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2017年4月19日、東京赤坂見附のホテルニューオータニの小さな部屋で、女性3人を含めた20人程度の中堅の不動産鑑定士を相手に話をした。
人は田原塾というが、55回目を数える賃料を中心にした不動産鑑定の話である。
55回目の田原塾の話は、家賃の新規比準賃料の求め方とその留意点の話と、東京の住宅地の価格の状況について話した。
新規比準賃料の求め方とその留意点については、いつか機会があったら、鑑定コラムに記事にしたい。
今回は、もう一つの東京の住宅地の価格の状況について話したことを記事にする。
話の相手は、中堅の不動産鑑定士である。8割近くの人が地価公示価格の評価を行っており、今年(2017年)1月時点の公示価格の評価を終えたばかりであり、東京の地価の状況はどういう状態であるのかは、充分知っている。
そういう人に話すのであるから、その知識を越えた内容のもので無ければ、出席者の勉強にはならない。安くない参加費を支払ってまで聞きに来る必要性は無い。
切り口を変えたオリジナルな土地価格の分析の話で無ければ聞く価値は無い。
鑑定コラムで記した2つの内容をつなぎ併せ、グラフで図示してより分かり易くして話した。鑑定コラムを読んでいる人は、2度聞く話になるが、そこは辛抱して読んで欲しい。
講話のレジュメに追加して、以下に内容を記す。
****
大手不動産会社野村不動産の子会社である野村不動産アーバンネット株式会社は、3ヶ月ごとに都内の住宅地の地価を調査し発表している。
『「住宅地地価」価格動向』という調査である。
2017年1月1日時点の価格は、2017年1月13日に同社から発表された。
東京の土地価格は、皇居を中心にして、「の」の字を描くごとく、右回りに変動している。
その価格現象については、鑑定コラム308)「東京の地価は皇居を中心に時計回りに」(2006年10月22日発表)の記事に述べている。
東京の土地の動向は、皇居を中心にして、「の」の字を描くごとく、右回りに変動しているが、ではその価格現象が最初に現れるのは、何処なのか。
それは城南地区にまず現れると云うのが、東京の不動産価格のもう1つの経験則である。
2017年1月1日時点の野村不動産アーバンネット発表価格に驚くべき価格現象が現れた。
城南地区の地点価格で、3ヶ月前と比較して下落している地点が出現した。
土地価格経験則の現象が現れた。
その出現した現象については、鑑定コラム1593)「都心住宅地価が下落し始めた」で具体的数値を示して述べた。
下記である。単位は坪当り万円である。
所在地 2016年10月 2017年1月 下落幅
港区高輪4丁目 460 450 ▲10
港区三田2丁目 480 475 ▲5
港区芝浦2丁目 380 375 ▲5
港区白金台4丁目 480 475 ▲5
新宿区左門町 280 275 ▲5
品川区上大崎2丁目 450 445 ▲5
世田谷区上野毛3丁目 240 235 ▲5
3ヶ月前の2016年10月には、城南地区住宅地の価格には、下落はなかった。
新宿区左門町は、城南地区に入らないが、その地点を除けば、6地点は東京の城南地区の良好な住宅地ばかりである。
その城南地区の良好な住宅地の価格が、3ヶ月後の2017年1月に、突然6地点の地価がマイナスになった。3ヶ月前の2016年10月1日の価格は値下がりしていない土地価格であった。3ヶ月後の2017年1月には、6地点が値下がりしたのである。
先に述べた東京の地価の経験則の一つ、東京の地価が変動を起こす時、最初にそれが出現するのは、城南の土地の価格に現れるという経験則が、正に出現したのである。
この城南地区6地点の価格下落現象は、平成24年(2012年)第4四半期頃から上がり放しであった東京の地価が、下落に転換しょうとし始めたと解釈出来よう。
地価下落現象が、具体的に目に現れてきたのである。
そして、3ヶ月後の2017年4月6日に、野村不動産アーバンネツトは、2017年4月1日時点の住宅地価格を発表した。
ここで、はっきりと東京の住宅地の価格が峠を越えたことが立証された。
