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1854)借地権価格、借家権価格は「現在価値」で鑑定基準の統一を

 借地権価格、借家権価格の求め方として、何れも賃料差額によって求める手法がある。

 賃料差額の賃料は、借地権価格の場合は地代であり、借家権価格の場合は家賃である。

 借地権価格、借家権価格を賃料差額より求める場合、不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」とする)は、次のごとく定義する。
 
 借地権価格の求め方では、借地権価格は「借地権の付着している宅地の経済価値に即応した適正な賃料と実際支払賃料との乖離(以下「賃料差額」という)及びその乖離の持続する期間を基礎にして成り立つ経済的利益の現在価値」(平成26年改正鑑定基準国交省版P45)

 借家権価格の求め方では、「さらに、借家権の価格といわれるものには、賃貸人から建物の明渡しの要求を受け、借家人が不随意の立退きに伴い事実上喪失することとなる経済的利益等、賃貸人との関係において個別的な形をとって具体に現れるものがある。この場合における借家権の鑑定評価額は、当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との差額の一定期間に相当する額に賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額」(平成26年改正鑑定基準国交省版P50)

 鑑定基準は、借地権価格、借家権価格も実際支払賃料との差額(乖離)の経済的利益という。

 その差額の期間については、借地権価格の場合には「乖離の持続する期間」と云い、借家価格は「差額の一定期間」と期間の表現は異なるが、ある期間の存在を考えている。

 賃料差額が、ある期間存続による経済的利益が、地代の場合は借地権価格であり、家賃の場合は借家権価格である。

 その経済的利益について、借地権価格は「経済的利益の現在価値」とし、借家権価格は「相当する額」の表現になっている。

 経済的利益の表現が、借地権価格と借家権価格とで異なっている。

 借家権価格の求め方が適正であるとすれば、借地権価格の表現を「乖離の持続する期間に相当する額」とすればよい。そうしなくて「現在価値」としていることは、相当する額では正しく無いという考え方が潜んでいることになる。

 とすれば、借家権価格にも同じことが云えるのでは無かろうか。

 差額賃料より求める借地権価格、借家権価格の経済的利益に手法の違いが必要であろうか。

 手法の違いが必要であるという明確な合理的理由が存在するのであれば、それを明確に記載すべきであるが、現行鑑定基準には、それが記載されているとは私には読めない。

 とすれば、差額賃料より求める借地権価格、借家権価格は、経済的利益の「現在価値」という表現で統一した方が良いと思う。

 現行の鑑定基準の借家権価格の「相当する額」の表現を、「相当する額の現在価値」或いは「経済的利益の現在価値」に改正すべきと私は思う。


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