桐蔭横浜大学の客員教授の職は、2025年3月31日をもって定年退職になった。
大学最後の講義は、4号館の302号室の階段教室であった。
4号館は大学院の教室である。
講義は、毎週木曜日の午後の2限目、午後2時55分から4時40分迄が、私の講義する時間であった。105分(1時間45分)の講義である。
講義科目は不動産鑑定評価の講義である。不動産鑑定評価の実践理論の講義である。
4月から初めて、前期、後期各13回、合わせて26回の講義である。
2022年からの講義は、2021年9月に発行した自著の『考論 不動産鑑定評価』(プログレス)を使用して行った。それ以前は、講義毎にまとめた講義録に従って行っていた。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、対面講義が無くなり、講義はネット講義となった。
黒板を使うことが無くなったため、それまで使っていた講義録を新しく書替ざるを得なくなった。
折角講義録を書き替えた事から、それを1冊の本にする事をプログレスの野々内編集長が勧めるので、著書発行にする事にした。それが上記『考論 不動産鑑定評価』の著書である。
著書の記述内容に従って講義しているので、最後の講義は、著書の最後に記述している地代の求め方について話した。
考論27章 地代
考論28章 地代の公租公課倍率法
考論29章 土地使用貸借の価格は更地価格の20%にもなるのか
考論30章(最終章) 借地非訟
の各章の記載されている内容の講義である。
大半の時間は考論27章に費やされ、その他の章は要点のみを説明するという駆け足の講義になってしまった。
地代については、「家賃在っての地代であり、継続地代は、新規地代在っての継続地代である」という事から、新規地代の求め方を説明した。
新規地代の基礎価格は、更地価格であり、底地価格は基礎価格にはならない。
新規地代は、新規地代の賃貸事例が在れば、それに依って比較し求めることが出来るが、旧借地法を引き継ぐ普通借地権の新規地代例なぞ、まず無い。
それ故、新規地代を求めるには、賃貸事業分析法に依って求めざるを得ない。
賃貸事業分析法は、当該地に賃貸建物を想定し、その家賃の純収益から、土地に帰属する純収益、即ち、残余した土地収益が地代の純地代になり、それに土地公租公課を加算したのが、新規地代である。
このことから家賃在っての地代と云うことになる。
例を示して、賃貸事業分析法の求め方を話した。
その際、純収益は建物減価償却後の純収益である事、即ち家賃の必要諸経費には、減価償却費を含めて求めなければならないと説明した。
平成26年改正鑑定基準は、土地の新規地代を求めるのに新しく賃貸事業分析法の手法を取り入れたことは良い功績で在るが、必要諸経費に減価償却費を入れて算出しなければならない事を書き忘れた為に、キャッシュフローの求め方の償却前純収益で求める地代鑑定書が横行して、間違つている地代評価を逆に広めてしまったと学生に話した。
不動産鑑定士会連合会は、賃貸事業分析法のここの個所を、早急に対処する必要があろう。
と私が云っても、恐らくなかなか改正には動かないであろう。10数年経って、こっそり改正するのでは無かろうか。その事は、更地評価の採用取引事例の改正で体験している。
だが改正されるのが、10数年もかかるとすると、その間は、論理的に間違っている鑑定書が、適正であると堂々と大手を振って流通することになる。
その様な事を専門家集団の不動産鑑定士会連合会が放置する事は、当該裁判を混乱させ、国民に不利益と不信感を与えることになる。そのような事を容認する専門家集団は許されるものでは無かろう。
講義の最後は、『日経不動産マーケット情報 』(日経BP)2024年11月号のトピックス記事『成田「5000億円」鑑定 専門家も驚愕の中身』(小野悠史 本間純)をプリントとし、学生に配った、内容を少し説明し、この様な不動産鑑定評価は絶対行わないように、かつ、不適正な鑑定と判断する見識を身につける様にと学生に話した。
記事中に、桐蔭横浜大学客員教授田原拓治の名前で、コメントが載っている事を学生が目で知り、大変興味を持って講義を聞いてくれた。
これが、私の桐蔭横浜大学法学部での最後の講義であった。
2025年3月31日をもって、私は19年間勤めた桐蔭横浜大学法学部の客員教授の職を定年退任した。
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