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2175)個人施行者の再開発事業には都市再開発法108条2項の適用はない

1.回答書での東京都の都有地売却に違法性は無いという主張

 東京都民の有志が、中央区晴海の東京オリンピック選手村土地約13.4万uの払い下げ価格が129億円余とあまりにも安い価格であることから、東京都監査委員に監査請求したものに対する回答文書(以下「回答書」とする。)によれば、東京都は晴海選手村の土地の売却行為は地方自治法237条2項に違反せず合法であると次のごとく正当性を主張する。

 「自治法第237条第 2項では、「普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合」でなければ、「適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。」とされている。また、東京都公有財産規則 (昭和 39年東京都規則第 93号。以下「公有財産規則」という。)及び財価審条例で定められる財価審は知事の諮問に応じ、不動産価格を評定し答申することとなっている。

 しかしながら、本件は、都の個人施行による第一種市街地再開発事業であり、再開発法第 108条第 2項の「施行者が地方公共団体であるとき」は、「施行者が第一種市街地再開発事業により取得した施設建築敷地」の「管理処分について」は、「当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は、適用しない」に該当し、自治法第237条第 2項及び財価審条例は適用除外となる。

 以上から、本件は、自治法第 237条第 2項及び財価審条例は適用除外であり、適法である。」(回答書 P40〜41 第3編2章(1)節エ項(イ)号)

2.地方自治法第237条第 2項

 地方自治法第237条第2項は、次のごとく規定する。
 
 「(財産の管理及び処分)

第二百三十七条 この法律において「財産」とは、公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。

2 第二百三十八条の四第一項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。

3 (省略)」

3.都市再開発法第108条2項

 都市再開発法第108条2項は、次のごとく規定する。

 「第百八条 第一種市街地再開発事業により施行者が取得した施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地は、次に掲げる場合を除き、公募により賃貸し、又は譲渡しなければならない。この場合において、施行者は、賃貸又は譲渡後の施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地が当該第一種市街地再開発事業の目的に適合して利用されるよう十分に配慮しなければならない。」

 (一〜五号までは省略)。

2 施行者が地方公共団体であるときは、施行者が第一種市街地再開発事業により取得した施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の所有を目的とする地上権、施設建築物の一部等又は個別利用区内の宅地の管理処分については、当該地方公共団体の財産の管理処分に関する法令の規定は、適用しない。」

4.市街地再開発の事業の種類と施行者

 都市再開発法は、 事業の種類を第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業2つに分けている。

 その違いは下記である。

 ・ 第一種市街地再開発事業<権利変換方式>

 権利変換手続きにより、従前建物、土地所有者等の権利を再開発ビルの床に関する権利に原則として等価で変換する。

 ・ 第二種市街地再開発事業<管理処分方式(用地買収方式)>

 公共性、緊急性が著しく高い事業で、一旦施行地区内の建物・土地等を施行者が買収又は収用し、買収又は収用された者が希望すれば、その対償に代えて再開発ビルの床を与える。

 そして施行者については、次の5つに分けている。

 個人(第一種のみ施行)、組合(第一種のみ施行)、再開発会社、地方公共団体、都市再生機構等

 事業区分そして施行者区分をしている為、都市再開発法は、それぞれの区分に対応して規定がなされている。

5.晴海選手村土地の市街地再開発事業

 晴海選手村土地の市街地再開発事業は、監査委員の回答書によれば、

     ・事業の種類は第一種市街地再開発事業

     ・施行者は個人

とある(回答書P13)。その個人とは東京都という個人である。

 つまり13.4万uの再開発事業は、東京都という「個人」が行う第一種市街地再開発事業ということである。

 東京都は行政体では間違いなく地方公共団体であるが、晴海選手村土地の市街地再開発事業では、地方公共団体の施行者では無く、個人施行者ということである。この事をしっかりと頭の中に叩き込んで、下記の文章を読んでいただきたい。そうしないと頭の中がこんがらかって分からなくなる。その意味は読み終えれば分かる。

