○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1365)借地権価格と地代

 地代は、建物の所有目的で土地を借りている人が、その土地所有権者に支払う土地の使用料である。

 それ故、地代算出の基礎価格は、土地価格(更地価格)となる。

 借地人は、支払っている地代が、妥当水準の地代であるかどうか、更地価格を基準にして知ろうとする。

 借りている土地の隣接地が、更地価格として売り出されれば、隣地である借地の更地価格も同じ価格(単価)であろうと推定出来る。

 しかし、現実には、隣接土地が売りに出されることなど、まず無い。

 それ故、地代は自らが支払っていることから分かるが、更地価格がどれ程であるのか分からず、地代が適正水準であるのか否かを知る事が出来ない。

 最善は更地価格に対する関係(地代利回り)を知ることであるが、支払っている地代の水準が他人の支払地代と較べて妥当かどうかが知りたいためであれば、更地価格以外の価格に対する関係を知ることによっても、ある程度目的を達することが出来る。

 ここで、地代の基礎価格は、更地価格であると云う基本理論は脇に措いて、論を進める。

 不動産取引市場では、借地権価格が売買市場に多くは無いが出て来ることがある。

 借地権の売却であり、当然売却借地権の価格が明示される。

 それと共に月額地代がいかほどかが明示されている。

 借地権を買おうとする人にとって、借地権価格の金額は最も重要であるが、その次に堅固建物所有目的か非堅固建物所有目的の借地権かに注目する。

 それに劣らず、毎月の地代がいくらなのかにも強い関心を持つ。

 借地権価格とその借地権が負担する地代の間に相関関係があれば、借地権価格を知ることによって、自分の地代の妥当性を判断することが出来る。

 借地権価格は、借地権割合という割合関係を持って、ほぼ更地価格に連動しており、結果において、更地に対する利回りを知ることにもなるが。

 更地価格の高い土地のところの地代は、高い。

 更地価格の安い土地のところの地代は、安い。

 とすると、借地権価格と地代の間には、相関関係が存在するのでは無いのかという仮説が立てられる。

 基礎価格云々と云うことは、脇に措いて、借地権価格と地代の関係を分析してみる。

 データは、平成27年(2015年)5月に売り出されている私が入手可能な23区内の借地権の売りデータによる。

 そのデータは、下記である。


番号 区名 町名 丁目 借地権価格 円 面積 u 月額地代 地域
1 台東 浅草橋 2 78700000 131.47 59640 商業
2 台東 寿 4 39000000 70.87 61100 商業
3 台東 松が谷 4 18500000 44.17 20500 商業
4 墨田 東墨田 3 10800000 89.68 15000 工業
5 墨田 文花 2 21500000 155.37 61100 準工業
6 江東 亀戸 7 9000000 43.93 9380 近隣商業
7 目黒 鷹番 3 47600000 56.25 32000 商業
8 大田 鵜の木 1 21800000 67.46 17480 1種住居
9 大田 中央 8 33500000 123.23 16956 1種住居
10 大田 西六郷 2 48000000 194.35 18378 準工業
11 渋谷 鉢山町   115000000 163.55 112000 2種低層
12 中野 野方 4 18900000 65.01 18581 近隣商業
13 豊島 上池袋 1 12600000 60.61 8505 1種中高
14 田端 5 28000000 59.40 10620 1種住居
15 荒川 東尾久 3 19800000 98.01 24600 準工業
16 板橋 板橋 1 57000000 90.39 43744 商業
17 練馬 大泉 2 27800000 185.12 28000 1種低層
18 練馬 栄町   16000000 40.77 12560 近隣商業
19 足立 西新井栄町 2 25000000 104.29 30020 近隣商業
20 葛飾 青戸 1 17000000 82.54 22100 工業
21 葛飾 金町 6 24500000 58.00 28000 商業
22 葛飾 東立石 4 32500000 150.51 89600 商業
23 江戸川 北小岩 4 11000000 55.05 7620 1種中高
24 江戸川 平井 1 28000000 131.20 32000 1種住居


 住宅地の地代と商業地の地代とでは、地代水準に違いがあると思われ、その違いを知るために、ダミー変数を使用する。

     Y   年間地代 u円
          X1     借地権価格 u円
          X2     ダミー変数
                    1  住宅地・準工・工業地
                    2  商業地

 (注X1、X2の右側の1,2は、添え字の小文字であるが、添え字表示が出来無いためX1、X2の表示とする)

