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2482) 少し考え直すべきでは無いか 江戸川区住宅地地価公示価格

1.はじめに

 平成30年より地価公示価格の鑑定書が公開される様になった。公開された地価公示価格の鑑定書より比準価格と収益価格の関係を分析する。

 採用する地価公示価格は、令和4年の江戸川区の住宅地の地価公示価格とする。公示価格鑑定書は同一公示地点を二人の不動産鑑定士が評価していることから、AとB2つの鑑定書があるが、先にあるA鑑定書の比準価格と収益価格とする。

 求められている比準価格、収益価格は、不動産鑑定評価の専門家である不動産鑑定士が求めたものであるから、適正な価格であるものとする。

 千代田区商業地の地価公示の比準価格と収益価格との関係を、鑑定コラム2459)で行っている。

 その分析と同じであるため、求め方等の説明は、出来るだけ重複を避けるが、始めて本コラムを読む人もいることもあり、必要な個所は最小限の記述とする。詳細を知りたい時は、鑑定コラム2459)の当該部分を読んでいただきたい。

2.3つの価格の等価性

 不動産鑑定評価は、不動産が具有するそれぞれの面からの分析価格として、コストの面より積算価格、市場性の面より比準価格、収益性の面より収益価格の価格がある。

 そして、3つの価格は理論上は一致すると云われている。

@ 門脇惇説

 3つの価格の等価性については、門脇惇氏は、著書『不動産鑑定評価要説』P120(税務経理協会、昭和46年)で次のごとく述べられている。

  「3試算価格は、それぞれ、効用に見合う面、造る費用を償う面、一般に認められてその価格で取引される面、すなわち価格の三面性に照応するものであり、市場で揉まれ、淘汰されて、一つの正常価格に帰一するものであると解すべきこと。」

A 武田公夫説

 また武田公夫氏は、著書『不動産評価の知識』P133(日本経済新聞社、1993年)で、次のごとく述べられている。

  「各方式の適用によって求められた試算価格または試算賃料は、理論的には一致するはず」

と3価格の理論的一致を認める。

 実際には一致しないが、それは「資料不足など」によるのが原因でありと述べられる。

 既成市街地では、原価法の適用は困難であるため行われない。その為、積算価格は求めなく、比準価格、収益価格が求められる。

 門脇、武田両氏の説に従えば、比準価格、収益価格は、理論上は一致することになる。

3.不動産鑑定士実務修習テキストの比準価格と収益価格

 最新の2022年版第16回実務修習の「実務修習・指導要領テキスト」(編集公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会 2021年11月1日発行)に、土地面積605.75uの更地を例にした更地の鑑定評価書が掲載されている。

 P49に、例題による試算価格が記されている。

     比準価格   495,000円/u
          収益価格   457,000円/u
である。

 収益価格の金額を1.0とすると、比準価格の割合は、
                 495,000円
             ────────= 1.083                               
                 457,000円
1.083である。

 比準価格と収益価格の開差は約8%で、比準価格が収益価格よりも高い。

4.公示価格鑑定書に見る比準価格と収益価格の関係

 令和4年地価公示価格の江戸川区の住宅地の鑑定書の中に記されている比準価格と収益価格を抜き出し、比準価格/収益価格の割合を求める。

 例えば江戸川−1のA鑑定書の比準価格、収益価格は、下記である。
      比準価格       382,000円
      収益価格      239,000円
   江戸川−1の比準価格/収益価格の割合を求めると、
              382,000円
            ────────  = 1.598                             
              239,000円
1.598である。

