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新潟で泊まったホテルの朝、ホテルのレストランで朝食をとりながら、日本経済新聞を読んでいた。
新潟地方経済版を開いた時、一つのヘッドラインに目が止まった。
「北陸ガス 柏崎市から61億円でガス事業買収」の見出しであった。
内容は、新潟市や長岡市で都市ガス事業を行っている北陸ガス株式会社が、柏崎市、刈羽村で都市ガス事業を行っている柏崎市から、そのガス事業を買い受けるという内容のものであった。
売買価格は、約61億円であり、柏崎市ガス事業の2015年度の売上高は、約29億円であると、2017年3月24日の日本経済新聞は報じている。
都市ガス事業の民営化である。
売上高に対する売買価格の倍率は、
61億円
───── = 2.1
29億円
2.1倍である。
「2.1倍・・・、待てょ、高いのでは無いか?」
と私は、記事を読んで思った。
営業利益を7%とすると、29億円の売上高では、
29億円×0.07=2.03億円
の営業利益である。
この営業利益金額で、購入価格61億円を回収するには、
61億円÷2.03億円≒30
30年かかる。30年間利益0円で、投下資本の回収のみである。その間設備の更新費という新たな投下資本を必要とする。
その様な経済行為を、経済人は行うであろうか。
北陸ガスと柏崎市ガス事業の財務諸表はないか調べて見た。
北陸ガスは平成28年3月期、柏崎市ガス事業は平成27年3月期の財務諸表が、ネットで公表されており得られた。
下記である。単位百万円。
北陸ガス 柏崎市ガス事業
売上高 33,393 3,178
営業利益 1,349 ▲247
有形固定資産 34,730 9,280
柏崎市ガス事業は売上高31.78億円であるが、営業損失は▲2.47億円である。有形固定資産は92.8億円である。
北陸ガスは売上高333.93億円、営業利益は13.49億円である。営業利益率は、
13.49億円
─────── = 0.040
333.93億円
この営業利益率で考えると、北陸ガスが売上高29億円(日経記事の29億円を採用して論じる。以下同じ)の柏崎市ガス事業を引き受けた場合、北陸ガスの経営方針に従うことになり、4.0%の営業利益の確保が義務づけられることになる。
そうした場合の予想される営業利益は、
29億円×0.04= 1.16億円
である。
購入金額61億円の回収年は、
61億円÷1.16億円≒53
53年となる。
53年という長期間の投下資本の回収という買収は、企業経営上大丈夫か。
北陸ガスの売上高と有形固定資産の関係を見る。
売上高に対する有形固定資産の割合は、
34,730
───── = 1.04
33,393
1.04である。
有形固定資産が時価評価されているとすれば、それは市場価値を現しており、売買価格相当ということになる。
北陸ガスの会社規模を中規模の都市ガス企業とみなせば、中規模のガス事業の売買価格は、有形固定資産額相当と云うことになる。大規模の東京ガスについては、後記で分析する。
柏崎市ガス事業の適正な売買価格は、どれ程かと云えば、購入者である北陸ガスの営業利益率を採用して営業利益率4%とすれば、その金額は1.16億円である。その25年分とすると、
1.16億円×25≒29億円
29億円程度と判断される。
柏崎市ガス事業の有形固定資産は、92.8億円であるが、売上高より検討すれば、甚だ過大であり、売上高程度の29億円程度の資産価値と判断される。
日本の都市ガス事業会社の第一人者である東京ガスの財務諸表は、下記である。単位百万円。
年
|
売上高
|
営業利益
|
営業利益率
|
有形固定資産
|
有形固定/売上高
|
売上高/有形固定
|
2012年3月期
|
1754257
|
77075
|
0.044
|
1105587
|
0.630
|
1.587
|
2013年3月期
|
1915639
|
145633
|
0.076
|
1140003
|
0.595
|
1.680
|
2014年3月期
|
2112117
|
166044
|
0.079
|
1195487
|
0.566
|
1.767
|
2015年3月期
|
2292548
|
171753
|
0.075
|
1264979
|
0.552
|
1.812
|
2016年3月期
|
1884656
|
192008
|
0.102
|
1264979
|
0.671
|
1.490
|
平均
|
1991843
|
150503
|
0.075
|
1194207
|
0.603
|
1.667
|
2012年から2016年の平均の数値は、
売上高 1兆9918億円
営業利益 1505億円
営業利益率 7.5%
有形固定資産 1兆1942億円
売上高に対する有形固定資産倍率 0.603
有形固定資産に対する売上高倍率 1.667
である。
有形固定資産に対する売上高倍率は、有形固定資産倍率である。
北陸ガスの営業利益率4.0%、有形固定資産倍率1.04は、中規模都市ガス事業会社としては、妥当な水準では無かろうかと思われる。
なお、企業の設備投資は、売上高の20%が限度である。
今回の北陸ガスの柏崎市ガス事業買収の61億円は、
61億円
───── = 0.183
333億円
売上高の18.3%の規模であり、企業経営としては、妥当な範囲である。
北陸ガスは、適正価格29億円のガス事業を、61億円と倍の価格で取得した。
この高値買いは、営業地盤の拡大という理由が、強くあったものと思われる。
売り主の柏崎市ガス事業側が、有形固定資産92.8億円あるから、それは税金で造ったものであり、その金額で無いと売却出来ないといくら主張しても、購入者の北陸ガス側は、企業経営上の投下資本の経済経験則の限度額の縛りから、92.8億円はとても飲めなく、ギリギリ譲歩して18.3%の61億円で合意したということであろうか。但し、これは私の勝手な推測である。
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