○鑑定コラム



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3)ホテルの売買事例

 倒産したある会社の子会社が経営する京都のホテルが、アメリカの投資家に売却されると日本経済新聞(2001.3.8)は報じる。

 売却価格は20億円前後であり、そのホテルの前期(2000年3月期)の売上高は約40億円とも報じる。

 ホテルの売買価格は、売上高と同じというのが経験則である。
 この経験則に照らせば、そのホテルの価格は40億円ということになる。
 この経験則は固定資産回転率が1.0ということを意味する。

 ホテルの固定資産回転率は

     ホテル平均        1.0
     40室以上の観光都市ホテル 1.3
     欠損を含めた総平均    1.9
である。
 そのホテルは欠損会社である。
 強気の価格交渉は出来ないハンディを持っている。
 固定資産回転率を欠損を含めた総平均の1.9を採用すると、
       40億円÷1.9 = 21億円
で、ホテル価格21億円ということになる。

 アメリカ投資家の購入価格は経済合理性に基づく適正な価格ということになる。
 判例のごとくホテルの売買事例として記憶していてよい案件である。

 もう一つのホテルの売買例を。
 大手スーパーストアのマイカルは倒産した。
 その系列のホテル「リゾナール小淵沢」が売買された。その金額は25.1億円であるという。(日経2001.12.7)

 そのホテルの年間売上高は約30億円だったという。

 小淵沢も観光地帯と考えれば、
      30億円÷1.3 = 23.0億円
で、ホテルの売買価格25.1億円は、ほぼ妥当な価格となる。

 しかし、「リゾナール小淵沢」は欠損会社である。負債総額は約160億円という。

 ホテルのほか優れた音楽ホールやブライダル施設を備えた立派なリゾート施設を備えていた。

 欠損を含めた固定資産回転率の1.9を採用すると、
      30億円÷1.9 = 15.8億円
である。

 売買価格25.1億円との差、9.3億円は立派な音楽ホールやブライダル施設の金額ということか。

 外資の購入ならば、立派な音楽ホールやブライダル施設の売上高の貢献度が、その金額ほどあるものか詳しく検討し、もっとシビアな価格になったのではなかろうか。


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