ゴルフ場の倒産が相変わらず続いている。
倒産ゴルフ場を取得した後、或いは民事再生法適用の再生ゴルフ場を取得した後、それらゴルフ場を取得した会社の経営者が直面するのは、固定資産税の高額さとそれ以上に頭を痛めるのは、借地の地代の支払い額の大きさである。
ゴルフ場の土地全てが所有権であれば良いが、大半のゴルフ場は一部借地を抱えている。
それは、ゴルフ場を造る時に、土地所有者の中に先祖伝来の土地を手放すことにためらい、所有権を残す借地ならば応じる人がおり、一方、ゴルフ場築造者は早くゴルフ場を造りたいために、やむを得ず借地契約して土地確保を考え、ゴルフ場の完成を急いだためである。
山林の土地の状態であれば殆ど固定資産税は課税されなかったが、土地の用途が「ゴルフ場」になった途端に、ゴルフ場に土地を貸している土地所有権者に固定資産税がかかって来るようになった。
その額は半端な金額では無い。
ゴルフ場に土地を貸した土地所有権者は、当然借地人であるゴルフ場会社に固定資産税の面倒を見てくれと要求する。
ゴルフ場の地代は最低でも固定資産税の倍の金額を要求する。
ゴルフ場側も地主の主張は受け入れざるを得ない。
そうして合意したゴルフ場の地代は、年間で1平方米当り100円〜200円である。多くのゴルフ場の鑑定評価を行ってきたが、この辺りの地代水準が多い。
たかが年間で1平方米当り100円〜200円かと馬鹿にしてはいけない。
千葉の市原辺りの房総ゴルフ銀座と呼ばれる地域の山林の価格は、反当り100万円程度である。大都市近郊の山林の価格はその程度であろうが、それ以外の地方の多くの山林の価格は、反当り10万円程度である。もっと安い場合もある。
反当り10万円とは、平方米当り100円ということである。
即ち、ゴルフ場の地代1平方米当り100円を毎年支払っていることは、毎年山林を1反購入していることに相当するのである。
山林を1反購入出来るほどの地代を毎年支払っているのである。
と考えれば、ゴルフ場の地代はいささか高いのでは無かろうか。
そして、その高い地代を作り出す原因であるゴルフ場の固定資産税は高いということになる。
このゴルフ場の支払地代1平方米当り100円に目をつけて、ゴルフ場の土地価格を収益還元法で算出したゴルフ場の不動産鑑定書にお目にかかった。
100円÷0.04=2,500円
還元利回りをどういう理由で4%にしたのか、その根拠理由は分からないが、ゴルフ場の土地価格を1平方米当り2,500円と求めた鑑定である。
ゴルフ場の土地面積を100万平方米とすると、
2,500円×1,000,000 = 2,500,000,000円
25億円がゴルフ場の土地価格となる。
ゴルフ場の売上高は4億円であるとする。
ゴルフ場の価格は、売上高の最大2.5倍としても、
4億円×2.5=10億円
10億円の価額にしかならない。
そのゴルフ場の土地価格が、どうして25億円にもなるのか。
ゴルフ場の借地は全部が借地では無い。多くはゴルフ場のごく一部である。
その一部の借地の地代で、全部の土地価格を求めるとは、考え方が間違っているのでは無かろうか。
収益で土地価格を求めるのが現在の主流であると考えていたとしても、何でも収益還元法を使えば良いというものでは無かろう。
そもそも当該ゴルフ場の土地が全て借地で、1平方米当り100円であったとすると、年間地代は、
100円×1,000,000 = 100,000,000円
1億円の支払地代となる。
ゴルフ場の売上高が年間で4億円であるのに、その借地の支払地代が1億円となってしまったら、ゴルフ場の経営は果たして出来るのであろうか。
ゴルフ場の年間地代1平方米当り100円〜200円という地代は高すぎるということになる。その原因を作っているゴルフ場の固定資産税は、どう見ても高すぎると改めて言わざるを得ない。
なおゴルフ場に関する記事の鑑定コラムには次のものがあります。
鑑定コラム 29)「川奈ゴルフ場の価格」
鑑定コラム 62)「ゴルフ場の減損会計」
鑑定コラム 91)「日本のゴルフ場数は2067ヶ所」
鑑定コラム 129)「本間ゴルフ場の阿蘇のゴルフ場売却」
鑑定コラム 156)「いつまで続くゴルフ場鑑定のセミナー講師」
鑑定コラム 167)「ゴルフ場の取得価格と予想売上高」
鑑定コラム 174)「ゴルフ場の固定資産税は高すぎる」
鑑定コラム 198)「ゴルフ場の売却が続く大手不動産会社」
鑑定コラム 933)「ゴルフ場クラブハウス固定資産税価格58%の需給事情修正を認める判決」
鑑定コラム1519)「ゴルフ場の地代は年間u211円」
鑑定コラム1987)「令和元年10月1日アクセス統計」
鑑定コラム1989)「ゴルフ場売買例」