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元日本不動産鑑定協会(現日本不動産鑑定士協会連合会)の副会長であり株式会社都市開発研究所( 東京新宿区)の代表である不動産鑑定士平澤春樹氏が、氏のメールマガジン【APPRAISAL OPINION】(2023年7月31日発)で、『8月3日東京高裁の判決に注目しよう!! 晴海オリンピック選手村跡地開発事業』の意見を発表されている。
以下に平澤春樹氏のメールマガジンを氏の承諾を得て転載する。
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不動産鑑定士 平澤 春樹 APPRAISAL OPINION
『8月3日東京高裁の判決に注目しよう!! 晴海オリンピック選手村跡地開発事業』
地方自治法に基づけは、公共団体の財産処分(売却)をするためには、地方議会の承認を要することになっています。
オリンピック選手村跡地開発(晴海フラッグ)では、「都市再開発法の非都市計画事業である個人施行」の開発方式を使って、オリンピック終了後にタワーマンションを現在建設中です。
この東京オリンピック跡地開発をめぐって、東京高等裁判所の判決が8月3日の午後1時20分から101号法廷で開かれます。
この裁判で注目されるのは、まず第一に、都市再開発法第108条2項の適用をめぐる問題です。
第一審の東京地方裁判所では、この点について間違った法解釈をしています。
108条の第2項では「施行者が地方公共団体であるときは、施行者が第一種市街地再開発事業により取得した施設建築敷地若しくはその共有持分、施設建築物の所有を目的とする地上権又は施設建築物の一部等の管理処分に関する法令の規定は適用しない。」としています。
つまり、第108条の2項については個人施行事業には適用がありませんが、もし「個人施行」の場合でも、適用があるとすれば東京都の財産を東京都議会や東京都財産価格審議会の審議を経ないで勝手に処分ができることになります。こんなことが全国でまかり通ることになれば、地方公共団体の財産が、議会等の承認を受けることがなく処分(売却)が勝手にできることになり、地方自治法の定めは死文化することになります。
市街地再開発事業では、施設建築物(建物)に対する補助金が大きいので、一般的には議会承認を受けて都市計画事業を実施する場合が多いのですが、東京都という地方公共団体がわざわざ非都市計画事業「個人施行」を選択し施行したのは、東京都議会(東京都市計画審議会)の審議を経ないで事業実施したいと考えたことは明らかです。
これは非都市計画事業とすることによって、議会承認をパスし、「個人施行」とすることによって、第108条第2項の適用があるが如く、ごまかしの申請をしたからです。
国土交通省の当局も、本件について都市再開発法の第108条第2項について適用がない旨を間接的に明らかにしています。
なんでこんなことが起こるかといえば、東京都が単独所有者であり、施行者が公共団体としての東京都ではなく、個人施行者であり、また、認可権者も東京都知事であるという三者同一の変則的な市街地再開発事業だったからです。
本体は土地面積は約13haの更地であり、もともと「個人施行」の市街地再開発事業を実施しなければならないような土地ではなかったのです。
それが証拠に、オリンピックが終わってから今頃になってタワーマンションを建てているのですから「個人施行」の市街地再開発事業等実施する必要がなかったのです。
オリンピック選手村が終わってから市街地再開発を改めて実施すればよかっただけのことです。しかし、そこにはカラクリがあるのです。
施行業者への土地の売却条件は頭金が10%で、残りの90%は7年後という支払い条件です。
この土地の所有権は東京都のままですので、それまで固定資産税は支払っていません。
つまり、オリンピック選手村には必要な土地だけでなく、13haの土地を一体的に開発する手法として、非都市計画事業としての個人施行市街地再開発事業を採用しているのです。
東京都は全国最大の都市であり、都市再開発事業も大規模小規模にかかわらず、全国で一番多い都市です。従って市街地再開発事業の先進的な公共団体です。
市街地再開発事業に最も詳しい東京都は、これを悪用し、意図的に全体を安値で処分する方法を仕組んだものと受け取れます。
東京オリンピックにおける「電通」問題もありますが、東京都自らが違法性のある再開発事業を実施し、これを東京地裁が追認しているという事実があります。
東京高等裁判所は、東京都に忖度する必要はないので、公正で妥当な判決が
出されるものと期待しています。
株式会社 都市開発研究所
160-0022 東京都新宿区新宿1-12-12 オスカカテリーナ5F
TEL.03-3341-6935 FAX.03-3350-0654
不動産鑑定士 平澤 春樹
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