 同様にして、江戸川区住宅地公示地67件を分析したのが、下記一覧表である。


番号 所在 比準価格 円/u 収益価格 円/u 比準価格/収益価格
江戸川−1 東京都江戸川区西小岩1丁目1775番8 382000 239000 1.598
江戸川−2 東京都江戸川区瑞江1丁目153番3  403000 208000 1.938
江戸川−4 東京都江戸川区南篠崎町3丁目215番4 456000 258000 1.767
江戸川−5 東京都江戸川区東小岩6丁目2676番10  392000 289000 1.356
江戸川−6 東京都江戸川区船堀2丁目507番1 460000 254000 1.811
江戸川−7 東京都江戸川区中葛西1丁目35番16  424000 253000 1.676
江戸川−8 東京都江戸川区平井6丁目20番5 414000 250000 1.656
江戸川−9 東京都江戸川区西葛西8丁目9番52  455000 255000 1.784
江戸川−10 東京都江戸川区北葛西2丁目681番6 378000 174000 2.172
江戸川−11 東京都江戸川区北篠崎2丁目227番3 284000 149000 1.906
江戸川−12 東京都江戸川区松江7丁目271番3 350000 205000 1.707
江戸川−13 東京都江戸川区北小岩8丁目519番2 324000 173000 1.873
江戸川−14 東京都江戸川区春江町3丁目10番187  330000 152000 2.171
江戸川−15 東京都江戸川区鹿骨2丁目140番3 283000 192000 1.474
江戸川−16 東京都江戸川区一之江2丁目54番18外 313000 207000 1.512
江戸川−17 東京都江戸川区南葛西5丁目8番46  382000 228000 1.675
江戸川−18 東京都江戸川区西瑞江5丁目14番46  322000 198000 1.626
江戸川−19 東京都江戸川区松島4丁目1112番2 420000 282000 1.489
江戸川−20 東京都江戸川区西小岩4丁目899番2 399000 244000 1.635
江戸川−21 東京都江戸川区南葛西6丁目31番13  398000 291000 1.368
江戸川−22 東京都江戸川区興宮町222番3 292000 143000 2.042
江戸川−23 東京都江戸川区南小岩4丁目1104番2 341000 191000 1.785
江戸川−24 東京都江戸川区本一色3丁目517番3外 318000 209000 1.522
江戸川−25 東京都江戸川区船堀7丁目1437番2 400000 235000 1.702
江戸川−26 東京都江戸川区東葛西4丁目33番4 399000 255000 1.565
江戸川−27 東京都江戸川区東葛西3丁目61番外 341000 222000 1.536
江戸川−28 東京都江戸川区中葛西8丁目4017番5外 390000 258000 1.512
江戸川−29 東京都江戸川区西葛西1丁目2371番8 380000 218000 1.743
江戸川−30 東京都江戸川区中葛西3丁目23番21  542000 418000 1.297
江戸川−31 東京都江戸川区西一之江2丁目1329番4 288000 169000 1.704
江戸川−32 東京都江戸川区平井2丁目941番4 418000 282000 1.482
江戸川−33 東京都江戸川区南篠崎町1丁目363番13  358000 236000 1.517
江戸川−34 東京都江戸川区平井6丁目69番6 374000 254000 1.472
江戸川−35 東京都江戸川区篠崎町1丁目352番1 370000 220000 1.682
江戸川−36 東京都江戸川区春江町2丁目124番26  332000 169000 1.964
江戸川−37 東京都江戸川区東小松川2丁目4327番4 301000 151000 1.993
江戸川−38 東京都江戸川区東小岩1丁目506番38  302000 163000 1.853
江戸川−39 東京都江戸川区東葛西6丁目23番3 493000 370000 1.332
江戸川−40 東京都江戸川区中葛西5丁目6番24  528000 284000 1.859
江戸川−41 東京都江戸川区篠崎町5丁目88番57  339000 204000 1.662
江戸川−43 東京都江戸川区東瑞江2丁目45番2 321000 174000 1.845
江戸川−44 東京都江戸川区一之江7丁目7番48  395000 215000 1.837
江戸川−45 東京都江戸川区江戸川6丁目7番31  324000 173000 1.873
江戸川−46 東京都江戸川区松江3丁目4223番 398000 328000 1.213
江戸川−47 東京都江戸川区松島2丁目555番1 352000 229000 1.537
江戸川−49 東京都江戸川区東松本2丁目807番2 275000 168000 1.637
江戸川−50 東京都江戸川区東小松川4丁目6046番8 350000 207000 1.691
江戸川−51 東京都江戸川区松江1丁目2525番1外 299000 184000 1.625
江戸川−52 東京都江戸川区西葛西7丁目23番14  490000 286000 1.713
江戸川−53 東京都江戸川区南小岩5丁目1640番14  390000 218000 1.789
江戸川−54 東京都江戸川区南小岩5丁目1640番14  278000 177000 1.571
江戸川−55 東京都江戸川区江戸川3丁目52番17  305000 165000 1.848
江戸川−56 東京都江戸川区東葛西5丁目1602番1 502000 319000 1.574
江戸川−57 東京都江戸川区西一之江3丁目932番24 336000 204000 1.647
江戸川−58 東京都江戸川区東葛西8丁目34番5 400000 227000 1.762
江戸川−59 東京都江戸川区江戸川2丁目2番17外 351000 199000 1.764
江戸川−60 東京都江戸川区大杉4丁目33番2 270000 145000 1.862
江戸川−61 東京都江戸川区東小岩5丁目2747番3 395000 249000 1.586
江戸川−62 東京都江戸川区東小岩4丁目3432番2 321000 187000 1.717
江戸川−63 東京都江戸川区中葛西7丁目23番15 461000 240000 1.921
江戸川−64 東京都江戸川区上篠崎1丁目148番 305000 162000 1.883
江戸川−65 東京都江戸川区本一色1丁目5番21外 320000 197000 1.624
江戸川−66 東京都江戸川区下篠崎町317番19 270000 167000 1.617
江戸川−67 東京都江戸川区南葛西3丁目10番3 398000 247000 1.611
江戸川−69 東京都江戸川区平井7丁目1889番7 352000 232000 1.517
江戸川−70 東京都江戸川区船堀5丁目1327番 385000 218000 1.766
江戸川−71 東京都江戸川区篠崎町2丁目439番11 390000 213000 1.831
平均       1.691
標準偏差       0.193
変動係数       0.114


