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2098)東京中央区商業地価と総合還元利回り

1.はじめに

 土地価格の高い所の建物賃料は高いと云うことは、経済現象からの経済経験原則である。
 
 商業地の中にあってもその土地価格の高い所の建物賃料は高い。

 この関係については、鑑定コラム2096)「東京中央区の公示商業地地価と1階賃料(2020年1月) 」で、その経済現象は立証され、論証された。

 土地価格が高い場所の賃料は高いことは分かったが、土地価格が高くなる割合と同じ様に賃料は高くなるというものでは無い。

 とすると、貸ビルの総合還元利回りと土地価格とは常に同じ還元利回りということでは無く、異なるのではなかろうか。

 その商業地の総合還元利回りは、土地価格の高い場所と安い場所では、土地価格の高い場所の総合還元利回りの割合は低く、土地価格の安い場所の総合還元利回りは高い割合では無いのか。

 その仮説を立証し、論証したい。

 それと共に、はっきりと分からない商業地の総合還元利回りの水準はどれ程かをデータで分析し、具体的数値で示すことによって分からせたい。

 これらを考え、東京中央区の商業地の土地価格と総合還元利回りの関係を分析して、仮説を立証してみる。

 使用したデータは、東京中央区の2020年地価公示価格(商業地)と、その地価公示価格に付随して公開されている不動産鑑定書に記載されている収益還元法の建物価格、純収益による。

2.総合還元利回りとは

 総合還元利回りとは、貸ビルのごとく土地と建物が複合して使用されている複合不動産の還元利回りを云う。

 総合還元利回りは、次の算式で求められる。

          純収益
            ──────────── = 総合還元利回り              
                土地価格+建物価格

3.求め方

 東京中央5-1の地価公示価格を例にして、求め方を説明する。

@ 所在等

  所在  東京都中央区銀座2-16-12(住居表示)
  価格 u当り 3,270,000円
  地積  340u

A 土地総額
            3,270,000円×340u=1,111,800,000円

B 建物価格

 地価公示価格は更地の価格である。

 対象地に既存建物があっても、更地と考え、そこに最有効使用の賃貸建物を想定する。新築建物を考える。

 地価公示価格の不動産鑑定書が公開されるようになった。

 その鑑定書には収益還元法の明細が記載されている。想定した最有効使用の賃貸建物の新築価格が明示されている。  中央5-1の想定建物価格は、705,000,000円である。

C 土地建物価格

 想定された最有効使用の賃貸ビルの建物及びその敷地の価格は、
 
               1,111,800,000円+ 705,000,000円=1,916,800,000円

である。

D 純収益

 想定された貸ビルの賃料等による総収入、公租公課等の総支出の数値及び純収益が記載されている。

 総支出は必要諸経費であるが、地価公示価格の収益還元法の必要諸経費には減価償却費は計上されていない。

 それ故、求められている純収益は、償却前純収益である。求められる総合還元利回りは、償却前総合還元利回りである。

 中央5-1の純収益は、79,535,000円である。

E 総合還元利回り

 上記数値を算式に代入すれば、

                  79,535,000円
              ─────────  = 0.044                          
               1,916,800,000円

0.044と求められる。

 中央5-1の総合還元利回りは、4.4%と求められる。この利回りは償却前利回りである。

4.データ一覧

 上記の求め方によって、中央区の商業地地価公示価格52個所を分析する。中央区の商業地は53地点あるが、中央5-6は1階が荷捌き駐車場等で賃料の計上が無いことから不採用とする。

 中央区商業地52地点の総合還元利回り(償却前)の平均は4.2%である。

 データ一覧は、下記である。


中央区                
公示番号 所在(住居表示) 公示価格千円/u 土地面積 u 土地総額 千円 建物価格 千円 土地建物価格 千円 純収益 千円 還元利回り
                 
