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平成24年の11月の下旬の京都である。
乗り合わせた京都のタクシー運転手は、
「景気は良くない。」
と云う。
京都の景気がどれ程良くないかデータで分析してみた。
小売業の代表である百貨店の売上高を見てみる。
日本百貨店協会発表の京都の百貨店の売上高は、次の通りである。
2007年 301,546,528千円
2008年 285,935,468千円(▲5.2%)
2009年 259,777,145千円(▲9.1%)
2010年 249,367,161千円(▲4.0%)
2011年 242,330,827千円(▲2.8%)
2007年(平成19年)から2011年(平成23年)まで、毎年売上高は減少している。
2007年比で見ると、2011年の売上高は▲19.6%である。
約20%の売上高減である。
この売上高減は、利益が吹っ飛ぶ売上高減割合である。
経営は相当厳しいと推測される。
直近の1年間の売上高はどうであろうか。
同じ日本百貨店協会発表の数値を下記に記す。
売上高千円
2011年11月 20,966,593
2011年12月 28,609,001
2012年01月 21,891,536
2012年02月 16,735,977
2012年03月 20,542,205
2012年04月 19,420,759
2012年05月 18,539,503
2012年06月 18,366,420
2012年07月 22,903,643
2012年08月 17,084,713
2012年09月 17,306,801
2012年10月 19,719,349
合計 242,086,500
2011年11月〜2012年10月までの京都の百貨店の売上高は、2420億円である。
2011年の売上高に比して、直近1年の売上高は、
242,086,500
─────── = 0.999
242,330,827
0.1%のダウンである。
京都の景気は、小売業の百貨店の売上高より見て、良くない。
製造業の生産活動状況を見てみる。
京都府が発表している「京都府鉱工業生産指数」は、2005年(平成17年)を100とすると、
2012年9月 91.6(季節調整済)
である。
過去の推移を見ると、下記である。
平成17年(2005年) 100.0
平成18年(2006年) 106.7
平成19年(2007年) 106.9
平成20年(2008年) 106.2
平成21年(2009年) 83.7
平成22年(2010年) 98.3
平成23年(2011年) 92.3(注)
(注)平成23年は、同年1月〜12月の指数を合計し、田原が12で除して求めた数値である。
京都の鉱工業生産は減少しおり、その減少率も無視出来ない数値であり芳しく無い。
京都は、西陣織物に代表されるごとく繊維業の街でもある。
繊維業の景気動向として、室町15社の繊維卸売高を調べて見る。
日本銀行京都支店の発表で見る。
但し各年の数値は、発表されている各年の1月〜12月の売上高の数値を合計して求めたものであり、それは田原の計算による。
2002年 75,676百万円
2003年 70,234百万円
2004年 67,872百万円
2005年 64,596百万円
2006年 56,834百万円
2007年 49,332百万円
2008年 43,561百万円
2009年 34,799百万円
2010年 32,617百万円
2011年 30,787百万円
著しい売上高減である。
直近1年の売上高は、下記の通りである。
2011年10月 2,559百万円
2011年11月 2,558
2011年12月 2,770
2012年01月 1,989
2012年02月 2,471
2012年03月 2,724
2012年04月 2,801
2012年05月 2,522
2012年06月 2,800
2012年07月 2,076
2012年08月 2,197
2012年09月 2,247
計 29,714
直近1年(2011年10月〜2012年9月)の売上高は、297億円である。平成23年の売上高は、307億円である。
直近1年は、平成23年より、ますます売上高が減じている。
このままの状態で進めば、ジリ貧に陥る。
京都府、京都市及び業界はどうするのであろうか。
京都の繊維業を潰す気なのか。
他人ごとながら心配になる。
観光都市京都に訪れる観光客の落とす金はどうであろうか。
利益は人が運んで来てくれるものであり、人が来てくれなければ利益も生じない。