とする。

 上記データを分析用にまとめると、下記である。


番号 地代単価円/u 年額地代円/u 借地権価格円/u 商業・それ以外
1 454 5448 598616 2
2 862 10344 550303 2
3 464 5568 418836 2
4 167 2004 120428 1
5 393 4716 138379 1
6 214 2568 204871 2
7 569 6828 846222 2
8 259 3108 323154 1
9 138 1656 271849 1
10 95 1140 246977 1
11 685 8220 703149 1
12 286 3432 290725 2
13 140 1680 207886 1
14 179 2148 471380 1
15 251 3012 202020 1
16 484 5808 630601 2
17 151 1812 150173 1
18 308 3696 392445 2
19 288 3456 239716 2
20 268 3216 205961 1
21 483 5796 422414 2
22 595 7140 215932 2
23 138 1656 199818 1
24 244 2928 213415 1


 データをグラフに落とすと、下図である。

借地権価格と地代

 YX1X2 の関係式は、下記と求められる。

        Y=−329.755+0.006431X1 +1489.716X2
                        (3.19)       (1.91)

X1のt値は有意であるが、X2のt値は僅か有意水準に届かない。 重相関係数 R=0.730 但し、 100,000円<X1<900,000円

 重相関係数が0.730とやや低く、かつX2のt値が有意水準に無いことから、上記関係式は信頼性にやや劣るが、それを考慮しても重相関係数が0.73あることから、全く相関関係が無いとは云えない。相関関係があると云える。

 上記算式に住宅地、商業地の借地権価格等を代入して地代を求めると、下記である。


住宅地    
借地権価格円/u 年額地代円/u  月額地代円/u 
100000 1803 150
150000 2125 177
200000 2446 204
250000 2768 231
300000 3089 257
350000 3411 284
400000 3732 311
450000 4054 338
500000 4375 365
550000 4697 391
600000 5019 418
650000 5340 445
700000 5662 472
750000 5983 499
800000 6305 525
850000 6626 552
900000 6948 579
     
商業地    
借地権価格円/u 年額地代円/u  月額地代円/u 
400000 5222 435
450000 5544 462
500000 5865 489
550000 6187 516
600000 6508 542
650000 6830 569
700000 7151 596
750000 7473 623
800000 7794 650
850000 8116 676
900000 8438 703


 借地権価格より、月額地代がどれ程かがわかる。

 一方、支払っている地代より、自分の借地権価格がどれ程の価格なのかも分かる。

 例えば、住宅地の借地で、地代がu当り約580円(坪当り1,910円)の場合、借地権価格は、u当り90万円(坪当り298万円)ということである。



****追記 2015年7月15日

 上記より借地権価格と地代が求められた。

 地代利回りは、

                  年間地代
               ─────── = 地代利回り                        
                  更地価格

である。

 ここで借地権価格と更地価格の関係を考えると、借地権価格は、更地価格と密接な関係がある。

 簡便な借地権価格の求め方は、更地価格に借地権割合を乗じて求めているという方法が使用される。

 住宅地の借地権価格は、その更地価格に0.6を乗じて、商業地の場合は0.7を乗じて求めると云う具合に。

 この簡便な借地権価格の求め方を使用すれば、上記算式は、下記のごとく変型される。

     年間地代             年間地代
  ────── =  ────────────                        
     更地価格          借地権価格÷借地権割合

年間地代 = ────────  × 借地権割合 借地権価格

 住宅地の借地権割合を60%として、上記一覧表の最初の案件(借地権価格u当り100,000円、年間地代u当り1,803円)の地代利回りは、
 
                   1,803円
               ───────×0.6 =0.01803×0.6=0.0108          
                  100,000円

1.08%と求められる。

 商業地の借地権割合を70%として、上記一覧表の最初の案件(借地権価格u当り400,000円、年間地代u当り5,222円)の地代利回りは、
 
                   5,222円
               ───────×0.7 =0.01306×0.7=0.0091          
                  400,000円

0.91%と求められる。

 借地権価格からも、地代利回りを上記のごとく求められ、知ることができるが、こうして求められた地代利回りは、あくまでも一つの目安の地代利回りである。


  鑑定コラム1326)「借地権割合をどの様にして求めるのか」

  鑑定コラム61)「地代と公租公課倍率法」

  鑑定コラム1356)「地代と公租公課の関係」

  鑑定コラム1367)「住宅地代利回り 0.84%」

  鑑定コラム1720)「借地権価格と地代(平成29年12月)」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