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28)日本プライムリアルティ投資法人のリート

 日本プライムリアルティ投資法人(東京建物、安田生命等で組織する)のリートが2002年6月に東京証券取引所に上場される。(住宅新報2002.5.31)

 リート組成不動産は事務所23棟、商業施設2件である。

 事務所の賃料、粗利回り等をデータより分析すると以下のごとくである。
 賃料は、
     月額賃料÷賃貸総面積=賃料単価
で求める。

 このデータは今後の不動産鑑定の収益還元法の貴重なデータになると思われる。

 粗利回り(グロス利回り)は、
      年間賃料÷取得(予定)価格=粗利回り(グロス利回り)
で求める。
 この粗利回りも不動産鑑定の価格把握のデータとして利用出来るものである。

 キャッシュフローでは減価償却費を考えない。
 しかしリートの配当支払能力を知るには減価償却費は無視出来ない要因であり、かつ他のリートと比較するには必要であることから、ビルの減価償却費込みの必要経費率を35%として、還元利回りを参考として計算した。

計算式は、
     粗利回り×(1−0.35)=参考還元利回り
である。

 賃貸平方米当り価格とは、
       取得(予定)価格÷賃貸総面積=賃貸面積当たり価格
である。
 土地建物の全体価格を賃貸面積で除した価格である。

 土地価格・建物価格と区分せずリート対象の複合不動産の賃貸面積当たりの価格である。
 リート対象不動産の価格の比較にはこの単価の方が使いやすい。

 兼松ビルは昭和通りに面するビルで、兼松別館ビルはその背後の高速道路沿のビルである。
 賃貸面積当たり価格は2,045,000円と 1,254,000円と大きく差がある。
 これは主として立地を反映する土地価格の差によるものである。賃貸面積当たり価格には土地価格が反映されている。

 賃貸面積当り価格の高い所は賃料もやはり高くなっており、両者には密接な相関関係があると思われる。

 しかし、同一都市内にあってこのバランスが崩れているビルがある。
例えば大阪の安田生命大阪ビルと東京建物本町ビルの間にその現象が認められる。

      ビル名          賃貸面積当たり価格     賃料
     安田生命大阪ビル         866,000円         5,592円
     東京建物本町ビル         576,000円        5,712円
 この捻れ現象はそれなりの理由があろうと思われるが、私にはわからない。

 粗利回り(グロス利回り)は、
     東京    8.46%   (5.50)
          札幌       12.67%   (8.24)
          仙台       12.51%   (8.13)
          千葉       12.12%   (7.88)
          横浜    11.81%  (7.68)
          新潟       11.51%   (7.48)
          大阪    12.38%   (8.05)
          和歌山   14.42%   (9.37)
          高松    11.61%   (7.54)
          福岡     9.99%   (6.49)
          那覇    13.50%   (8.78)
        全平均       10.90%   (7.09)
である。()は参考還元利回りである。

 リート物件は全て不動産鑑定評価が行われている。
 不動産鑑定評価額と取得或いは取得予定価格の価格差は、全組成物件で見ると
      取得(予定)価格÷不動産鑑定評価額
     =92,180,000,000円÷93,815,000,000円=0.982
である。

 鑑定評価額との誤差は1.8%である。

 23の賃貸ビルの賃貸平方米当り価格と粗利回りの関係を分析すると、粗利回りは次のごとくである。
   賃貸平方米      粗利回り           賃貸平方米      粗利回り
 当り価格万円       %              当り価格万円       %
       30            14.4                 130              7.1
     40            13.3                 140              6.9
       50            12.2                 150              6.8
       60            11.1                 160              6.7
       70            10.1                 170              6.5
       80             9.0                 180              6.4
       90             7.9                 190              6.3
      100             7.5                 200              6.1
      110             7.3                 210              6.0
      120             7.2                 220              5.9
 一方23事務所ビルの賃料と粗利回りを分析すると、粗利回りは次のごとくである。
   平方米当り      粗利回り          平方米当り      粗利回り
  賃料千円         %               賃料千円          %
      3              14.3                   10             6.2
      4              13.2                   11             5.9
      5              12.0                   12             5.6
      6              10.8                   13             5.2
      7               9.6                   14             4.9
      8               8.4                   15             4.6
      9               7.2
賃貸面積当り価格或いは賃料単価によって事務所ビル粗利回りはほぼ求められる。
 粗利回りが求められれば、それより還元利回りは求められる。

