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1.はじめに
「1月末の京都は寒かった」の鑑定コラム記事を、2018年1月末に記した。
余りの寒さにホテルの温泉に飛び込み、寿司店に行き、しめ鯖の刺身を食べたが、そのしめ鯖の刺身は美味しかったという内容の記事である。
その記事を読んだ訪問者からは、そんなことを読みたくて鑑定コラムを訪れたのでは無いと強い叱声を浴びそうである。
それは当然である。
京都の仕事に関して調べたデータに基づいて、京都の不動産に関する情報を罪滅ぼしというわけでは無いが、一つ記す。
京都の賃貸マンションの還元利回りは、どれ程か。
京都と云っても広いことから、右京区に所在するマンションの還元利回りを求めることとする。
2.想定賃貸マンション
容積率200%、建蔽率60%の一種住居地域にあって、道路巾員6mに接する地積300uの土地とする。この土地を標準地と呼ぶ。
その土地に鉄筋コンクリート造3階建、延床面積540uの賃貸マンションを想定する。この建物を標準賃貸マンションと呼ぶ。
その賃貸マンションの還元利回りを推定することとする。
レンタブル比は、鑑定コラム1638)「賃貸マンションのレンタブル比」の記事に記載の平均数値0.867 とする。
レンタブル面積は、
540u×0.867=468u
である。
賃貸マンション1戸の平均広さは、40u(2DK)とする。
468u÷40=11.7≒12
2DK12戸の賃貸マンションである。
3.土地価格
土地価格は、国土交通省が発表している地価公示価格の住宅地の平均価格を採用する。
平成29年1月1日時点の京都市の住宅地の平均価格は、下記である。単位はu当り円である。
北区 258,500円
上京区 298,000円
左京区 234,000円
中京区 251,000円
東山区 215,000円
下京区 218,000円
南区 171,200円
右京区 175,500円
伏見区 148,600円
山科区 130,800円
西京区 194,200円
右京区の住宅地の平均価格は、u当り175,500円である。
標準地の土地価格は、
175,500円×300u=52,650,000円
52,650,000円である。
4.建物価格
想定マンションの建物価格は、新築の工事費相当とする。
鑑定コラム1741)「平成29年RC造建築費は全国平均26.56万円/u」で、平成29年1年間で建設されたRC造の各県別の平均建築工事費が掲載されている。
京都府の建築費は、u当り211,100円である。
この金額を賃貸マンションの建築工事費とする。これに設計監理費5%を加算する。
211,100円×1.05=221,655円≒222,000円
建物の面積は540uであるから、建物価格は、
222,000円×540u=119,880,000円
である。
5.賃貸マンションの土地建物の価格
標準地に想定した賃貸マンションの土地建物の価格は、下記である。
土地価格 52,650,000円
建物価格 119,880,000円
計 172,530,000円
6.2DKの賃貸マンションの賃料
全国宅地建物取引業協会連合会が運営する「ハトマークサイト」というホームページ発表の「賃料相場」データによる。
京都の2DK(40u)の平成30年1月の募集家賃平均は、下記である。
月額 u当り円
北区 63,400円 1,585円
上京区 71,110円 1,778円
左京区 64,400円 1,610円
中京区 89,800円 2,245円
東山区 73,900円 1,848円
下京区 87,600円 2,190円
南区 65,300円 1.633円
右京区 62,000円 1,550円
伏見区 59,900円 1,498円
山科区 58,000円 1,450円
西京区 59,800円 1,495円
右京区の2DK賃貸マンションの賃料は、u当り1,550円である。
7.還元利回り算出の算式
還元利回りの算出の算式は、鑑定コラム19) 「還元利回りの求め方」に掲載されている算式による。
算式は、下記の2つである。
年間実質賃料
粗利回り =─────────
土地・建物の価格
還元利回り = 粗利回り × (1−必要諸経費率)
粗利回りは、下記の算式に分解される。この算式を標準粗利回りの式とする。
標準粗利回り=
u当り賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率修正×経年
賃料修正率×容積率×賃貸面積率
─────────────────────────────────
土地単価+建物工事費単価×容積率×償却修正率
上記還元利回りを求める算式は、2001年11月発行の『賃料<家賃>評価の実際』P262(清文社)で発表された。以後2017年2月に発行の『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』P65(プログレス)に引き継がれて掲載されている。
不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」とする)は、還元利回りの求め方を4つ例示している。
その一つに、「類似の不動産の取引事例との比較から求める方法」を挙げる。
その説明は、次のごとく云う。
「この方法は、対象不動産と類似の不動産の取引事例から求められる利回りをもとに、取引時点及び取引事例並びに地域要因及び個別的要因の違いに応じた補正を行うことにより求めるものである。」(平成26年改正鑑定基準国交省版P30)
標準粗利回りの式と必要諸経費率より求められる上記還元利回りの算式は、鑑定基準の云う類似の不動産の取引事例との比較から求める方法を、より科学的に、数学的に進化させ論理化させたものである。