 江戸川区の住宅地67件の比準価格/収益価格の平均値等の分析結果は、下記である。
                平均値    1.691
                標準偏差     0.193
                変動係数     0.114

5.自然現象、人間の行為がからむ社会現象、経済現象等と正規分布

 自然現象、人間の行為がからむ社会現象、経済現象等の多くの現象は、分析すると、何故か正規分布に従うと統計学者は云う。

 データをとって分析すると事実その分布に多くがなる。何故そうなるのかは、はっきりと分かっていない。

 比準価格、収益価格も人間の行為に拠って求められた数値である。その数値より求められた倍率も人間の行為による現象の一つである事から、正規分布に従っていると判断する。

 正規分布のグラフは、平均値を中心にして、左右対称の釣り鐘の形をしたグラフである。グラフは千代田区商業地の比準価格と収益価格を分析した鑑定コラム2459)に記してあることから省略する。そちらで見て欲しい。

6.Z値1.0の出現率は68.26%

@ Z値

 正規分布のグラフは釣り鐘型の左右対称である。中心より右側のグラフで説明する。

 釣り鐘型のグラフ右側半分の面積に対して、グラフ右端の裾野の黒塗りの面積の占める割合(分布率)が、Z値と呼ばれる面積割合であり、それが出現確率分布率となる。

 データの平均をμ、標準偏差をσ、変数をXとすると、分布率Zは、
                         X−μ
                 Z=──────                                   
                           σ
で求められる。

A Z値1.0の分布率

 Z値1.0とは、正規分布グラフ右側半分では右端の0.1587の分布面積を云う。正規分布は左右対象であるから、左半分も同じくある。

 左右両方合わせて、
                 15.87%+15.87%=31.74%
31.74%以下あるということである。

 このことを逆に考えると、上記正規分布グラフの黒塗りの端でない白い部分の割合は、
         1−0.3174=0.6826
0.6826となる。白い部分の出現率は68.26%、約68%である。

 Z値1.0の値になる比準価格/収益価格の数値を求めるには、Z値を求める算式は、
                         X−μ
                 Z=──────                                   
                           σ
であるから、
             Zσ=X−μ
であり、この算式から、
               X=μ+Zσ
である。

 即ち、平均値+標準偏差×1.0 の算式から、Z値1.0になる数値が求められる。つまり平均値に標準偏差を加えれば求められる。

7.一般的に許容されるZ値の数値は1.96である

 世論調査、アンケート調査で有意水準ありとして統計学上許容されている調査数割合は5%である。片側グラフの分布率では、右端末端部の2.5%と云うことになる。

 上記正規分布表のZ値縦欄1.9の欄を右に向かい、1.96の個所の数値を見れば、0.0250とある。2.5%以上の分布が出るのはZ値1.96の値と云うことになる。

 1.96以内であれば2.5%以下にならない、つまり5%以下にならないことから、統計学上有意水準があるとされ、世論調査結果、アンケート調査結果について信頼性が保てると云うことになる。

