○鑑定コラム
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東京駅の西側・皇居側は丸の内と呼ばれるビジネス街である。
2002年8月に三菱地所が、東京駅の真ん前にあった旧丸ビルを取り壊し、その土地に新丸の内ビルを建設した。
丸の内地区の街づくり再開発事業の一環の事業の一つの完成である。
地上37階地下4階という巨大なビルが出現した。
ショッピングも楽しめる新しいビルに生まれ変わり、観光客も押しかけて、大変な数の訪問者の来場するビルになった。
2002年1月13日にホームページの『鑑定コラム』に「6)丸の内土地還元利回り3.6%」の記事を発表したところ、インターネットで同記事を見た人から、土地還元利回り、総合還元利回りの求め方、丸ビルの土地還元利回り2.9%を
データからどの様にして求めるのかという問い合わせが少なからずあった。丸ビルが現実に建って、丸の内の活性化の現実を実際に知ると、なお問い合わせが増えてきた。
それらの人には求め方を書いて、その都度返信していたが、希望者が多く居ることから、求め方を丸の内ビルを例にして説明する。
三菱地所の社長が丸の内ビルの事業計画を発表した。
その公表データは次のものでしか無い。それでもデータの発表は、画期的な出来事であった。
総事業費 650億円
賃料 坪当たり4万円
空室率 5%
キャシュフロー 71億円
の4つである。
この4つのデータから、丸の内ビルの土地還元利回り2.9%、総合還元利回り3.4%と私は分析し、『鑑定コラム』6)に発表した。
上記4つの条件ではあまりにも少なすぎ、近くの地価公示価格の内容から、次の4つの条件を付けて計算した。
土地価格 u当り 1300万円
容積率 1000%
レンタブル比 70%
建物の経済的耐用年数 45年
これら条件によって丸の内ビルの土地還元利回り2.9%、総合還元利回り3.4%の数値を、下記の推定計算によって求めた。
使用する公式は、
総合還元利回り=キャシュフロー(利益)/(土地価格+建物価格)
土地価格×土地利回り+建物価格×建物利回り=キャシュフロー(利益)
の2つの公式である。
キャシュフローは71億円と発表されている。
建物価格は、総事業費650億円を採用する。
土地価格のうち、土地単価は地価公示価格からu当り1300万円(坪当り1300万円×3.30578≒4297万円)とわかっている。
土地面積がわかれば、土地総額が求められるから、総合還元利回りは容易に求めることが出来る。しかし三菱地所は丸の内ビルの土地面積を発表していない。
土地面積を知るために、下記のごとくの回りくどい計算を行って求める。
売上高は109億円で、空室率5%であるから、可能売上高は、
109億円÷0.95≒114.7億円
である。
月額売上高は、
114.7億円÷12=9.56億円
となる。
賃料は坪4万円と発表しているから、賃貸面積は、
9.56億円÷4万円=23900坪
である。
賃貸面積率(レンタブル比)は、条件によって70%であるから、建築延面積は、
23900坪÷0.7=34143坪
である。
容積率1000%の条件であるから、土地面積は、
34143坪÷10≒3415坪
となる。
これで土地面積がやっとわかった。
土地価格単価は4297万円/坪である。
土地価格(総額)は、
4297万円×3415坪=1467億円
となる。
建物価格は、総事業費の650億円を採用するとした。
以上から土地・建物の価格は、
1467億円+650億円=2117億円
である。
キャシュフローは71億円であるから、総合還元利回りは、
71億円÷2117億円=0.0335≒0.034
3.4%と求められる。
土地還元利回りは以下のごとく求める。
ここでは土地利回りの用語を使用する。元本に乗ずる利回りは還元利回りとは云わない(この場合の利回りは「期待利回り」と呼ばれる)ことから、「土地利回り」の用語を使用して説明する。
土地利回りをXとする。
建物利回りは一定の割合に固定されているものでは無い。経済的残存耐用年数によっても異なる。経済的残存耐用年数が10年の建物と30年の建物では建物利回りは異なる。その建物利回りは、経済的耐用年数が短くなるにつれて高い値の利回りとなる。
建物利回りを求める方法にはいくつかあるが、簡略化した下記式で求める。
土地利回り+建物償還基金率相当率
しかし、建物償還基金率は不明である。適用利率が分かれば償還基金率は求めることが出来る。では償還基金率を求めるための適用利率を、どの様にして見つけ出すのか。任意に4%とか5%の数値を採用しても良いのかという訳には行かないであろう。
