○鑑定コラム
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ
@ 不動産の取引は現金決済
不動産の価格が上昇しバブル状態になったことは、東京商業地最高価格の推移で分かった。
だが、お金授受の裏づけの無い土地の購入需要が増えたから土地価格が上がり、バブルになる訳では無い。需要がいくらあっても、お金が伴わなければ土地価格は値上りしない。
不動産の取引は、現金決済である。
約束手形による不動産取引は行われない。
不動産を購入するには、現金が必要である。現金が無ければ不動産は買えないし、いくら欲しいと云っても現金の提示が無い限り売買は無い。
不動産の金額は、1万、2万円の金額では無い。数百万円から数十億円の金額である。
自己資金で不動産を購入する人はいるが、その様な人は極めて稀である。
殆どの人は、銀行からの借入による。
金利が安い時は、自己資金を少なめにして、銀行からの借入を多くして、レバレッジ効果を大にして利益の拡大を計ろうとする。
いずれの手段を選ぶにしろ、銀行からの融資が無ければ不動産を買うことは出来ない。
不動産の取引が活発化することは、銀行の不動産業への貸出が増大することになる。
不動産バブルは、不動産の価格が上がることである。それに伴い銀行の貸出額がより増大する。
毎年平均的に不動産業への貸出は行われている。
その平均額が、7兆円を越えない額であるとして、貸出額が8兆円、9兆円になり10兆円に近づくと、その貸出額は異常な額となる。銀行から貸出融資を受けた人が購入している不動産の価格も異常な高値になっているのでは無かろうかと疑われてくる。
つまり、不動産バブルでは無いかと疑われる。
A 平成28年6月直前1年間の不動産業新規貸出額
日本銀行の発表によれば、国内銀行が、不動産業に新規貸し出しした金額は、平成27年1月〜12月の1年間で、10兆6735億円である。
平成28年6月直前1年間(平成27年7月〜平成28年6月)の国内銀行の不動産業新規貸出額は、11兆7162億円である。
平成21年〜平成23年の間の不動産業への新規貸出額は、6兆〜7兆円であった。
それが平成25年、26年、27年には、
平成25年 9.5兆円
平成26年 10.0兆円
平成27年 10.6兆円
となり、7兆円を大きく超える貸出額となる。
平成28年6月直前1年間では10兆円を飛び超えて11兆7162億円となり、12兆円の貸出額に迫ろうとしている。
平成27年の全産業の新規貸出額は、43兆8721億円である。不動産業の新規貸出額の占める割合は、
10兆6735億円
─────────= 0.243
43兆8721億円
24.3%である。
財務省発表の『法人企業統計調査』によれば、平成27年度の全産業(銀行・保険業は除く)の売上高は、鑑定コラム1539)「 2015年度の法人企業の売上高は1431兆円」で、1431兆5341億円であった。
不動産業の売上高は、39兆3835億円であった。
不動産業の全産業に占める売上高の割合は、
39兆3835億円
──────── = 0.028
1431兆5341億円
2.8%である。
全産業の売上高の中で、2.8%の割合しか占めない不動産業が、国内銀行の新規貸出額にあっては、全産業の新規貸出額の24.3%を占めるということは、いささかいびつな貸出の姿では無かろうか。
B 不動産業新規貸出額の推移
昭和58年〜平成28年6月直前1年間までの国内銀行の不動産業への新規貸出額を記す。
平成28年の金額は、平成28年6月直前1年間(平成27年7月〜平成28年6月)の金額である。
日本銀行の発表による。
金額は発表当時の金額であり、その後確定値として変更されているのが一部にあるかもしれない。
西暦
|
不動産業 億円
|
1983
|
18876
|
1984
|
24870
|
1985
|
35091
|
1986
|
48843
|
1987
|
76770
|
1988
|
81271
|
1989
|
104419
|
1990
|
93840
|
1991
|
70774
|
1992
|
67180
|
1993
|
67152
|
1994
|
68813
|
1995
|
77110
|
1996
|
73448
|
1997
|
73995
|
1998
|
80178
|
1999
|
69958
|
2000
|
79064
|
2001
|
86183
|
2002
|
80647
|
2003
|
68132
|
2004
|
77841
|
2005
|
93978
|
2006
|
91591
|
2007
|
100859
|
2008
|
84072
|
2009
|
69587
|
2010
|
77248
|
2011
|
76826
|
2012
|
82784
|
2013
|
95488
|
2014
|
100700
|
2015
|
106735
|
2016
|
117162
|
上記金額を縦軸にとり、横軸を時間軸として年とし図示すれば、下記グラフである。
グラフを見ると3つの山がある。
最初の一つは、1989年(平成元年)の10兆4419億円である。これは平成バブルの時期である。
2つ目は、2007年(平成19年)の10兆0859億円である。これは不動産ファンドバブルの時期である。
3つ目は、2016年(平成28年)の11兆7162億円である。これは現在のリートバブルの時期である。
前2つの山は、貸出額が10兆円を越えると、途端に貸出額は減少した。
経済の自立的調整が作用していると判断出来た。
3つ目の山は、現在のリートバブルの時期であるが、貸出額が10兆円を越えても貸出額は減少せず、逆に増えている。経済の自律的調整が効かなくなっている。
鑑定コラム1539)「2015年度の法人企業の売上高は1431兆円」
鑑定コラム1541)「法人企業の売上高の推移」
鑑定コラム1460)「銀座の土地が坪2億円で取引された」
鑑定コラム1542)「東京の最高地価と推移」
鑑定コラム462)「経済自律則か、「10兆円」という金額」
鑑定コラム1544)「リートバブルの終焉は近いか」
鑑定コラム2083)「日本最高地価と不動産業貸出額」
▲
フレーム表示されていない場合はこちらへ
トップページ
前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