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198)ゴルフ場の売却が続く大手不動産会社

 東急不動産が北海道に持つ2つのゴルフ場を売却する。(2004年12月22日 東急不動産HPプレスリリース)
 マサリカップ東急ゴルフ場(厚田村 18ホール)と札幌東急ゴルフ場(厚田村 27ホール)である。

 2つのゴルフ場の簿価は、マサリカップ東急ゴルフ場が15億円、札幌東急ゴルフ場が28億円である。
 2つのゴルフ場の簿価は43億円である。1ホール当り0.95億円相当である。

 43億円の簿価のゴルフ場を2億円で売却するという。
 そして、特別損失として41億円を東急不動産は計上して会計処理するという。
 簿価に対する売買価格の割合は、
      2億円÷43億円=0.0465≒0.047
4.7%である。

 当該2つのゴルフ場の購入者は、山梨のアイスクリーム等を製造販売しているシャトレーゼという会社である。
 このシャトレーゼは、民事再生法申請の静岡の富士見ケ丘カントリークラブも購入している。

 2つのゴルフ場の2億円の売却価格は、いささか安すぎるのでは無いかと思われる。
 北海道のゴルフ場の売上高の平均は、経産省の調べでは平成13年で、1ゴルフ場当り27,660万円である。
 「東急」という名前の付くブランドのゴルフ場が、北海道のゴルフ場で平均以下の売り上げしかあげられないということは信じがたい。
 一歩下がって考えても、少なくとも平均の売上高はあるだろう。

 売上高に対する価格割合を1.0とすると、つまりゴルフ場の売上高相当の金額がゴルフ場の価額ということである。そうすると1ゴルフ場の価格は27,660万円となる。2つのゴルフ場では、
      27,660万円×2=55,320万円
である。

 当該2つのゴルフ場の売上高が分からないから、はっきりとは断定できないが、少なくとも5.5億円程度の価格が妥当では無かろうか。
 2億円の価格はいささか安い。

 東急不動産のゴルフ場の売却は、東急不動産自らの経営立て直しと共に東京急行電鉄グループの立て直しの一環の行為であり、かつ減損会計に対処したものであろうと推定する。

 一方、三菱地所は宮城県鳴子町で展開するオニコウベ事業と呼ばれる、リゾートパークオニコウベゴルフクラブとリゾートパークホテルオニコウベを売却した。(2004年9月24日 三菱地所HPプレスリリース)

 事業売却の方法は、会社分割の方式によるものである。
 オニコウベ事業を引き継ぐ新会社をまず設立し、その新会社にオニコウベ事業を譲渡する。
 そしてその事業の譲渡を受けた新会社を、第三者に売却するという方法である。

 資本金5千万円の新会社を設立し、そこにオニコウベ事業を譲渡した。
 総資産は51億円という。どうもこれは帳簿価格では無いかと思う。そしてこのオニコウベ事業で生じた61億円の損失は、三菱地所は特別損失として計上し会計処理するという。

 この三菱地所のオニコウベ事業を譲渡された新会社を買う企業は、那須で観光ホテル事業を経営する株式会社ホテルサンバレーである。
 ホテルサンバレーが購入する金額は明らかにされていない。
 いくらの金額で企業売買されたのか分からないが、私が勝手に推定してみる。

 61億円の債務は、三菱地所が損金処理で負担すると言っているので、ゴルフ会員権の預託金の問題は処理されていると考えられる。

 オニコウベ事業の売上高は、平成16年(2004年)3月期で610百万円、損失538百万円である。

 一方、ホテルサンバレーの概要は、プレスリリースの範囲の数値は、平成16年(2004年)3月期で、
       総資産   6,989百万円
       売上高   5,698百万円
である。
 売上高に対する総資産の割合は、
        6,989百万円÷5,698百万円=1.22
である。

 ホテルサンバレーの資産は、売上高の1.22倍ということになる。
 この会社の現実の経営実態の数値より考えれば、ホテルサンバレーが購入する金額の限界は、売上高の1.22倍であると言える。

 オニコウベ事業は売上高の9割に近い損失額を出している赤字経営である。
 この様な会社を、ホテルサンバレーにとって最高限度の割合の売上高の1.22倍で購入することを、経営者は考えないであろう。割合は2割引として、
      1.22×0.8≒0.98
売上高の0.98の金額とする。
      610百万円×0.98=5.978億円≒6億円
 設立した新会社をそのまま買うのである。資本金の5千万円は帳簿にそのまま残っていることから、購入者は、その5千万円は売主の三菱地所に支払わなければならない。
 新会社の資本金の金額を差し引く。
      6億円−0.5億円=5.5億円

 オニコウベ事業の売買価格は5.5億円と推定される。

 新会社の帳簿上の総資産は51億円であるが、それに対する売買価額の割合は、
          5.5億円÷51億円=0.108
10.8%ということになる。

 東急不動産の2つのゴルフ場の場合は、4.7%であった。それと比べると10.8%はかなり高い割合に見える。
 しかし、逆の見方から考えれば、先に述べたごとく、東急不動産の2つのゴルフ場の売却価格が安すぎると言えることになるかもしれない。

 売上高に対する売買価格割合は、
      5.5億円÷6.1億円=0.90
となる。

 以上は、私の勝手な推定である。価額があっているかどうかは分からない。
 実際の売買価格がいくらかは、当事者同士しか分からない。
 まさか新会社設立のために投下した資本金5千万円のみで売買されたということは無いであろう。

 これからもゴルフ場、ホテルの売却が、減損会計の強制実施開始時期を目前にして、多くあるのでは無いかと思われる。

 そして、企業売買のやり方は、上記の三菱地所が行った新会社を設立する会社分割の手法がとられるのではなかろうか。

 問題は、新会社に事業譲渡するときの不動産の価格である。水ぶくれした簿価で行われるのがほとんどであろうが、その新会社を購入した企業は、水ぶくれした資産を引き継いだ途端に、減損会計の対象になってしまうこともあり得る。公認会計士がそれをどう処理するか分からないが。

 なおゴルフ場に関する過去の鑑定コラムの記事は次の通りである。書いた私から言えばいずれの記事も読めばプラスになる内容と思っているが、随意に読んで頂ければ幸いである。

 鑑定コラム  29) 「川奈ゴルフ場の価格」
 鑑定コラム  62) 「ゴルフ場の減損会計」
 鑑定コラム  91) 「日本のゴルフ場数は2067ヶ所」
 鑑定コラム 129) 「本間ゴルフ場の阿蘇のゴルフ場売却」
 鑑定コラム 156) 「いつまで続くゴルフ場鑑定のセミナー講師」
 鑑定コラム 167) 「ゴルフ場の取得価格と予想売上高」
 鑑定コラム 174) 「ゴルフ場の固定資産税は高すぎる」


 鑑定コラム 824)「今年2件目のゴルフ場の鑑定評価」

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