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484)不動産業新規貸出額前年同期比4000億円の減(2008年第3四半期)

 日本銀行が、国内銀行業種別貸出額(2008年7月〜9月)のデータを、2008年11月19日発表した。
 待っていたデータの発表である。

 不動産業の2008年7月〜9月の新規貸出額は20,304億円と発表された。
 前年同期に比べると、4089億円の減である。

 前々同期は172億円の増額であったから、貸出額の減が甚だ大きい。
 1件当り10億円とすると、約400件の物件の流通がストップしたことになる。
 中堅不動産業者、開発業者が資金繰りに困窮するのは当然であろう。

 第2四半期の2008年4〜6月は、前年同期比4244億円の減である。2期続いての4000億円を越える国内銀行の新規貸出高減である。

 現在も不動産を取り巻く環境は一段と厳しくなっており、2008年7月〜9月期と同様に不動産業・不動産ファンド・不動産開発業者への貸出減が続けられていると思われる。

 その影響がどれほどのものか。
 お金が無くては不動産は買えない。不動産を全額自己資金で購入出来る会社など、まずいない。銀行から借り入れて不動産を購入する。

 その銀行がお金を貸してくれなくなり、逆に融資の返済を迫ってくれば、今迄に購入した不動産を処分して返済しなければならなくなる。所有不動産が売れれば良いが、市況環境が悪く誰も買ってくれない。

 短期の借り入れで一時をしのいでも、いつまでも短期融資を銀行はしてくれるものではない。資金繰りに行き詰まる。

 上場の不動産会社、不動産開発会社がバタバタ倒れるのは、この銀行の急激な金融引き締めの数字を見れば納得が行くであろう。

 総貸出額に占める不動産業への貸出割合は、

   2007年7〜9月   0.241
   2008年7〜9月   0.215
と少し落ちてきたが、依然高い水準にある。

 私はこの割合が15%以上の状態は、不動産の過剰流動性の金額と考えており、今後まだまだ不動産業への金融引き締めは強まり、それに伴い不動産業者、開発業者等の倒産、そして土地価格の下落が続くと考えている。

 一方、それによって銀行の不動産関係の不良債権の発生増大は避けられない。
 貸して、倒産させて、不良債権の発生、次に待っているのは銀行の合併・統廃合。この道は全くいつか来た道では無いのか。

 誰だ。
 賃料で価格が求められ、保証されているから、今回は価格バブルは発生しません。平成バブルの二の舞は生じませんと言っていた人は。

 そのお先棒を担ぎ、低い還元利回りで、積算価格の2倍、3倍の不動産鑑定評価額を出して、適正であると主張していた人は。


 不動産貸出額と地価の関係について述べた記事は、下記の鑑定コラムにも有ります。

 鑑定コラム461)「3ヶ月で1.2兆円の不動産業への貸出減」
 鑑定コラム407)「2007年不動産業への国内銀行新規貸出額10兆円」
 鑑定コラム316)「不動産ファンドへの貸出規制」
 鑑定コラム352)「地価摩擦係数」
 鑑定コラム388)「日本は不動産業国家ではない」
 鑑定コラム462)「経済自律則か、「10兆円」という金額」

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