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あまり多く無いが、時々札幌に不動産鑑定評価に行くことがある。
家賃、地代、不動産の価格の鑑定評価である。多くは裁判での争いの際での鑑定評価であるが。
札幌を訪れ、調査で市内を移動する時には、タクシーを利用することが多い。
タクシーの運転手とよもやま話をしながら、やはり札幌の景気のことが気になり、運転手に、
「景気はどうですか。」
と質問している。
その返事は、常に、
「悪いです。」
の返事である。
何年もこの返事ばかりである。
一体いつまで札幌の不景気は続くのか。
そういうこともあって、今回少し札幌の景気状況を調べてみた。
札幌の人口は、北海道の全人口の1/3を越えて35%に達しようとしている。
20年前程は、10%程度の割合に過ぎなかったのであるが、20年前ほどから札幌に人が集まりだして来て、平成23年には34.7%の割合にまでなってしまった。
35%になるのは、時間の問題である。
何故、札幌に人が集まるのか。
何故、札幌の人口は増えているのか。
札幌に行けば、何とか食べていけると考えて、道内の人々は札幌に集まるのであろうか。
過去の札幌の人口と北海道の人口の割合を調べて見ると、下記の通りである。 札幌の人口は札幌市、北海道の人口は総務省統計局の調査による。
各年10月1日の住民基本台帳による人口である。
札幌市a 北海道b 割合a/b
平成19年10月 1,880,935人 5,279千人 33.7%
平成20年10月 1,885,064人 5,548千人 34.0%
平成21年10月 1,890,869人 5,524千人 34.2%
平成22年10月 1,896,225人 5,506千人 34.4%
平成23年10月 1,904,615人 5,486千人 34.7%
平成24年10月 1,921,069人 - -
この調子で行くと、4年後の平成28年には、札幌市は200万人都市になりそうである。
北海道の人口は、平成20年をピークにして減っているにも係わらず、札幌の人口は増えている。
道内の人々が、札幌に移住しているようである。
移住で札幌の人口が増加していることから、札幌の景気はさぞかし良いであろうと思いがちであるが、データは景気の良い数値を示していない。
札幌の景気判断の前に、北海道の景気判断について日本銀行、北海道の発表内容を記しておく。
日本銀行札幌支店の『金融経済概況』(2012年11月14日)は、北海道の景気について次のごとくいう。
「公共投資が下げ止まっているほか、住宅投資は貸家中心に持ち直している。・・・(中略)・・
個人消費は、このところ弱含みとなっている。
観光は基調的には持ち直しているものの、一部には弱含みの動きが見られる。
生産は弱めの動きとなっている。・・・・(中略)・・
労働需給は厳しい状況の中で穏やかに持ち直しているものの、雇用者所得は弱めに推移している。」
北海道経済産業局の『管内経済概況』(平成24年11月15日)は、北海道全体の景気について、
「本道経済は横ばいの動きとなっている」
と総括する。
そして個人消費等について、次のごとく分析する。
「個人消費 横ばいの傾向にある
住宅建設 緩やかながら持ち直しの動きが見られる
公共工事 横ばいの傾向にある
観 光 持ち直している
生産活動 弱い動きとなっている
企業倒産 件数、負債総額とも前年を上回った
雇 用 厳しい状況が続いているものの、緩やかに持ち直してきている」
それぞれデータを示しての判断である。
札幌市の景気については、札幌市の『データで見る!さっぽろ経済の動き』(平成24年12月3日)は、次のごとく云う。
「最近の札幌経済は、雇用情勢や観光客数で持ち直しの動きが続いておりますが、その一方で個人消費は概ね横ばい傾向となっており、全体としては持ち直しの動きに足踏み感が見られます。」
日本銀行札幌支店、北海道、札幌市のそれぞれの経済状況分析報告は、いずれも芳しいものでは無い。
「持ち直している」と言っても、もともと悪い状況にあるのであるから、それが持ち直していると云っても、倍額の売上高が出現する訳でもあるまいことから、どれ程のプラスの景況感が生じるものなのか。
