
850000
|
6626
|
552
|
900000
|
6948
|
579
|
|
|
|
商業地
|
|
|
借地権価格円/u
|
年額地代円/u
|
月額地代円/u
|
400000
|
5222
|
435
|
450000
|
5544
|
462
|
500000
|
5865
|
489
|
550000
|
6187
|
516
|
600000
|
6508
|
542
|
650000
|
6830
|
569
|
700000
|
7151
|
596
|
750000
|
7473
|
623
|
800000
|
7794
|
650
|
850000
|
8116
|
676
|
900000
|
8438
|
703
|
借地権価格より、月額地代がどれ程かがわかる。
一方、支払っている地代より、自分の借地権価格がどれ程の価格なのかも分かる。
例えば、住宅地の借地で、地代がu当り約580円(坪当り1,910円)の場合、借地権価格は、u当り90万円(坪当り298万円)ということである。
****追記 2015年7月15日
上記より借地権価格と地代が求められた。
地代利回りは、
年間地代
─────── = 地代利回り
更地価格
である。
ここで借地権価格と更地価格の関係を考えると、借地権価格は、更地価格と密接な関係がある。
簡便な借地権価格の求め方は、更地価格に借地権割合を乗じて求めているという方法が使用される。
住宅地の借地権価格は、その更地価格に0.6を乗じて、商業地の場合は0.7を乗じて求めると云う具合に。
この簡便な借地権価格の求め方を使用すれば、上記算式は、下記のごとく変型される。
年間地代 年間地代
────── = ────────────
更地価格 借地権価格÷借地権割合
年間地代
= ──────── × 借地権割合
借地権価格
住宅地の借地権割合を60%として、上記一覧表の最初の案件(借地権価格u当り100,000円、年間地代u当り1,803円)の地代利回りは、
1,803円
───────×0.6 =0.01803×0.6=0.0108
100,000円
1.08%と求められる。
商業地の借地権割合を70%として、上記一覧表の最初の案件(借地権価格u当り400,000円、年間地代u当り5,222円)の地代利回りは、
5,222円
───────×0.7 =0.01306×0.7=0.0091
400,000円
0.91%と求められる。
借地権価格からも、地代利回りを上記のごとく求められ、知ることができるが、こうして求められた地代利回りは、あくまでも一つの目安の地代利回りである。
鑑定コラム1326)「借地権割合をどの様にして求めるのか」
鑑定コラム61)「地代と公租公課倍率法」
鑑定コラム1356)「地代と公租公課の関係」
鑑定コラム1367)「住宅地代利回り 0.84%」
鑑定コラム1720)「借地権価格と地代(平成29年12月)」
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