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983)京都の景気は良いのか、悪いのか

 平成24年の11月の下旬の京都である。

 乗り合わせた京都のタクシー運転手は、

 「景気は良くない。」

と云う。

 京都の景気がどれ程良くないかデータで分析してみた。

 小売業の代表である百貨店の売上高を見てみる。
 日本百貨店協会発表の京都の百貨店の売上高は、次の通りである。

     2007年   301,546,528千円
         2008年   285,935,468千円(▲5.2%)
         2009年   259,777,145千円(▲9.1%)
         2010年   249,367,161千円(▲4.0%)
         2011年   242,330,827千円(▲2.8%)

 2007年(平成19年)から2011年(平成23年)まで、毎年売上高は減少している。

 2007年比で見ると、2011年の売上高は▲19.6%である。
 約20%の売上高減である。

 この売上高減は、利益が吹っ飛ぶ売上高減割合である。
 経営は相当厳しいと推測される。

 直近の1年間の売上高はどうであろうか。

 同じ日本百貨店協会発表の数値を下記に記す。

	                    売上高千円
      2011年11月      20,966,593
      2011年12月      28,609,001
      2012年01月      21,891,536
            2012年02月      16,735,977
            2012年03月      20,542,205
            2012年04月      19,420,759

2012年05月 18,539,503 2012年06月 18,366,420 2012年07月 22,903,643 2012年08月 17,084,713 2012年09月 17,306,801 2012年10月 19,719,349 合計 242,086,500

 2011年11月〜2012年10月までの京都の百貨店の売上高は、2420億円である。

 2011年の売上高に比して、直近1年の売上高は、

              242,086,500
            ─────── = 0.999                               
              242,330,827

0.1%のダウンである。

 京都の景気は、小売業の百貨店の売上高より見て、良くない。

 製造業の生産活動状況を見てみる。

 京都府が発表している「京都府鉱工業生産指数」は、2005年(平成17年)を100とすると、

    2012年9月   91.6(季節調整済)

である。

 過去の推移を見ると、下記である。

    平成17年(2005年)    100.0 
    平成18年(2006年)    106.7 
    平成19年(2007年)    106.9 
    平成20年(2008年)    106.2 
    平成21年(2009年)     83.7 
    平成22年(2010年)     98.3 
    平成23年(2011年)     92.3(注)

   (注)平成23年は、同年1月〜12月の指数を合計し、田原が12で除して求めた数値である。

 京都の鉱工業生産は減少しおり、その減少率も無視出来ない数値であり芳しく無い。

 京都は、西陣織物に代表されるごとく繊維業の街でもある。
 繊維業の景気動向として、室町15社の繊維卸売高を調べて見る。

 日本銀行京都支店の発表で見る。
 但し各年の数値は、発表されている各年の1月〜12月の売上高の数値を合計して求めたものであり、それは田原の計算による。


    2002年     75,676百万円
    2003年     70,234百万円
    2004年     67,872百万円
    2005年     64,596百万円
    2006年     56,834百万円

    2007年     49,332百万円     2008年     43,561百万円     2009年     34,799百万円     2010年     32,617百万円     2011年     30,787百万円

 著しい売上高減である。

 直近1年の売上高は、下記の通りである。

    2011年10月    2,559百万円
    2011年11月    2,558
    2011年12月    2,770
        2012年01月        1,989
     2012年02月    2,471
     2012年03月    2,724

2012年04月    2,801     2012年05月    2,522      2012年06月    2,800     2012年07月    2,076     2012年08月    2,197     2012年09月    2,247 計 29,714

 直近1年(2011年10月〜2012年9月)の売上高は、297億円である。平成23年の売上高は、307億円である。
 直近1年は、平成23年より、ますます売上高が減じている。

