2007年の暮れも近く、セ氏−17度の街に行ってきた。
猛吹雪の中の不動産鑑定現地立合調査である。
吹雪の中でのデジカメに、対象地及び建物が果たして写っているかどうか心配しながら、シャッターを押した。
道路は雪で固められ、歩道の脇には除雪された雪が小山を築いている。
建物の屋根には、およそ30cmを超える雪が積もっている。
雪に埋もれていて道路と敷地との境界がどこなのか分からない。
巻き尺で道路の幅員を測ることなど出来ない。歩測ではかろうにも境界が分からず、かつ道路脇の雪の小山が邪魔して歩測すら出来ない。
市の道路管理課の道路台帳で幅員を確認するということにした。
境界石は雪に深く埋もれており、建物の敷地の範囲は、案内人がおおよそ指し示す目印の植木やブロック塀を信ずる以外方法は無い。
雪国の冬の土地境界の確認を、雪国の不動産鑑定士の方々はどの様にして行っているのであろうかと、私は聞きたくなってしまった。
雪国の雪中の吹雪の中の不動産鑑定の現地確認を初めて経験した。
年内(2007年)に現地だけでも見ておいて欲しいという依頼者の要望もあり、暮れも押し詰まった2007年12月25日・26日に、天気予報が「雪」と出ているのを承知で空路旭川に行ってきた。
空港から旭川市内までのタクシーから見える景色は、全て雪に覆われた景色である。
タクシーの運転手に、
「見える雪はどの位積もっているのか。」
と聞けば、
「およそ40cm位かな。」
と言う。
道路は黒い地面が見えない。
車は固められた雪の上を走っている。
雪の旭川に初めてやって来た。
年明け早々に鑑定評価額をということもあり、正月は遅れに遅れて滞っている賃料の仕事と旭川の鑑定の仕事に費やされそうだ。
何ヵ所かの現地を、依頼者である不動産所有の企業の重役が、およそ半日かけて車で案内してくれた。
物件を見るために移動する車の中で、案内者と話した。
案内者は生粋の旭川っ子の人であった。
旭川で生まれ育ち、旭川で働き生活してきていた。
その案内者が言うには、北海道の第2の都市である旭川の景気は良くないと言う。
北海道で2番の人口を抱える都市ですら景気が良くないと言うのであれば、一体どこが景気が良いのか。
「景気の良いのは札幌か。」
と問えば、札幌も景気良くないと言う。
札幌にも企業の営業所をもっているため、札幌の経済事情にも案内者は詳しい。
旭川は何の業種が特に悪いのかと聞けば、
「全体的にどの業種も売上が落ち込んでいるが、特に旭川の特産である家具業が悪い。」
という。
売上が半分から1/3に減ってしまっているという。
家具製造業は加工分業体制の業種で、職としての裾野が広く、この業界が不景気であることは、旭川の景気、所得、小売業への売上、税収に大きな影響を与えることになる。
私は旭川が「旭川の家具」のブランドを持つ家具の産地であるとは知らなかったが、北海道の中で、家具の製造出荷額のトップは旭川であるという。
そのトップ産業が振るわないのである。
「家具業の不景気の原因は何か。」
と問えば、
「いろいろあるが、最大の要因は、中国から安い家具が輸入されて来て、市場を奪ってしまう。」
という。
「又か。」
と私は思った。
瑞浪の窯業も中国製の安い価格によって市場を奪われ、壊滅的な打撃を受けていた。
旭川の家具製造業もそうらしい。
「中国製と旭川製を使い較べれば、旭川製の方が、デザイン、使いやすさ、仕上の細やかさ、堅牢さで優れているのだが。」
と案内人は言う。
寒い北海道で育ったミズナラの樹による家具は、「持ち」が違う。
しかし、購入者は値段の安い中国製品に向いてしまうらしい。
旭川市民の一人として生きている案内人は、市の主要産業で、明治以来培われてきた伝統産業である家具業が衰退していくことに、一抹の寂しさを感じているのである。
北欧の家具として、デンマークからイルムスの家具が日本にも入って来ている。その家具を好む日本人はいる。
旭川の家具の特徴を何とかアピールして旭川家具業界の復活を願う。
旭川の家具業の現状が案内者の言うごとく悪いのか、数値で確かめてみようと思い、瑞浪の窯業の場合と同じく、旭川市役所のホームページで、同市の産業統計数値を調べてみた。
経産省の工業統計調査によるものである。旭川の家具業の数値は下記のごとくであった。
平成6年 平成16年 事業所数 105 60 従業員数 2154人 1052人 製品出価額 246億円 114億円
事業所数は0.57 従業員数は0.49 製品出価額は0.47の水準である。
(旭川市住宅地平均価格 u当り円) 平成2年 u当り 30,100円 − 平成3年 u当り 30,700円 − 平成4年 u当り 31,300円 − 平成5年 u当り 31,200円 − 平成6年 u当り 31,100円 − 平成7年 u当り 31,600円 − 平成8年 u当り 32,400円 − 平成9年 u当り 32,600円 − 平成10年 u当り 33,000円 − 平成11年 u当り 33,100円 − 平成12年 u当り 33,000円 − 平成13年 u当り 32,900円 − 平成14年 u当り 32,700円 − 平成15年 u当り 32,500円 − 平成16年 u当り 31,800円 (-2.2%) 平成17年 u当り 30,100円 (-5.3%) 平成18年 u当り 28,200円 (-6.3%) 平成19年 u当り 26,800円 (-5.0%)