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1620)水道事業を民間企業が運営している

 新潟に行って来た。

 新潟市には2つの港がある。新潟西港と新潟東港である。

 行って来たのは、新潟東港のほうである。

 港の周りの新潟東港工業団地の中の土地の鑑定評価で訪れた。

 同工業団地は、新潟市と聖籠町とにまたがっているが、評価対象土地は新潟市側であった。

 周辺には、日本軽金属、吉野石膏、小野田化学工業等の大規模の工場や大規模の倉庫があった。

 道路幅員は25m前後と広い。用途地域は工業専用地域である。

 道路名と道路台帳の幅員を知りたいと思い、新潟市役所の道路課に行ったところ、北区役所に行けと云う。北区役所は新潟市役所から遠く離れていることから、出来れば行きたくない。

 「市役所であるから、ここでは分からないのか。」

と問えば、道路の管理は各区役所に任せているから、ここでは分からないと云う。

 場所の図面を示して、分かる方法は無いかと係員と押し問答していたところ、別の人が、調べている道路は東港の工業団地内にあり、その道路は市の管理している道路ではないと云いだした。

 北区役所に行っても分からないということが分かった。

 北区役所に行かずに済むことになった。

 では何処に行けば良いのかと聞けば、そこは県が作った工業団地であるから、県の企業局に行って聞けと云う。

 東港に県の事務所があるから、そこへ行けば分かると教えてくれた。

 次に水道の埋設管の径を知りたいと思い、水道局は何処かと聞けば、この庁舎内には無く、車で5分くらいのところに水道局があると云う。
 
 車のナビの表示に従い水道局に行った。

 水道局の窓口の人に、埋設管の径を知りたいと云うと、訪問者用のパソコンで調べよと云う。

 パソコンで所在地番を打ち込んだところ、図面の中に水道管の敷設状況が示されない。つまり水道は無いということである。

 「おかしいな。現地の事務所では水道を使っていたのだが。」

 係員に話したところ、係員もパソコンをいじくっていたが、同じである。

 事務所の中の別の人に聞いた答は、

 「新潟市は、そこの地区の水道を管理給水していない。そこは県が工業団地を築造したところで、水道は県が管理しているから、そちらに行って聞いて下さい。」

である。

 車で40分程度かけ、対象地の近くに再び戻り、東港の県の水道管理事務所に行く。

 県の事務所の係の人に埋設水道管の径を知りたいと云うと、

 「平成21年までは県が管理、給水していたが、それ以後民間企業に売却してしまった。書類も全て渡してしまったから、ここでは分からない。管理運営している民間企業に行ってください。」

の返事である。

 その会社は何処にあるのか聞けば、車で1時間以上かかるところと云う。

 「えーッ、また違うところに、車で1時間もかけて行かなくてはならないのか。」

 うんざりである。

 場所と電話番号を教えてくれた。

 そして、「行く前に電話で担当者が居るかどうか確かめて行った方がよい」というアドバイスをしてくれた。

 それは何故かと聞けば、「担当者は、こちら東港の現場事務所に来ている場合が多いから」と云う。

 水道を管理運営している企業に電話したところ、担当者は外出していて不在だった。

 用件を話したところ、担当者に連絡して、私の携帯に電話させますと取りはからってくれた。

 担当者の電話を待った。

 しばらくすると、担当者から電話が入った。

 東港の現場事務所に居ると云うことであった。

 現場事務所は何処かと聞けば、聖籠町の東京税関の近くの建物と云う。

 車でその現場事務所に行った。

 担当者に会い、やっと対象地の前面道路に敷設してある水道管の径を知ることが出来た。径200ミリである。

 随分と時間と車の距離を使った。

 東港の水道を管理しているその担当者は、今迄に一人、不動産鑑定士が水道管の径を聞きに来たと云う。

 私と同じ苦労をしながら一人の不動産鑑定士が、ここに聞きに来ていたのか。

 その人も大変であったろうと想像する。

 民間企業が水道事業をやっていることは珍しい。

 いきさつを担当者に聞いたところ、「県がやっていた水道事業のみ、うちが買い取って行っている。工業用水は県が引き続き給水している。」ということであった。

 儲かっているのかと聞けば、「儲かる事業ならば県は手放すことはしませんょ」という返事であった。

 民間で水道事業を運営している企業は、明和工業株式会社(本社新潟市 関根繁明社長)と云う会社だった。

 明和工業株式会社をネットで調べると、ガス・水道の栓とか弁や管を作っている会社のようである。

 会社経歴の中で、

 「平成21年12月 国内初の水道事業民営化として新潟東港水道事業の給水開始。」

とある。国内初の水道事業の民営化を行った会社である。

 平成21年から民間企業の明和工業株式会社に水道事業を譲渡したと、新潟県の担当者が話していたが、それは事実のようである。

 水道の料金は、1立方メートル222円である。水道事業は採算が合っているのであろうか。

 ネットに明和工業株式会社が、「新潟東港水道事業部財務諸表」(平成27年4月〜平成28年3月31日)を発表していた。

 それによると、下記である。

     売上高   146,202,986円
     売上原価  114,465,985円

売上総利益 31,737,001円
販売管理費  32,527,317円 
営業利益   ▲790,316円

 明和工業株式会社本体は、売上高54.13億円、営業利益5200万円の会社である。

 現在水道事業は、役所の独占事業となっているが、今後それは崩れ、役所が水道事業を民間委託する時代になるのでは無かろうかと私は思う。その兆しもある。

 新潟に行き、水道の民営化事業をいち早く行っている企業があることを知って、私はその企業経営者の先見性に敬意を表す。


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