 Z値1.96の値になる数値を求めるには、Z値を求める算式は、
                         X−μ
                 Z=──────                                   
                           σ
であるから、
             Zσ=X−μ
であり、この算式から、
               X=μ+Zσ
である。

 即ち、平均値+標準偏差×1.96 の算式から、Z値1.96になる数値が求められる。

8.江戸川区の住宅地の地価公示価格の適正な比準価格/収益価格の割合数値

@ 令和4年の東京都江戸川区の住宅地の地価公示の比準価格/収益価格の分析結果

 令和4年の東京都江戸川区の住宅地の地価公示の比準価格/収益価格の分析結果は、前述としたごとく、
                平均値   1.691
                標準偏差  0.193
  である。

A  出現率5%の比準価格/収益価格の価格割合

 比準価格/収益価格の割合の出現率5%を求める算式は、前記より、
             平均値+標準偏差×1.96
である。

 本件の場合、平均値は1.691、標準偏差は0.193であるから、出現率5%になる比準価格/収益価格の割合数値は、
      1.691+0.193×1.96=2.069
である。

 有意水準出現率5%以上の比準価格/収益価格の割合数値は、2.069以下の割合で無ければならないことになる。

 収益価格と比準価格とは理論的には一致すると云われる。一致すると云うことは、
       比準価格
           ──────  =1.0                                      
              収益価格
になることである。

 それゆえ、東京都江戸川区の住宅地の地価公示価格の信頼出来る比準価格/収益価格の割合数値は、
      1.0〜2.069
となる。

 (注)更地の価格で、比準価格を越える収益価格があってもよいと私は思うが、江戸川区の住宅地地価公示鑑定書においては、比準価格を越える収益価格の例は1件も無いことから、与えられたデータ分析からでは、1.0が最低の価格割合と云うことになる。

B 出現率68.26%の比準価格/収益価格の価格割合

 比準価格/収益価格の割合の出現率68.26%を求める算式は、前記より、
             平均値+標準偏差×1
である。

 本件の場合、平均値は1.691、標準偏差は0.193であるから、出現率68.26%になる比準価格/収益価格の割合数値は、
      1.691+0.193×1=1.884
である。

8.終わりに

@ 出現率5%以下のデータ

 鑑定評価で求める3つの価格は理論上一致すると云われるが、一致するのは理論上で有り、資料不足の要因も有り一致することは難しい。

 しかし、一致しないからと云って、3つの価格がかけ離れて存在しても良いと云うことにはならない。理論上一致すると云う原則からすれば、価格開差の程度には、合理的な限界があるハズである。

 その限界が、統計学の有意水準の5%であり、比準価格/収益価格の価格割合では、東京都江戸川区の住宅地では2.069以下である。

 上記江戸川区の住宅地地価公示価格67件のうち、比準価格/収益価格の価格割合が有意水準の出現率5%を切る公示地(比準価格/収益価格の価格割合では2.069を越える公示地)は、残念ながら2件ある。

 出現率5%以上あれば統計学上は有意水準があるとみなされる。そのデータは有効と判断される。それ以下の出現率のデータは否定される。

 土地価格評価の専門家で、統計学上否定される価格であるというごとくの土地価格を求めるべきでは無かろう。

A 出現率31.74%以下のデータ

 土地価格評価の専門家であるならば、有意水準5%以上の出現率で無く、出現率31.74%を切らない、逆に云えば
              100%−31.74%=68.26%
68.26%を越える出現率の土地価格を求めるべきであろう。その土地価格とは、10人中7人以上の不動産鑑定士が求める土地価格である。

