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309)山形天童ホテルでの東北会連合会の講演

 講演が続く。
 大学の講義の合間に講演しているごとくである。
 もうこれで今年(2006年)の講演の予定は無く、終わりである。

 2006年10月27日、山形県天童市の天童ホテルで、社団法人日本不動産鑑定協会東北不動産鑑定士会連合会主催の年一回のセミナーが開かれた。

 長ったらしい名前の組織会であるが、東北6県・青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の各県の不動産鑑定士協会の連合会の組織である。

 年一回、親睦を兼ねて各県の不動産鑑定士協会が持ち回りで研修会を開き、研修会を終えて懇親会を開き、ホテルに泊まり互いの交流を深めようという行事である。

 今年は山形県不動産鑑定士協会が担当県となり、天童ホテルをセミナー会場、懇親会場、宿泊ホテルとして、行事が開催された。

 そのセミナーの講師に私が招かれて、講演することになったということの成り行きである。

 セミナー参加者は80名を越える人々であった。参加者は東北6県の不動産鑑定士に限るというものでなく、よその鑑定士協会に所属している人の参加も許されている。九州からセミナーに参加されていた人もいた。

 講演の演題は「賃料の求め方」というものであった。
 去年は秋田で開催され、その時講師は久恒新氏で、DCF法についてであったと聞いた。
 今年は、そのDCF法の元になる「賃料」についてのセミナーということか。

 講師紹介の肩書きに「桐蔭横浜大学法学部客員教授」とされることは、やはり面がゆい。

 90分で賃料の求め方全てを話すことは困難である。
 賃料を求めるときに陥りやすい点、間違った考え方・求め方をピックアップして話した。

 価格評価には無いが、賃料評価には「基礎価格」という概念がある。それは何故あるのか。

 共益費は賃料を形成するものであるから、実質賃料に入れなければならないこと。

 保証金の償却を殆どの不動産鑑定士は行っていないが、それは間違いで保証金の償却額も実質賃料を形成するということ。

 実質賃料でスライド法の変動率を乗ずると、それは運用益・償却額を2重カウントしてしまうこと。

 空室損失は必要諸経費の項目でなく、継続賃料の評価では計上することは間違いであること。

 差額配分法の差額は、同種類同士で行って求めること。即ち新規実質賃料から実際実質賃料を控除して差額を求めるか、新規支払賃料から実際支払賃料を控除して差額を求めるものである。
 実質は実質で、支払は支払でと同じ種類で計算せよと言うことである。

 それが時々、タスキ掛けで差額を求める鑑定書がある。
 つまり、新規実質賃料−実際支払賃料とか、新規支払賃料−実際実質賃料の算式で差額を求めている不動産鑑定書が結構あると言うこと。

 より分かり易くいえば、リンゴの数−ミカンの数=リンゴの数という算式で鑑定していることである。
 そうしたリンゴとミカンの例を出して説明すれば、誰だって分かるが、それが新規実質賃料・実際実質賃料、新規支払賃料・実際支払賃料という言語になると分からなくなり、現実の鑑定書としてまかり通っているのである。裁判官もそれが分からず、間違いを是認してそのまま判決として出され、強制力を持ってしまうことが生じる場合があるのである。

 利回り法は、地価が変動しているときには使用出来ない手法と自分勝手に思いこみ、或いは決めつけて行わない鑑定評価書が多いが、利回り法は地価変動が激しいときにも適用出来る手法であり、出来ないというのは手法の求め方を間違えて認識しているからであるということ。

 地代の実質期待利回りは5%などという高い利回りでない。家賃収入によって決めるものであるということ。

 企業収益から賃料を求める場合には、企業純収益が賃料になるのでは無い。
 企業純収益から、資本に属する利益、経営に属する利益を控除した残りが不動産配分利益で有り、それが賃料となること。

 店舗の売上高に対する家賃割合は、魚屋、八百屋、肉屋は一日の売上高が月額の家賃、飲食店は売上の10%が家賃等を話した。

 天童市に来たのは、今回が初めてである。案内をしていただいた不動産鑑定士に聞くと、山形市を南北に挟んで、南に上山温泉のある上山市、北に天童温泉がある天童市があるが、以前は上山市の方が人口が多かったが、現在は天童市の方が多く、天童市の方が都市計画等で道路街区が整備されて発展しているという。

 天童市については、私は将棋の駒の産地であり天童温泉の町くらいの知識しか無かった。案内の不動産鑑定士の話によれば、天童市には松下電器の山形工場があることが市の発展に大きく影響しているという。
 当初は上山市が松下電器の工場誘致をするつもりであったという。
 どういう理由か知らないが、天童市に持ってゆかれてしまったという。

 天童市にもう一つ工場があるという。東北パイオニアである。車のカーステレオを作っている会社である。

 その会社にはプロバレーボールの女子チームがあるという。名前を「パイオニア・レッドウイングス」という。

 パイオニア・レッドウイングスは、今年3月のバレーボールのプロリーグであるVリーグで優勝した強いチームだ。

 今年の6月引退声明を出したアテネ五輪の日本代表チームの主将を務めた吉原知子がいたチームでもある。

 「メグ」の愛称で親しまれている、背の高い可愛らしいアタッカーの栗原恵のいるチームでもある。
 栗原恵も日本代表の選手であるが、2006年の世界選手権の代表メンバーには、足首を故障しているために選ばれなかった。
 こうしたチームがあるということは天童市民にとって誇りであろう。

 山形はソバの美味しい県である。
 そうした所に来たのであるから、ソバを食べずに帰る訳には行かない。
 案内してくれた地元山形の友人の不動産鑑定士は、そこら辺を知ってか、天童市では舞鶴公園の入り口にある「大久保ソバ店」に案内してくれた。

 太いぼきぼきしたそば粉十割のソバを味わった。畳の上に座って食べる田舎ソバには味わいがあった。

 山形市内では「庄司屋」という名のソバ屋に入った。細い更級ソバを味わった。
 いずれのソバも絶品の味であった。

 私が東京に帰るまで、親切に天童・山形を案内してくれた不動産鑑定士は、私の古い友人である。不動産鑑定士になる前の補助者の頃、同じ鑑定事務所で隣に机を並べ、不動産業者での事例収集に四苦八苦し、「不動産鑑定士の先生はいいよナー。現地立合を終えたら、あとは宜しくといって補助者に任せて帰ってしまうのだから。現地に残された補助者は、事例探しに大変な苦労をするのに。」と事例探しの補助者の苦労の愚痴を言いながら杯を傾けた間柄である。

 その後、それぞれ東京と山形と離れて開業した。久しぶりの再会に、宿で遅くまで昔を思い出しながら話し合った。彼は山形県不動産鑑定士協会の会長を勤め上げ、現在も山形で不動産鑑定業を元気に営んでいる。氏の名前は後藤正弘という。


 今回は山形県不動産鑑定士協会の名前が出てくる鑑定コラムですが、その他の府県不動産鑑定士協会の名前が出てくる鑑定コラムに、下記のものがあります。

  兵庫県不動産鑑定士協会
  鑑定コラム393)「神戸ルミナリエ2007」

  京都府不動産鑑定士協会
  鑑定コラム448)「あんたはん もっと京都について勉強しなはれ」

  神奈川県不動産鑑定士協会
  鑑定コラム483)「横浜にて・2008年晩秋」


 山形についての鑑定コラムは、下記にもあります。
  鑑定コラム419)「映画『山桜』の撮影ロケ」
  鑑定コラム455)「藤沢周平の『蝉しぐれ』」


  鑑定コラム1058)「大阪府不動産鑑定士協会での講演」


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