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マンションの建築費が値上がりしている。
マンション業者が、
「以前は坪当り50万円程度でマンション建築が出来たが、最近(2006年〜2007年11月)になって、坪当り60万円或いは65万円の建築費になってきた。
中には坪当り75万円を超える見積書が上がってくる。
建築費の値上がりに頭を痛めている。」
とぼやいているようだ。
マンションの建築費の上昇は、職人不足、マンション建築の加熱、業者の思惑等いろいろな原因によるものであろうが、その原因の一つとして、鉄筋鋼材価格の著しい値上がりがあるのでは無かろうかと私は思う。
建築で使用される鉄筋鋼材の値上がりが激しい。
19ミリ異形棒鋼鉄筋を代表にして、最近の価格の動きを見てみる。
日刊鉄鋼新聞の調査によると、次のごとくである。
1トン当り円で、東京高値価格相場の価格である。
平成19年1月 64,000円
平成19年2月 64,000円
平成19年3月 66,000円
平成19年4月 68,000円
平成19年5月 68,000円
平成19年6月 68,000円
平成19年7月 68,500円
平成19年8月 69,500円
平成19年9月 69,500円
平成19年10月 70,500円
平成19年1月から10月までの10ヶ月間での19ミリ異形棒鋼の値上がり率は、
70,500円÷64,000円≒1.101
10.1%の値上がりである。
10%程度の値上がりなど大したことないではないかと思われるかもしれないが、過去の19ミリ異形棒鋼の価格推移を見るならば、大したこと無いということなど言え無くなるであろう。
平成9年からの19ミリ異形棒鋼の価格推移を、前掲の日刊鉄鋼新聞の調査発表価格で見れば、次のごとくである。価格の条件は前記と同じである。
各年1月の価格で表示する。
平成9年1月 36,500円
平成10年1月 35,500円
平成11年1月 27,000円
平成12年1月 26,000円
平成13年1月 28,000円
平成14年1月 27,000円
平成15年1月 35,000円
平成16年1月 43,000円
平成17年1月 62,000円
平成18年1月 60,000円
平成19年1月 64,000円
平成12年1月が最低価格で、トン当り26,000円である。
現在の価格から見れば、そんなに安かったのかというごとく信じがたい低い価格である。その頃はそうした価格が市場価格を形成していたのである。
ジリジリと価格上昇し、平成15年にトン3万円台に乗せると、2年後には5万円台を飛び越えて6万円台の価格になる。
平成19年1月には64,000円の価格をつける。
平成19年10月は、ついに6万円台を超えて7万円台に突入して、70,500円の価格になってしまった。
平成12年1月の最安値の価格から見れば、
70,500円÷27,000円≒2.7
2.7倍である。
RC造のマンションの場合、コンクリート1立方メートルにつき使用する鉄筋の量は107kgである。即ち0.107トンである。
コンクリートの使用量は、延べ床面積1u当り0.65立方メートルである。
例えばRC造8階建ての延べ床面積8000uのマンションの場合、使用するコンクリートの量は、
0.63立方メートル×8,000=5,200立方メートル
である。
使用する鉄筋量は、
0.107×5,200=556.4トン≒560トン
である。
鉄筋1トン当り26,000円の場合の鋼材費は、
26,000円×560=14,560,000円
鉄筋1トン当り70,500円の場合の鋼材費は、
70,500円×560=39,480,000円
である。
鋼材費で、
39,480,000円−14,560,000円=24,920,000円
の負担増になる。
仮に、このマンションが1戸100uで64戸の分譲マンションであったとすると、
24,920,000円÷64=389,375円
≒400,000円
鋼材のみで、1戸当り40万円のコストアップになる。
これは鋼材の原価である。
加工賃、鋼材輸送費、諸経費も鋼材の原価アップに付随して増加する。
マンションは鋼材のみで作られるものでは無く、仮設、土、基礎、型枠、コンクリート、木、タイル、ガラス、金属、建具、内装、塗装、設備等工事によって作られる。
これらの工事費のアップも充分考えられることから、マンションの建築工事費のアップは避けられない状況となる。
この鋼材費が何故急激に上がったのか。
その原因については、中国のオリンピック施設建設による鋼材の大量需要等の要因が挙げられているが、それらについては鋼材取引の商社の方々が知悉されているものと思われ、ここでは論じない。
鋼材価格値上がりの原因分析は省くとして、私がもう一つ注目するのは、今回の鋼材の価格変動が、およそ20年前のバブル経済の時の鋼材の価格の動きに良く似ているということである。
その時の19ミリ異形棒鋼の価格は、前記の日刊鉄鋼新聞の調査発表価格で見れば、次のごとくである。価格の条件は前記と同じである。
各年1月の価格で表示する。
昭和62年1月 32,000円
昭和63年1月 58,000円
平成元年1月 43,500円
平成2年1月 59,000円
平成3年1月 60,000円
平成4年1月 60,000円
平成5年1月 53,000円
平成6年1月 41,000円
平成7年1月 37,000円
平成バブル経済の時、19ミリ異形棒鋼の価格は、昭和62年の1トン当り32,000円が、平成3年・4年(建設業の平成バブル経済は平成2年では無く、それより1〜2年後である)では、最高60,000円になる。
バブル経済崩壊3年後には、37,000円に暴落してしまった。
果たして今回も再び同じ道をたどるかどうか。
平成19年11月29日の日経の商品市況は、19ミリ異形棒鋼の東京市場高値相場価格は、1トン70,000円と日本経済新聞は報じる。
そして棒鋼の原料となる鉄スクラップの東京市場の価格は、高値相場価格で1トン36,000円と同じく日本経済新聞は報じる。
製品価格とスクラップ価格の割合関係は、スクラップ価格は製品価格の、
36,000円÷70,000円=0.51
である。
スクラップ価格は、製品価格の半値の水準と言うことか。
鋼材の値上がりについて書いてある鑑定コラムは、下記にもあります。
鑑定コラム409)「トン8万円台になった19ミリ異形鉄筋の異常高」
鑑定コラム416)「19ミリ異形棒鋼トン9万円台に(2008年3月19日)」
鑑定コラム425)「ついに19ミリ異形棒鋼トン10万円台(2008年4月28日)」
鑑定コラム437)「19ミリ異形棒鋼トン11万円に(2008年6月12日)」
鑑定コラム480)「19ミリ棒鋼が値下がり始めた」
鑑定コラム487)「鋼材の値下がりは地価の遅行指数であることの認識を」
鑑定コラム514)「19ミリ異形棒鋼トン7.8万円に下落」
鑑定コラム1790)「19ミリ異形棒鋼が値上りしている」
鑑定コラム1947)「19ミリ異形棒鋼価格がトン7.4万円に下がった」
鑑定コラム1993)「19ミリ異形棒鋼▲4%値下がり(2019年9月)」
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