ホテルの客室稼働率は高くて、ホテルだけが潤っているごとく見えても、それでは京都の経済は良くならない。
観光客が来てくれて、気前よくお金を落としていってくれなければ、観光都市京都の本当の景気は良くならない。
京都市が発表している京都に訪れる観光客数と、観光客が落とす金、即ち観光消費額は、下記である。
観光客数 観光消費額
平成19年 49,445千人 649,136百万円
平成20年 50,210千人 656,154百万円
平成21年 46,896千人 608,808百万円
平成22年 49,555千人 649,154百万円
京都の観光客数は年間4900万人程度、観光客の落とす金は6500億円程度である。
一人当り観光客が落とす金額は、
649,154,000,000円
──────────= 13,100円
49,555,000人
である。
平成23年の統計データを京都市は発表していない。
平成22年と同じごとくデータを発表すれば良いのだが、国の観光庁のデータ集計方式があり、その方式に従うと過去のデータとの齟齬が生じ、観光庁との間で調整中とのことである。
観光都市京都の観光に関する基本データが、発表出来ないとは何とも情けないことである。
平成23年に、観光客がどれ程京都に訪れたかと云う数値が分からなくては、行政の種々に影響が出て来るのではなかろうか。
宿泊者のみは発表している。
平成23年の宿泊者は、1087万人である。
そのうち外国人は、51.6万人である。
外国人の内訳の上位は、下記である。
台湾 9.75万人(18.9%)
アメリカ 7.37万人(14.3%)
中国 6.91万人(13.4%)
オーストラリア 3.73万人( 7.2%)
韓国 3.44万人( 6.7%)
タクシーの運転手が、
「今年、中国人観光客がパタッと停まった。
尖閣諸島問題で。」
と云っていた。
京都を訪れる外国人の中で、中国人の占める割合は13.4%もある。
これが無くなることは、京都の観光業界にとって大打撃である。
その外に注目すべきことは、中国人が土産物に落とす金は、アメリカ人、欧州人の3倍を超える。
これは大きい。
京都市の『京都観光総合調査』平成23年によれば、中国人、アメリカ人、欧州人一人当りの観光消費額は、下記である。
中国人 アメリカ人 欧州人
宿泊代 31,270円 41,426 40,232
土産代 46,119円 14,416 14,400
その他 22,982円 28,175 24,923
総計 100,371円 84,017 79,555
アメリカ人、欧州人はホテル代に金をかける、即ち高級ホテルに泊まるが、土産物はあまり買わない。
これに比し、中国人はホテル代はアメリカ人・欧州人の75%程度の金額にとどまるが、土産物の金額に関しては、アメリカ人・欧州人の3倍以上の金額を京都に落として行くという傾向がでている。
中国人観光客のこの現実の消費行動を知れば、尖閣諸島の問題の京都に与えた影響は、甚だ大きいと私は思う。
最後に景気動向の大局を見る指標として優れている日本銀行の企業短期経済調査の業況判断指数、いわゆる短観DI値があるが、京都のそれを見る。下記である。
2011年09月 −12
2011年12月 −10
2012年03月 −12
2012年06月 −13
2012年09月 −13
直近1年の京都の業況判断指数のDI値は、マイナス10〜13である。
DI値がマイナスということは、売上が減少している、収入が減っている、景気が悪い等と感じている人の方が、そうでない人よりも多いということである。
DI値から見た景気は良くない。
以上の諸データ分析より検討すると、京都の景気は良いとは云えない。京都の景気は悪い。
鑑定コラム982)「平成21年、22年、23年の3ヶ年の京都ホテル客室稼働率の平均は78.0%」
鑑定コラム981)「「ホテルが良く取れましたね」と言う京都のタクシー運転手」
鑑定コラム448)「あんたはん もっと京都について勉強しなはれ」
鑑定コラム449)「京都嵐山の住宅地の還元利回りは4.4%」
鑑定コラム979)「オムロン社名の由来は京都の御室」
鑑定コラム984)「京都府のショッピングセンターの店舗家賃」
鑑定コラム986)「京都の住宅家賃 区部は横ばい、府下は上昇(24年10月)」
鑑定コラム988)「札幌の景気は良くない」
鑑定コラム989)「札幌の来訪宿泊者は692万人(平成24年6月直近1年間 5.3%上昇)」
鑑定コラム990)「DI値グラフは北海道の不景気をよく示す」
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