 上記分析結果はリート対象の23のビルの分析結果であるが、この分析数値は他の類似のビルにも適用出来るのではなかろうか。今後リートの発行によるリート組成ビルの情報を加えて分析を付け加えてゆけば、より一層信頼性は高まると思われる。

 以下に各ビルの利回り等の分析結果一覧表を記す。
 物件の詳細は投資法人の目論見書を見られたい。
 (予)は取得予定物件である。

 物件名         所在地           賃貸平方米  平方米   粗利回り  参考還元
                                   価格        賃料               利回り
 兼松ビル         中央区京橋      2,045,000   10,391  0.0610   0.0396
 兼松ビル別感     中央区京橋      1,254,000    7,276  0.0696   0.0452
 安田生命ビル    中央区人形町      756,000    6,059  0.0962   0.0625
 新麹町ビル      千代田区麹町      793,000    6,115  0.0925   0.0601
 クレスト安田(予) 千代田区神田錦町 1,225,000    7,469  0.0732   0.0476
 アルカイースト   墨田区錦糸         834,000    6,976  0.1004   0.0652
 安田生命池袋(予) 豊島区東池袋       617,000    5,097  0.0991   0.0644
 東京都 平均                                        0.0846    0.0550
       
 NORTH33(予)      札幌中央区北三西   673,000    5,697   0.1016    0.0660
 パークイースト(予) 札幌中央区南     317,000    4,007   0.1518    0.0987
 札幌市 平均                                            0.1267    0.0824
               
 損保JAPAN仙台(予)仙台宮城野区榴岡   447,000    4,660   0.1251    0.0813
 JPR千葉ビル      千葉中央区新町     603,000    6,086   0.1212    0.0788
 朝日生命大通り   横浜中区日本大通り 525,000    5,170   0.1181    0.0768
 新潟駅南センター 新潟市米山         411,000    3,942   0.1151    0.0748
            
 安田生命大阪     大阪北区梅田       866,000    5,592   0.0775    0.0504
 安田生命天六     大阪北区浪花町     320,000    4,668   0.1749    0.1137
 東京建物本町     大阪中央区本町     576,000    5,712   0.1191    0.0774
 大阪市 平均                                            0.1238    0.0805
               
 損保JAPAN(予)    和歌山市美園町     337,000    4,054   0.1442    0.0937
               
 朝日生命高松2    高松市寿町         395,000    4,483   0.1363    0.0886
 JPR高松2         高松市寿町         588,000    4,696   0.0959    0.0623
 高松 平均                                             0.1161    0.0754
               
 安田生命博多   福岡博多区博多駅前   460,000    4,215  0.1099    0.0715
 朝日生命福岡3・4 福岡博多区住吉     382,000    3,715   0.1168    0.0760
 天神121ビル(予)  福岡 中央区天神  1,072,000    6,511   0.0729    0.0474
 福岡市 平均                                            0.0999    0.0649
                                         
 安田生命那覇     沖縄那覇市松山     427,000    4,803   0.1350    0.0878
 全体の平均                                             0.1090    0.0709


 リート及び貸ビルの利回りに関して、本『鑑定コラム』に次の記事があります。参考になると思います。

 鑑定コラム   6) 「丸の内土地還元利回り3.6%」
 鑑定コラム   19) 「還元利回りの求め方」
 鑑定コラム   41) 「田の還元利回り4.2%」
 鑑定コラム  111) 「丸ビルの土地利回り2.9%の求め方」
 鑑定コラム  154) 「不動産の利回り(割引率とターミナルレート」
 鑑定コラム  179) 「ある投資法人の購入ビルの利回り」
 鑑定コラム  186) 「沖縄の家賃と不動産利回り」
 鑑定コラム  189) 「東京の賃貸ビルのフアンドバブル化」
 鑑定コラム  257) 「危険ゾーンに入った都心一部の貸ビル利回り」

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