○鑑定コラム



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62)ゴルフ場の減損会計

 減損会計がいよいよ現実に姿をあらわし始めた。
 2005年より導入される減損会計であるが、その減損会計を前倒しで導入した企業によって、その凄さが姿を見せてきた。
 特にゴルフ場を持つ企業は相当の覚悟が必要である。

 ゴルフ場の減損会計の2001年度導入事例を日本経済新聞社が調査し発表した。(日経2002.8.30)
 減損会計によるゴルフ場の簿価の変更額は次の通りである。

            ゴルフ場         従前簿価     変更簿価    時価割合
栃木県   星の宮カントリー    217億円      35億円       0.161
         藤が丘カントリー    207億円      31億円       0.149
千葉県   東庄ゴルフ       264億円      21億円       0.079
山形県   さくらんぼカントリー 78億円       9億円       0.115
北海道   新千歳カントリー    171億円      40億円       0.233
         ほか3ヶ所
平均                                                   0.147
                                          標準偏差 0.051
 時価割合とは、
   変更簿価÷従前簿価=時価割合
である。但し時価割合は筆者が計算したものである。
 従前簿価を形成するものは、各ゴルフ場が共通している項目とは必ずしも言えないが、ほぼゴルフ場の取得原価と同じと考えてよいと思われる。
 変更簿価は、減損会計が時価表示を行う会計であることから、現在の時価と言うことになる。
 その時価をどの様に算出したか、その算出方法に問題はあるかもしれないが、不動産鑑定評価によっているものが多いでは無かろうか。その不動産鑑定評価であっても、原価法の積算価格では無く、ゴルフ場の収益によるDCF法の収益還元法によって求められた価格ではないかと推測する。

 上記7つのゴルフ場の平均時価割合は、
      0.147≒0.15
である。即ち「簿価の15%がゴルフ場の時価である」と減損会計の実施によってわかったのである。標準偏差0.051であるから、標準偏差1倍の範囲である0.096〜0.198、簡略して0.1〜0.2の時価割合の範囲の中に、84%(平均値での出現率を50%とする)のゴルフ場の時価修正割合は入ることになる。
 100億円の簿価のゴルフ場の時価は15億円、時価範囲は10〜20億円と言うことである。

 商品の在庫処分でよく言われる言葉、「半値8掛け2割引」の例で行けば、
   「半値8掛け6割引」(0.5×0.8×0.4=0.16)
と言うことになる。
  
 100億円のゴルフ場の簿価は取得原価であり、それは建設コストである。鑑定評価では3つの価格(比準価格、積算価格、収益価格)の1つの積算価格と呼ばれるものに属する価格である。
 購入希望者ゼロ、市場性ゼロである積算価格100億円のゴルフ場を適正価格といくら主張していても、市場価格を求めるのが不動産鑑定であるから、市場性が立証されない価格を適正と主張しても、それはむなしい主張である。
 市場価格の15億円をいかに合理的に説明し、理論証明すべきか。
 それは不動産鑑定士に与えられた課題である。

 ゴルフ場の売買事例を一つ。
 取得原価70億円のあるゴルフ場が売り出された。なかなか売れず、売り価格は、
   70億円〜50億円〜30億円〜25億円〜20億円
と推移した。そして売り出しより相当の年数を経て、やっと、16億円で売買されたという。
    16億円÷70億円≒0.23
であるから、
       「半値8掛け4割引」(0.5×0.8×0.6=0.24)
  と言うことになる。

 なおゴルフ場に関する記事の鑑定コラムには次のものがあります。


  鑑定コラム  29)「川奈ゴルフ場の価格」

  鑑定コラム  91)「日本のゴルフ場数は2067ヶ所」

  鑑定コラム 129)「本間ゴルフ場の阿蘇のゴルフ場売却」

  鑑定コラム 156)「いつまで続くゴルフ場鑑定のセミナー講師」

  鑑定コラム 167)「ゴルフ場の取得価格と予想売上高」


  鑑定コラム 174)「ゴルフ場の固定資産税は高すぎる」

  鑑定コラム 198)「ゴルフ場の売却が続く大手不動産会社」


  鑑定コラム 933)「ゴルフ場クラブハウス固定資産税価格58%の需給事情修正を認める判決」

  鑑定コラム1818)「小金井カントリー倶楽部の固定資産税は高すぎるのでは無かろうか」


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