 このままの状態で進めば、ジリ貧に陥る。
 京都府、京都市及び業界はどうするのであろうか。
 京都の繊維業を潰す気なのか。
 他人ごとながら心配になる。

 観光都市京都に訪れる観光客の落とす金はどうであろうか。

 利益は人が運んで来てくれるものであり、人が来てくれなければ利益も生じない。

 ホテルの客室稼働率は高くて、ホテルだけが潤っているごとく見えても、それでは京都の経済は良くならない。

 観光客が来てくれて、気前よくお金を落としていってくれなければ、観光都市京都の本当の景気は良くならない。

 京都市が発表している京都に訪れる観光客数と、観光客が落とす金、即ち観光消費額は、下記である。

                        観光客数             観光消費額
   平成19年     49,445千人     649,136百万円
   平成20年     50,210千人     656,154百万円
   平成21年     46,896千人     608,808百万円
   平成22年     49,555千人     649,154百万円

 京都の観光客数は年間4900万人程度、観光客の落とす金は6500億円程度である。

 一人当り観光客が落とす金額は、

       649,154,000,000円
            ──────────= 13,100円                        
        49,555,000人

である。

 平成23年の統計データを京都市は発表していない。

 平成22年と同じごとくデータを発表すれば良いのだが、国の観光庁のデータ集計方式があり、その方式に従うと過去のデータとの齟齬が生じ、観光庁との間で調整中とのことである。

 観光都市京都の観光に関する基本データが、発表出来ないとは何とも情けないことである。
 平成23年に、観光客がどれ程京都に訪れたかと云う数値が分からなくては、行政の種々に影響が出て来るのではなかろうか。

 宿泊者のみは発表している。

 平成23年の宿泊者は、1087万人である。
 そのうち外国人は、51.6万人である。

 外国人の内訳の上位は、下記である。

     台湾       9.75万人(18.9%)
     アメリカ     7.37万人(14.3%)
          中国       6.91万人(13.4%)
          オーストラリア    3.73万人( 7.2%)
          韓国       3.44万人( 6.7%)

 タクシーの運転手が、

 「今年、中国人観光客がパタッと停まった。
 尖閣諸島問題で。」

と云っていた。

 京都を訪れる外国人の中で、中国人の占める割合は13.4%もある。
 これが無くなることは、京都の観光業界にとって大打撃である。

 その外に注目すべきことは、中国人が土産物に落とす金は、アメリカ人、欧州人の3倍を超える。
 これは大きい。

 京都市の『京都観光総合調査』平成23年によれば、中国人、アメリカ人、欧州人一人当りの観光消費額は、下記である。

                      中国人          アメリカ人        欧州人
    宿泊代        31,270円        41,426            40,232
    土産代        46,119円        14,416            14,400
    その他        22,982円       28,175            24,923
        総計         100,371円        84,017            79,555

 アメリカ人、欧州人はホテル代に金をかける、即ち高級ホテルに泊まるが、土産物はあまり買わない。
 これに比し、中国人はホテル代はアメリカ人・欧州人の75%程度の金額にとどまるが、土産物の金額に関しては、アメリカ人・欧州人の3倍以上の金額を京都に落として行くという傾向がでている。

 中国人観光客のこの現実の消費行動を知れば、尖閣諸島の問題の京都に与えた影響は、甚だ大きいと私は思う。

 最後に景気動向の大局を見る指標として優れている日本銀行の企業短期経済調査の業況判断指数、いわゆる短観DI値があるが、京都のそれを見る。下記である。

        2011年09月     −12
        2011年12月          −10
        2012年03月          −12
        2012年06月          −13
        2012年09月          −13

 直近1年の京都の業況判断指数のDI値は、マイナス10〜13である。

 DI値がマイナスということは、売上が減少している、収入が減っている、景気が悪い等と感じている人の方が、そうでない人よりも多いということである。
 DI値から見た景気は良くない。

 以上の諸データ分析より検討すると、京都の景気は良いとは云えない。京都の景気は悪い。
 

  鑑定コラム982)
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