6.都市再開発法108条2項は個人施行者には適用出来ない

@ 都市再開発法108条2項は個人施行者には適用出来ない

 上記の都市再開発法108条2項(以下「法108条2項」と呼ぶ)を読み直して欲しい。

 同項の書き出しは「施行者が地方公共団体であるときは」とある。

 同項が適用出来るのは「施行者」が「地方公共団体」の場合に限るのである。

 本件の市街地再開発事業は、「施行者」は東京都という「個人」である。東京都という「地方公共団体」では無い。

 その事は上で記した。監査委員の回答書の第3編1章の事実の確認において、施行者は「個人」とし、その個人は東京都と事実確定されている。(回答書 P13)

 法律の建前であれば、地方公共団体が行う市街地再開発事業は、第二種市街地再開発事業であり、第一種市街地再開発事業が出来るのは個人若しくは組合である。

 このことは、上記した事業の種類と施行者の箇所に記してある。

 東京都はれっきとした地方公共団体である。

 それならば施行者地方公共団体として、法が定める第二種市街地再開発事業で再開発事業を何故行わないのか。

 それを敢えて「個人」の施行者として第一種市街地再開発事業を行っている。

 普通に考えれば、何か目的があるなと考えられる。よこしまな目的があるのでは無かろうかという考えの方が大きい。

 「個人」の施行者として事業を行いながら、施行者が地方公共団体の場合にしか適用出来ない法108条2項を適用して、地方自治法237条2項は適用され無いから、都議会の承認等は必要なく、行為には違法性は無いと主張する。

 冗談では無い。違法性が無いどころか、法を自らが犯しているのでは無いのか。

 本件市街地再開発事業は、東京都という「個人」施行者による事業であり、個人施行者の場合には法108条2項が適用出来ないのを忘れて、自らは行政では地方公共団体である事から、施行者はあたかも地方公共団体であるとすり替えて法108条2項が適用できると主張して違法性は無いと云っているのでは無いのか。

 東京都は確かにれっきとした地方公共団体である。それは行政の話である。

 晴海選手村の土地の再開発事業では「個人」扱いである。地方公共団体の施行者扱いでは無い。

 施行者の個人と行政の地方公共団体であることを使って、あたかも地方公共団体が施行者と思わせるごとく論理のすり替えを見事に行って、違法性は無いと主張している。つまり人を騙くらかしている。

 見事なトリック弁証である。

 この見事なトリック弁証に多くの人々がひっかかり、後で述べるが、国土交通省の高級官僚も見事に引っかかって逆利用されている。

 法108条2項の適用は無いことから、行政の地方公共団体であるという事になり、地方自治法237条2項が適用され、財産譲渡には都議会の承認と適正な価格の譲渡で無ければならない事になる。

A 監査委員の回答書

 監査委員の回答書はP60で次のごとく云う。

 「B 再開発法第108条第2項(施行者が地方公共団体であるときは、・・・当該地方公共団体の財産の管理部分に関する法令の規定は、適用しない。)の規定は、個人施行及び同法第2条第4項に定める施行者(地方公共団体施行)のいずれの場合であっても適用されうる。」

という判断を示して、違法・不当では無いと監査する。

B 監査委員の回答書は間違っている

 上記引用で出て来る法第2条の2 1項〜6項は、市街地再開発事業を行う事が出来る人及び組織の規定である。

 4項は、「地方公共団体は、市街地再開発事業の施行区域内の土地について市街地再開発事業を施行することができる。」の規定条文である。

 この規定条文は、施行者になれるという資格を有するという宣言だけである。

 地方公共団体が、自らが個人施行者を選択して市街地再開発事業を行えば、施行者の区分は「個人」施行者になり、個人施行者の区分規定に従って事業を行わなければならなく、地方公共団体であるから施行者の区分が「地方公共団体」に入るものでは無い。

 このことから監査委員の回答書は法律の解釈を間違えている。

C 国交省官僚は東京都官僚に騙されたのでは?