このことについては、鑑定コラム1625)「野村アーバン調査から東京住宅地価は下落に入った」で記事を書いた。その内容は、下記である。
3ヶ月前の2017年1月1日時点の価格と比較すると、価格変動していた地点は、下記である。
価格上昇地点数 7地点
価格変動無い地点数 52地点
価格下落地点数 11地点
計 70地点
土地価格上昇する個所は、依然としてあるが、価格上昇個所よりも価格下落の個所の方が多くなって来た。
つまり地価下落傾向が、3ヶ月前より、より強くなって来ているということになる。
上記個所地点数より、東京23区住宅地の価格DI値を求めると、下記である。
7-11
──── ×100 = ▲5.7
70
マイナス5.7のDI値になった。
マイナスのDI値は、価格上昇傾向にある時は、価格がピーク或いは下落に転じていることを示す。
東京23区住宅地の価格は、野村不動産アーバンネットの調査結果から分析すると、ピークから下落に入ったことになる。
2017年1月1日時点の東京の住宅地の地価公示価格は、青梅市を除き、全ての地域で上昇している。
その様に3ヶ月前に価格評価した不動産鑑定士達に向かって、2017年の1月か2月が住宅地価格のピークで、現在は下落していると話するのである。
相当のショックを与える内容の話である。
聞く人は、「エーッ」であろう。
この価格DI値の動きを長期で見れば、そのことが成る程と分かろう。
過去の価格増減の状態を示すDI値を記す。下記である。
2012年 4月 ▲15.5
2012年 7月 ▲20.7
2012年10月 ▲8.6
2013年 1月 0.0
2013年 4月 29.3
2013年 7月 46.6
2013年10月 15.5
2014年 1月 41.4
2014年 4月 22.4
2014年 7月 20.7
2014年10月 44.8
2015年 1月 44.8
2015年 4月 33.3
2015年 7月 44.8
2015年10月 22.4
2016年 1月 20.9
2016年4月 32.8
2016年7月 21.4
2016年10月 25.7
2017年1月 7.1
2017年4月 ▲5.7
23区住宅地価DI値をグラフにしたのが、下図である。
上記グラフを見れば、より地価の傾向がわかる。
2013年1月にDI値が0になって、地価下落が止まる。それ以降DI値はプラスになる。つまり地価は上昇する。実質的には、2012年第4四半期頃から地価は上昇しているが。
その後2016年4月まで、DI値は、高い水準を付ける。
それは安倍内閣の黒田日銀による金融の超超超緩和政策によって、不動産に莫大な金が流れ込んだことによる地価高騰を示す。
莫大な金が不動産に流れ込んだということの立証は、鑑定コラム1605)「12兆2800億円という巨額の不動産業貸出額」の記事でなされている。
そして2017年1月〜4月に、DI値が0となり、ついに4月には0を切り▲5.7となる。
東京の住宅地の価格は天井を打ち、下落に入った。 土地価格の潮目が変わった。
講話に伴い配布した説明資料である野村不動産アーバンネット株式会社の2017年4月1日時点の『「住宅地地価」価格動向』のコピー資料は割愛する。
(2017年4月19日、東京赤坂見附のホテルニューオータニの小さな部屋で開かれた田原塾の講話より)
鑑定コラム308)「東京の地価は皇居を中心に時計回りに」
鑑定コラム1593)「都心住宅地価が下落し始めた」
鑑定コラム1625)「野村アーバン調査から東京住宅地価は下落に入った」
鑑定コラム1605)「12兆2800億円という巨額の不動産業貸出額」
鑑定コラム521)「のの字現象」
鑑定コラム513)「『家賃崩落』の記事の影響」
鑑定コラム1671)「その借地権割合は大丈夫か」
鑑定コラム1846)「2018年9月不動産業への貸出額は前年同期比▲2.9%減」
鑑定コラム1904)「東京住宅地価DI値2度目のマイナス 地価下落本格化か」
鑑定コラム2113)「東京23区住宅地価格の下落が始まる コロナの影響が出始めた」
鑑定コラム2114)「銀座の地価が値下がり始めた 野村アーバン 令和2年7月」
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