償還基金率の適用利率は、一つの方法として、既に分かっている建物の経済的耐用年数から、その逆数の利率を使用する。
耐用年数の一年の利率を単純に一年の建物償却率と考えれば、その一年の建物償却率を単純に耐用年数倍すれば、建物価格は償却してゼロになるという、極めて荒っぽい考え方による逆数の利率採用である。
建物の経済的耐用年数は45年という条件であったから、
1/45=0.0222
利率0.0222、期間45年の償還基金率(注1)は0.01323である。
建物の利回りは、
X+0.01323
である。
土地価格×土地利回り+建物価格×建物利回り=利益
の公式により、
1467億円*X+650億円*(X+0.01323)=71億円
の式が成り立つ。
これを解けば、
2117X =62.4
X=0.0294
≒0.029
である。
以上によって、土地利回りは2.9%と求められる。この利回りは、利益を還元すれば元本価格が得られる利回りであるから、上記利回りは土地還元利回りである。
『鑑定コラム』の記事の丸の内ビルの、
土地還元利回り 2.9%
総合還元利回り 3.4%
は、上記のごとく計算で求めた。
(注1)償還基金率の式に付いては、鑑定コラム433)に書いてあります。
鑑定コラム433)
「不動産鑑定士試験短答式のある出題問題」
(2003年7月8日追記)
建付増価
読者から丸ノ内ビルの土地面積は、地図ソフトで計算すると2650坪であり、私の計算の3415坪の面積は間違いであるとの指摘があった。
地図ソフトによる面積が正確に近く、丸の内ビルの土地面積は2650坪程度であるかもしれない。
ただ、丸の内ビルの用途地域の容積率は、丸の内地区の土地価格を代表する地価公示地に表示されているごとく、1000%である。
丸の内ビルの容積率は、実際には1400%近くの容積率と聞く。
容積率1000%の地区にありながら、容積率1400%近くの建物が建つことは、原則としてありえない。それが建ったということは、総合設計等による容積率の大幅な割増が行われている土地と考えられる。
レンタブル比を70%と条件を付けているが、実際は70%で無いかもしれない。正確なレンタブル比を外部から知る術は無い。
一応、レンタブル比70%、容積率1000%で土地面積は3415坪と求められた。この土地面積と実際の土地面積の差は、
3415坪−2650坪=765坪
である。この765坪の土地相当は、容積率1000%である土地が、容積率1400%近くの土地利用可能となったという容積割増による「建付増価」の現象による土地価格アップに相当すると考えられるのでは無かろうか。
本来は土地単価のアップで置き換えられるものであるが、土地単価は平方メートル当り1300万円と条件付けられているので、土地面積の増加という形で、建付増価の現象が出現したものと思われる。
「建付増価」とは、「建付減価」の逆の土地価格形成要因のものである。
土地が地上建物の利用によって、通常の土地利用の場合より、より多くの土地利用収益が得られることによって、当該土地の価格がアップする現象を言う。
読者の指摘から「建付増価」について、それはどういうものか、どの様に出現するのか、どの様にして求めるのかという当初思ってもいなかった問題について、具体例で考え、説明出来る機会が与えられ、具体例を提供することが出来た。
土地面積の指摘により、「建付増価」について述べる機会を与えて下さった識者の方に感謝致します。
鑑定コラム6)は、下記をクリックすれば繋がります。
鑑定コラム6)「丸の内土地還元利回り3.6%」
鑑定コラム687)「既存不適格容積率オーバーの建物の建つ土地の建付増加アップはない」
貸ビル・マンション等利回り、還元利回りに関して、本『鑑定コラム』に次の記事があります。参考になると思います。
鑑定コラム19)「還元利回りの求め方」
鑑定コラム28)「日本プライムリアルティ投資法人のリート」
鑑定コラム41)「田の還元利回り4.2%」
鑑定コラム154)「不動産の利回り(割引率とターミナルレート」
鑑定コラム179)「ある投資法人の購入ビルの利回り」
鑑定コラム186)「沖縄の家賃と不動産利回り」
鑑定コラム189)「東京の賃貸ビルのフアンドバブル化」
鑑定コラム257)「危険ゾーンに入った都心一部の貸ビル利回り」
鑑定コラム1111)「丸の内にあるビルのキャシュフローの還元利回りは2.8%」
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