 上記引用は、回答書のP60〜61に記載されているが、監査委員がその結論に至ったことについて、

「ところで、再開発法の解釈について、国土交通省に関係者調査したところ、本件については、認可権者である都において法令の規定に基づき、適切に判断、対応すべきものとした上で、一般論として ・・(筆者略)・・B 再開発法第108条第2項(施行者が地方公共団体であるときは、・・・当該地方公共団体の財産の管理部分に関する法令の規定は、適用しない。)の規定は、個人施行及び同法第2条第4項に定める施行者(地方公共団体施行)のいずれの場合であっても適用されうる・・・・(筆者略)・・との見解を得た。」

ことによるものである。

 「国土交通省の見解」と云っているが、国交省の役人が見事に、東京都の役人に騙されたのでは無かろうかと私には思われる。

 国土交通省は東京都に騙され、「国土交通省の見解」として東京都に利用され、東京都から責任転嫁されている。

 さて、国土交通省はどうする。東京都からコケにされ、騙され、挙げ句に責任転嫁されて放置しておくのか。都市再開発事業政策に与える影響は大きいょ。

 巷間、東京都の官僚の方が、国の官僚より優秀と云われることがあるが、それは東京都の官僚の方が実務に長けている為に云われる話である。

 こう云うと、国土交通省及び他の省の高級官僚を自負する人々から、ふざけるなと怒られそうであるが、東京都は個人施行者として届け出たものであり、そうすれば、個人施行者の行為規定に従わなければならないであろう。

 法108条2項は、はっきりと「施行者が地方公共団体であるとき」と明記してある。「施行者が個人であるとき」とは明記してない。それをどうして施行者が個人と届けてある施行者が法108条2項の適用を受けることが出来るのか。法のどこを読めば、その様に解釈出来るのか。

D 地方自治法237条2項の適用を受ける

 上記より、本件晴海選手村土地の市街地再開発は、東京都の「個人」施行者である事から、108条2項の適用にはならない。それ故、東京都は行政体としては地方公共団体であるから地方自治法237条2項の適用と成り、財産の処分については、議会の承認、価格は適正な価格での処分によることが必要である。

 東京都の今回の行為は違法であると私には判断される。

7.審査委員はどこに行った

@ 審査委員の設置

 都市再開発法第7条の19は、次のごとく規定する。

 「(審査委員)

第7条の19 個人施行者は、都道府県知事の承認を受けて、土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから、この法律及び規準又は規約で定める権限を行う審査委員3人以上を選任しなければならない。」

 個人施行者の市街地再開発事業の場合には、法第7条19によって審査委員3人以上を選任しなければならない。

 この事は回答書P16にも記してある。

 審査内容は、土地及び建物の権利関係又は評価について、それ等の価格が適正であるかどうか公正に判断することである。

 回答書のP21に、「平成28年4月25日 都(施行者)は、審査委員全員の同意を得た上で、都(認可権者)に権利変換計画の認可申請を行う」とあり、この時に審査委員の職名が出て来る。

 この事から審査委員は選定されていたことになる。

A 審査委員の名前を公表せよ

 どなたが審査委員になっているのか。審査委員は公職であることから名前を隠す理由が無い。審査委員の名前を公表せよ。不動産鑑定士の名前がでてくるのでは無かろうか。

B 審査委員の会議の議事録を公開せよ

 審査委員の仕事は、土地建物及び権利関係、価格を公正に審査することである。

 本件土地の価格表示した不動産鑑定書は、平成28年2月23日付で発行されている。

 施行者が審査員全員の同意をえた上で、権利変換計画の認可申請を行ったのは、平成28年4月25日である。

 平成28年2月23日〜4月25日の間に、審査委員は本件土地価格が適正価格であると審査したものと推定される。

 法80条第1項は、宅地等の価額は「近傍類似の土地若しくは近傍同種の建築物に関する同種の権利の取引価格等を考慮して算定した相当の価額とする。」

と規定する。

 宅地の価格は、近傍類似の土地の取引事例を考慮して算定した相当価額と云っている。

 近傍類似にはu当り100万円を超える取引事例がある。それにも係わらず、5-3街区の不動産鑑定価格はu当り27,000円である。

 審査委員は、この価格は適正な価格であると審査して、権利変換計画の認可申請されたのである。

 一体どういう審査をしたのか。その審査議事録を公表していただきたい。

 裁判において、当然証人喚問され、偽証した場合は偽証罪に問われる法廷宣誓の上裁判官の面前で、価格決定に至った審査内容を述べていただきたい。

C 監査委員による審査委員意見聴取が行われていないのは何故か

 監査委員の回答書のP55〜59では、監査委員の「関係人調査」が行われているのは、国土交通省、オリンピック・パラリンピック準備局、不動産鑑定調査会社の3箇所である。

 審査委員の聴取が成されていない。これはどうしてなのか。




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