 それは平均値に標準偏差を加えた数値であり、上記で比準価格/収益価格の価格割合では、1.884と分析されている。

 上記江戸川区の住宅地地価公示価格67件のうち、比準価格/収益価格の価格割合1.884〜2.069の公示価格が、残念であるが6件ある。

B 出現率5%以下、31.74%以下のデータ

 67件の江戸川区住宅地の地価公示価格にあって、
  
                出現率   5.0%以下  2件
        出現率 31.74%以下    6件
         計               8件
である。

 67件の地価公示価格の内、8件の割合は、
      8÷67≒0.119
11.9%である。

 都心5区の商業地・住宅地の令和4年地価公示価格の鑑定書の比準価格/収益価格の関係を分析し終えて、23区の住宅地として西にある世田谷区を選び、その公示住宅地の比準価格/収益価格の関係を分析した。

 世田谷区の公示住宅地の同価格割合の5%以下、31.74%以下の出現件数は、103地点で16件であった。

 103地点の公示価格で16地点の出現する割合は、
     16/103≒0.155
15.5%である。

 この割合の出現に驚き、「少し考え直すべきでないか」と地価公示価格の求め方に対して、物申した。

 23区住宅地の南にある住宅地として大田区を選び、大田区の住宅地の令和4年地価公示住宅地の鑑定書の比準価格/収益価格の関係を分析した。

 大田区の公示住宅地の同価格割合の5%以下の出現率の件数は0件、31.74%以下の出現率の件数は11件であった。5%以下及び31.74%以下の出現率の件数は合計して52地点で11件であった。

 23区の東の住宅地である住宅地として江戸川区を選び、令和4年地価公示住宅地の鑑定書の比準価格/収益価格の関係を分析した。

 江戸川区の公示住宅地の同価格割合の5%以下の出現率の件数は2件、31.74%以下の出現率の件数は6件であった。5%以下及び31.74%以下の出現率の件数は合計して67地点で8件であった。

 比準価格/収益価格の割合で、出現率5%以下及び31.74%以下の公示鑑定評価は、専門職業家として求めるには、本来存在することはおかしいのであるから、現在の地価公示価格の求め方を少し考え直すべきであろう。

C 分析結果の重要性の認識を

 比準価格/収益価格の価格割合で、同じ江戸川区内の住宅地の地価公示価格で、1.213とか1.297の割合で地価公示価格を求める人がいる一方、2.172という大きな価格割合で地価公示価格を求める人もいる。

 不動産価格評価の専門家の集団で、上記のごとくの大きな割合数値が出現することはおかしいと思わないか。恥ずべき現象であると思わないか。

 江戸川区の公示住宅地価格鑑定書の比準価格/収益価格の価格割合の出現件数を、0.1台区分で示すと、下記である。
                1.2台      2件
        1.3台    3件
        1.4台   4件
        1.5台   12件
        1.6台   14件
        1.7台   13件
        1.8台    11件
        1.9台    5件
        2.0台    1件
                2.1台      2件
                計        67件

 縦軸に件数、横軸に割合を取って、グラフにすると、下図である。




江戸川区公示住宅地比準価格/収益価格



 比準価格/収益価格の価格割合1.884を越える評価がなされるのは、価格の求め方に間違いがあるということを示している。

 比準価格で云えば、事例の選択に間違いがあるか、地域格差の比較に間違いがあると思われる。収益価格にあっては、想定賃料が低すぎるか、土地残余収益が少なすぎるか、還元利回りが高すぎることに原因していると思われる。

 比準価格と収益価格を求めるのは、求められた互いの価格の適正さを担保するためであり、かつ、決定価格である鑑定評価額の妥当性を担保するためである。

 比準価格と収益価格との間に大きな価格の開きが有っては、適正さを担保することが出来ず、何の為に2つの価格を求めているのか意味をなさなくなる。

 今迄、3つの価格は理論的には一致すると云うだけで、各価格の間の価格関係についての研究・調査が全くなされていなかった。

 3価格が一致しなくとも、開差の合理的水準はあるハズであるが、そのことが全く考えられず、検討されずに、長い間放置されて来た。

 資料としての信頼性が高いと判断される地価公示価格の鑑定書が公開されたことによって、3つの価格は理論的に一致しなくても、合理的開差の範囲は何処かの研究分析を行うことが出来るようになった。


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  鑑定コラム2481)「比準価格÷収益価格 出現率31.74%以下11件 大田区住宅地地価公示価格」


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