8.必要諸経費率
2017年2月に発行した著書の『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス)のP99に減価償却費を含めた賃貸マンションの必要経費率を
貸マンション 0.35
としている。この割合を採用する。
9.その他のデータ値
標準粗利回りの式に必要なデータ数値を、下記のとおりとする。
イ、共益費修正率
共益費は支払賃料に含まれているものとする。それ故、共益費修正率は1.0となる。
ロ、運用償却額修正率
敷金は、支払賃料の2ヶ月分とする。京都市域に特別に存在している慣行の「敷引特約」は無いものとする。礼金の支払いもないものとする。
敷金の利率は0.5%とする。
敷金運用益修正率は、
1,550×2×0.005÷12=1.29円/u
1.29円÷1,550円=0.0008≒0.001
1.001である。
礼金は無いことから償却額は0円である。
ハ、空室率修正
京都の賃貸マンションの空室率修正である。
京都の賃貸マンションの空室率を発表している会社・企業は無い。
「LIFULL HOME'S」のホームページの「不動産投資」部門において、京都の賃貸用住宅の空室率を発表している。(http://toushi.homes.co.jp/owner/kyoto/)
それによると、
賃貸住宅空家 79,250戸
借家 453,300戸
である。
賃貸用住宅の空室率は、
79,250÷453,300=0.1748≒0.175
17.5%である。
京都市が、平成20年度調査の『京都市の空き家の現状』(http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000129/129012/1-shiryou3.pdf)という空家の調査報告書を発表している。
それによると、賃貸用住宅空家は5.7万戸であり、それは次の種類に分かれている。
不良空家 1.4万戸
普通・良質空家 4.3万戸
この数値から、普通・良質空家の空室率を、
0.175×(4.3/5.7)=0.132
とする。
普通・良質空家4.3万戸は、下記に分類されている。
マンション・アパート(非木造) 3.7万戸
戸建・長屋・木造 0.6万戸
この数値から、中古マンションの空室率を、
0.132×(3.7/4.3)=0.113
とする。
空室率は経年数により、大きく影響を受ける。
経年数による空室率の分析がなされていないことから、経年による空室率の修正をどう行えば良いかのデータが無い。
築10年経った賃貸マンションよりも、新築の賃貸マンションの方が空室率は少ないと云うことは、職業柄わかる。
標準賃貸マンションは、新築である。これによる空室率の修正を0.8とする。
11.3%×0.8=9.04%≒9.0%
空室率を9.0%とする。
ニ、経年賃料修正率
新築賃貸マンションであり、修正の必要はない。 1.0
ホ、容積率修正
容積率修正は、
建物延床面積÷土地面積=容積率修正率
である。
標準賃貸マンションの場合、
540u÷300u=1.80
である。
ヘ、償却修正率
償却修正率は、
建物価格÷新築価格=償却修正率
である。
標準賃貸マンションの場合、
建物価格 u当り222,000円
新築価格 u当り222,000円
であるから、
222,000÷222,000=1.0
である。
10. 数値のまとめ
上記の数値をまとめる。
土地単価 175,500円/u
建物工事費 222,000円/u
建物価格 222,000円/円
建物償却修正率 1.0
支払賃料 1,550円/u
共益費修正率 1.0
運用償却額修正率 1.001
空室率 0.91
経年賃料修正率 1.0
容積率 1.80
賃貸面積率 0.867
必要諸経費率 0.35(減価償却費込み)
11. 京都右京区の賃貸マンションの還元利回り
上記数値を標準粗利回りの式に代入すれば、粗利回りは0.045977と求められる。
必要諸経費率は、0.35(減価償却費込み)である。
還元利回りは、
0.045977×(1-0.35)=0.029885≒0.03
3.0%と求められる。
京都右京区の賃貸マンションの還元利回りは、3.0%である。
12. 京都の他の区の賃貸マンションの還元利回り
上記右京区と同じ求め方で、土地価格、賃料以外は同じ条件として、京都市の他の区の賃貸マンションの還元利回りを求めると、下記である。
北区 2.7%
上京区 2.8%
左京区 2.8%
中京区 3.9%
東山区 3.3%
下京区 3.9%
南区 3.2%
右京区 3.0%
伏見区 3.0%
山科区 3.0%
西京区 2.8%
平均 3.1%
京都市の賃貸マンションの平均還元利回りは、3.1%である。
鑑定コラム1734)「1月末の京都は寒かった」
鑑定コラム1638)「賃貸マンションのレンタブル比」
鑑定コラム1741)「平成29年RC造建築費は全国平均26.56万円/u」
鑑定コラム19) 「還元利回りの求め方」
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鑑定コラム795)「敷引特約は違法であると言う最高裁裁判官が一人出現した」
鑑定コラム1747)「京都右京区の住宅地の土地還元利回りは2.2%である」
鑑定コラム1748)「京都の家賃は平成24年〜30年1月で6.7%の上昇」
鑑定コラム1756)「倉敷のマンションの還元利回りは2.8%」
鑑定コラム1757)「土地還元利回りと建物還元利回り」
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