中央5-1 銀座2-16-12 3270 340 1111800 705000 1816800 79535 0.044
中央5-2 銀座6-8-3 32200 360 11592000 862000 12454000 271543 0.022
中央5-3 京橋1-15-1 7740 1375 10642500 4310000 14952500 596869 0.040
中央5-4 銀座3-7-1 17600 290 5104000 792000 5896000 197258 0.033
中央5-5 京橋1-1-1 22900 1948 44609200 5240000 49849200 1521351 0.031
中央5-7 八重洲1-5-9 8810 316 2783960 985000 3768960 147690 0.039
中央5-8 日本橋3-11-1 8170 1376 11241920 3860000 15101920 588940 0.039
中央5-9 日本橋人形町1-19-8 3180 121 384780 292000 676780 30658 0.045
中央5-10 築地5-3-3 2700 2543 6866100 5500000 12366100 578984 0.047
中央5-11 日本橋兜町13-1 5660 1105 6254300 2690000 8944300 356705 0.040
中央5-12 日本橋小伝馬町12-2 3080 149 458920 373000 831920 39030 0.047
中央5-13 勝どき4-2-14 2070 471 974970 874000 1848970 86513 0.047
中央5-14 新富1-9-1 2300 207 476100 399000 875100 40360 0.046
中央5-15 日本橋蛎殻町1-16-11 2450 275 673750 644000 1317750 62254 0.047
中央5-16 日本橋本町4-1-11 5900 330 1947000 919000 2866000 114390 0.040
中央5-17 新川1-17-27 2460 195 479700 493000 972700 47363 0.049
中央5-18 銀座4-2-15 31000 829 25699000 3560000 29259000 879619 0.030
中央5-19 築地2-12-11 2280 340 775200 663000 1438200 67078 0.047
中央5-20 日本橋人形町2-21-10 1890 147 277830 248000 525830 25674 0.049
中央5-21 新川2-12-15 2320 458 1062560 713000 1775560 79400 0.045
中央5-22 銀座4-5-6 57700 454 26195800 1990000 28185800 769049 0.027
中央5-23 銀座7-9-19 42700 426 18190200 1650000 19840200 545834 0.028
中央5-24 日本橋茅場町2-4-6 2310 148 341880 589000 930880 29370 0.032
中央5-25 日本橋富沢町7-15 1600 111 177600 214000 391600 19328 0.049
中央5-26 八丁堀1-9-7 4680 296 1385280 669000 2054280 82514 0.040
中央5-27 銀座2-3-18 6080 105 638400 195000 833400 33265 0.040
中央5-28 八重洲2-10-17 13400 1724 23101600 7740000 30841600 1087589 0.035
中央5-29 銀座2-6-7 43300 353 15284900 1410000 16694900 494071 0.030
中央5-30 新川1-11-5 1140 138 157320 234000 391320 20789 0.053
中央5-31 月島3-9-10 1520 74 112480 37200 149680 5540 0.037
中央5-32 入船3-1-13 2480 478 1185440 1120000 2305440 110553 0.048
中央5-33 京橋1-6-1 17500 2237 39147500 6590000 45737500 1502749 0.033
中央5-34 日本橋人形町1-5-15 1290 107 138030 159000 297030 15024 0.051
中央5-35 日本橋2-1-10 21500 2222 47773000 7870000 55643000 1674107 0.030
中央5-36 日本橋馬喰町2-6-11 1270 128 162560 214000 376560 19633 0.052
中央5-37 日本橋蛎殻町2-13-9 1120 140 156800 175000 331800 16905 0.051
中央5-38 八丁堀4-8-1 3140 172 540080 439000 979080 46310 0.047
中央5-39 日本橋室町1-11-8 3090 297 917730 730000 1647730 76282 0.046
中央5-40 日本橋箱崎町20-1 1280 226 289280 407000 696280 37686 0.054
中央5-41 銀座5-4-3 49700 435 21619500 1880000 23499500 680258 0.029
中央5-42 築地4-7-5 4040 1461 5902440 4210000 10112440 458380 0.045
中央5-43 八重洲1-5-20 23400 623 14578200 1960000 16538200 493154 0.030
中央5-44 銀座5-13-16 9570 660 6316200 2010000 8326200 314682 0.038
中央5-45 日本橋室町4-2-14 2340 123 287820 238000 525820 25496 0.048
中央5-46 日本橋茅場町3-2-12 2870 336 964320 677000 1641320 72433 0.044
中央5-47 築地3-12-5 1340 225 301500 378000 679500 36045 0.053
中央5-48 入船3-8-9 1470 162 238140 314000 552140 28519 0.052
中央5-49 日本橋本町3-2-13 3000 575 1725000 1120000 2845000 128497 0.045
中央5-50 日本橋3-2-14 6110 220 1344200 532000 1876200 76771 0.041
中央5-51 日本橋本町4-4-2 7510 1131 8493810 3380000 11873810 482729 0.041
中央5-52 晴海2-1-40 2000 7250 14500000 18800000 33300000 1666849 0.050
中央5-53 銀座8-6-20 16400 181 2968400 499000 3467400 124194 0.036
  平均             0.042