札幌市が『札幌市統計書』で、札幌市内総生産を発表している。
札幌GDPである。
札幌市内総生産の金額は、下記である。平成16年度までは、偶数年度のみ記載する。
平成08年度 6,878,816百万円
平成10年度 6,822,644
平成12年度 6,823,167
平成14年度 6,691,718
平成16年度 6,634,092
平成17年度 6,582,253
平成18年度 6,487,521
平成19年度 6,381,207
平成20年度 6,263,267
平成21年度 6,178,699
平成21年度は、平成8年度より金額で7000億円減少している。
率にすると、
6,178,699−6,878,816
─────────── = ▲0.102
6,878,816
10.2%の減少である。
減少は毎年続いており、現在平成24年の札幌GDPは、6兆円を切っているのでは無かろうかと推定される。
GDPの内60%は、消費が占めていると言われている。
札幌GDPの消費の占める割合は、平成21年度のデータでは59.5%である。
GDPの60%が消費支出と云って良い。
60%のウエイトを占める消費は、実質的にGDPの方向性を決めていると云える。
消費が増えていることは、GDPが拡大していることを意味し、それは景気が良いことになる。
景気の良し悪しを単純化するならば、GDPが増加していることは景気が良い時であり、GDPが減少していることは不景気の時であると云える。
札幌GDPが減少状態にあると云うことは、その60%を占める消費支出も減少していると判断されうる。
消費支出が減少していることは、つまり不景気であると云うことになる。
札幌の景気が不景気であることは、これでおおよそ分かった。
しかし一つ不可解なことがある。
それは札幌の人口が増えているのに、何故GDP消費支出が増えないのか。
人口が増えるということは、人が増えることであり、その人は生活している訳であるから、増えた人数分の消費はふくらむ。
そしてそれは消費の増加であり、景気は良くなるハズである。
消費が増大すれば、GDPは増加するハズである。
しかし、札幌の現実はGDPは減少の一途になっている。
不思議なことである。
その疑問の解は、次のデータが答えてくれる。
札幌市は、札幌市民一人当りの所得を発表している。
下記である。GDPと同じく平成16年度までは偶数年のみ記載する。
平成08年度 2,921千円
平成10年度 2,844
平成12年度 2,840
平成14年度 2,750
平成16年度 2,624
平成17年度 2,644
平成18年度 2,572
平成19年度 2,568
平成20年度 2,494
平成21年度 2,458
平成8年度には札幌市民一人当りの所得は、292万円であったが、平成21年度には245万円の所得になってしまった。
245
─────= 0.839
292
約16%の所得減である。
毎年所得が減少している。
毎年所得減が続けば、来年も現在の所得より減少するであろうと云うことは、容易に推測できる。
来年も再来年もその次も所得減が続くとなれば、老後の心配が頭をよぎり、消費に金の多くを向かわせないであろう。
財布を引き締める。
消費支出は減少する。
それが積もり重なって、札幌GDPは減少するという現象が生じている。
人口は増えていても、市民一人当りの所得がドンドン下がっていては消費に多額の金は行かない。
結果、札幌の景気は悪いという現実が生じていることになる。
市民一人当りの所得をアップすることが、札幌の景気を良くする基本である。
ではどうしたら札幌市民一人当りの所得アップを図ることが出来るか。
それは、私の考えることではない。
行政の人々、企業経営者、学者等が考えることであろう。
その為に給与を得、その地位に有り、社会的栄誉、権力を得ているのである。
****追記 2016年8月19日
上記札幌市内総生産等の数値は、記事アップ時点の発表の数値ですが、その後札幌市は、産業連関表数値の変更に伴い市内総生産の数値を修正変更しています。修正変更後の数値は、札幌市のホームページで確認して下さい。
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