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1.はじめに
東京の乗降客の多い主な駅周辺には、書家は誰なのか私には分からないが、店名が見事な毛筆で書かれた「日高屋」という名前の店舗を良く目にする。
ラーメン・餃子・中華料理を低料金で食べさせてくれる店である。
私も時々利用する。
何と云っても安い。
生ビール、餃子、メンマ、枝豆を頼んで、1000円札でおつりが来る。
夜になると「ちょい飲み」族が店を占領し、中華料理店から居酒屋になってしまう。
背広姿のサラリーマンで満席である。
その日高屋を経営しているのは、埼玉を地盤とする株式会社ハイデイ日高(神田正会長、高橋均社長)という企業である。
株式会社ハイデイ日高の有価証券報告書から賃料等を分析してみる。
2.売上高
株式会社ハイデイ日高の売上高を見ると伸びは著しい。
同社の有価証券報告書によれば、平成16年以降の売上高を記すと下記である。単位千円。
平成16年 10,234,427千円
17年 11,734,563
18年 13,891,650
19年 16,006,173
20年 17,719,988
21年 20,022,500
22年 22,680,591
23年 24,827,390
24年 27,406,294
25年 29,520,805
26年 31,997,745
27年 34,424,235
28年 36,795,910
29年 38,514,283
平成16年の売上高は、102億円であったのが、平成29年には385億円の売上高である。
ハイデイ日高の売上高は、一貫して伸びている。平成16年から平成29年の間に、
33,514,283
────── ≒3.3
10,234,427
約3.3倍の売上高となっている。
3.店舗数
店舗数は、同報告書によれば、平成29年(2017年)2月末現在で、下記である。
東京 192店舗
埼玉 98店舗
神奈川 64店舗
千葉 40店舗
栃木 1店舗
茨城 2店舗
計 397店舗
4.従業員数と給与
従業員は747人で、臨時従業員数、3353人という。
平均年間給与は、賞与、基準外賃金を含んで、5,030千円と有価証券報告書は記す。
5.水道光熱費割合
飲食店の営業には欠かせられない水道光熱費は、下記である。
平成28年2月期 2,054,094千円
平成29年2月期 1,844,748千円
売上高に対する割合を求めると、下記である。
平成28年2月期
2,054,094千円
──────── ≒5.6%
36,795,910千円
平成29年2月期
1,844,748千円
──────── ≒4.8%
38,514,283千円
6.賃料割合
賃料は、下記である。
平成28年2月期 3,920,328千円
平成29年2月期 4,098,918千円
売上高に対する割合を求めると、下記である。
平成28年2月期
3,920,328千円
──────── ≒10.7%
36,795,910千円
平成29年2月期
4,098,918千円
──────── ≒10.6%
38,514,283千円
水道光熱費に対する賃料の倍率を見ると、下記である。
平成28年2月期
3,920,328千円
──────── ≒1.91
2,054,094千円
平成29年2月期
4,098,918千円
──────── ≒2.22%
1,844,748千円
賃料は、水道光熱費の2倍程度である。逆に考えれば、水道光熱費は賃料の50%程度の金額と云える。
7.一店舗当りの売上高
一店舗当りの平成29年2月期の売上高は、下記である。
38,514,283千円
──────── ≒97,013千円
397
日高屋の一店舗の売上高は、年間1億円と云えよう。
日高屋の店舗の前に立ち、ここで年間1億円の売上があるのかと思うことになる。
1億円の売上高のある店舗地域とはどういう地域か、周辺の店舗状況を見渡せば知ることが出来よう。
不動産鑑定にあっては、この地域の認識を肌で感じることは非常に大切である。
駅前の商店街に位置する日高屋の5、6店舗の前に立ち、周囲の商業地の状況を見比べて見れば、自ずから、売上高1億円の商業地がどういう地域か、その地域性を会得出来よう。その会得は、商業地を鑑定評価する際の商業地の見極めの第何歩かになるのではなかろうか。
月額の売上高は、
97,013千円÷12≒8,084千円
である。
一日当りの売上高は、
8,084千円÷30≒269千円
である。
店舗の面積を30坪とすると、一席当り0.7坪で計算すると、客席数は、
30坪÷0.7坪=42.8≒42席
42席である。
一席当たりの売上高は、
269千円÷42席≒6,400円
である。
一日の回転数を10回転とすれば、
6,400円÷10回転=640円
客単価は640円ということになる。
8.一店舗当りの賃料
一店舗の賃料を考える。
平成29年2月期の一店舗当りの賃料は、
4,098,918千円
──────── ≒10,324千円
397
月額の賃料は、
10,324千円÷12≒860千円
である。
店の面積を30坪とすると、
860千円÷30坪≒28.667千円
坪当り2.8万円の賃料である。
駅前商業地の1階に日高屋は店を構えているから、駅前商業地の1階店舗の賃料は、概ね坪当り2.8万円と云えよう。
9.預り金
預り金を考える。
平成29年2月期の有価証券報告書によれば、397店舗の敷金・保証金の金額は、4,394,830千円である。
一店舗当りの敷金・保証金は、
4,394,830千円÷397≒11,070千円
である。
一店舗当りの月額賃料は、860千円と求められている。
敷金・保証金の月額賃料の月数を求めると、
11,070千円
────── ≒ 12.8ヶ月
860千円
12.8ヶ月である。
敷金・保証金のヶ月分より推定すると、随分と良い場所に立地していることが推定される。
10.内部造作費
内部造作費を推定する。
平成29年2月期の有価証券報告書によれば、同決算期内の新設店舗は、22店舗である。
その22店舗の内装・設備費用は、608,625千円である。
新設一店舗当りの内装・設備費は、
608,625千円÷22≒ 27,664千円
である。
店舗の面積を30坪とすれば、
27,664千円÷30≒ 922千円
坪当り922千円である。
坪当り922千円とは、随分と高い内装・設備費である。
飲食店の内部造作費については、鑑定コラム851)「飲食店舗の造作費は坪当り66万円」で記してある。
そのコラム記事の分析では、飲食店の平均内部造作費は坪当り66万円である。
それに比すと、日高屋の内装・設備費は随分と高く、標準偏差より考えると、かなり上品等の部類に入る内装・設備費である。
ここ数年、建築工事費がもの凄く上昇しているが、その影響を受けているのであろうか。
減価償却費から、減価償却年数を推定する。
減価償却費は1,061,249千円である。
一店舗当りの減価償却費は、
1,061,249千円
──────── ≒ 2,673千円
397
である。
新設一店舗当りの内装・設備費は、前記より27,664千円であった。
27,664千円÷2,673千円≒10.3年
減価償却年数は、10.3年と求められる。
減価償却費を10倍すれば、新設店舗の内装・設備費を知ることが出来ることになる。
この数値は、飲食店舗の明渡立退料の移転先の店舗の内装・設備費を推定する時に利用出来るのでは無かろうか。
鑑定コラム267)「すかいらーくがファミリーレストランを買収」
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鑑定コラム18)「店舗売上高と家賃割合」
鑑定コラム976)「ゼンショーの店舗家賃は売上高の10%」
鑑定コラム25)「牛どん吉野家の家賃6%」
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