5.グラフ図示と回帰式

 上記データのうち、総合還元利回りを縦軸に、土地価格を横軸に取って、プロットしたのが下記グラフである。

     Y:総合還元利回り
     X:地価公示価格 千円/u

として、両者の関係式をエクセルの近似式計算に当てはめると、

               Y=0.1731Xの(-0.1699)乗
                決定係数0.8312

 (注)累乗算式の表示が上手に出来ない。グラフ内に表示してある算式である。

と求められた。



中央区総合還元利回り



 (1÷土地価格の0.1699乗)の値に、0.1731を乗じると、その土地の総合還元利回りが求められると云うことである。

より簡単に云うと、土地価格の0.17乗の逆数に0.17を乗じると、総合還元利回りが求まるということになる。

 0.17という数字が2つ絡んで来るが、これは偶然なのか。この数値は何なのか。他の地域にも現れる数値なのか。もし他の地域の総合還元利回り算出で現れる数値であれば、それは意味ある数値になる。果たしてどうか。

 上記算式の決定係数が0.83であるから、求められた関係式の相関度は甚だ高い。

 グラフを見ると、52データのうち3つのデータが回帰式からかけ離れて存在している。何らかの理由によるものであろう。

6.まとめ

@ 仮説の立証

 上記分析から、分析に入る前の2つの仮説

  イ、貸ビルの総合還元利回りと土地価格とは常に同じ還元利回りということでは無く、異なるのではなかろうか。

  ロ、その商業地の総合還元利回りは、土地価格の高い場所の総合還元利回りの割合は低く、土地価格の安い場所の総合還元利回りは高い割合では無いのか。

のイ・ロいずれも立証された。

 即ち、総合還元利回りは一定では無い、そして商業地にあって、地価の高い所は総合還元利回りは低く、地価の安い所は総合還元利回りは高いと云うことが立証出来た。

A 総合還元利回りの具体化

 上記分析によって、商業地のどこの土地が何%の総合還元利回りであるのかを具体的に知ることが出来た。

 これにより、商業地の総合還元利回りの比較化、均衡化を図る事が出来る。

B 商業地価と標準総合還元利回り

 求められた算式から具体的に総合還元利回りを求めると下記である。

 例えば、土地価格がu当たり1,000千円であるとする。

                          1                      1
     Y=0.1732 ×──────── =  0.1732 ×──────    
                       1,0000の0.1699乗             3.233702

=0.1732×0.309243 =0.05356 ≒0.054

 u当たり1,000千円の商業地の土地の総合還元利回りは、5.4%と求められる。

 上記のごとく求められた総合還元利回りと商業地地価一覧を下記に記す。

 商業地の総合還元利回りの目安になるであろう。但し償却前の総合還元利回りである。

      商業地価 千円/u               総合還元利回り %

       1,000 5.4        2,000 4.8        3,000 4.4        4,000 4.2        5,000 4.1        6,000 4.0        7,000 3.8        9,000 3.7        10,000 3.6        12,000 3.5        14,000 3.4        16,000 3.3        19,000 3.2        23,000 3.1        28,000 3.0        34,000 2.9        41,000 2.8        51,000 2.7        63,000 2.6        79,000 2.5        100,000 2.4

 総合還元利回り0.1%の違いが、土地価格にどれ程の違いが出るのかということは、上記一覧表を知れば分かろう。

 積上げ還元利回りで、不動産の流動性のリスク要因の修正で±1.0等の還元利回りの求め方の鑑定書を多く見るが、その求め方が如何に杜撰なものかは、上の表を見れば分かろう。


  鑑定コラム2065)「2020年銀座山野楽器店公示地の土地還元利回りは2.5%(償却後)」

  鑑定コラム2096)「東京中央区の公示商業地地価と1階賃料(2020年1月) 」

  鑑定コラム149)「積み上げ方式の割引率に実証性はあるのか」

  鑑定コラム837)「リスク数値の説明が出来ずに積み上げ利回りを使用する不動産鑑定」

  鑑定コラム2102)「23区トップ商業地価と総合還元利回り」
 
  鑑定コラム2103)「23区トップ商業地の1階賃料と還元利回り」
  
  鑑定コラム2104)「大阪市u500万円以上商業地価と1階賃料」
 
  鑑定コラム2105)「都道府県商業地最高地価と1階賃料」

  鑑定コラム2106)「都道府県商業地最高地価と総合還元利回り」

  鑑定コラム2107)「都道府県商業地最高地価の1階賃料と還元利回り」
 

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