東京の超高級住宅地の土地を売却するのでなく、定期借地権を設定して賃貸借する場合の地代の評価依頼があった。
定期借地権とはどういうものか。
簡単に言えば、借地契約した土地が借地期間が到来したら更地にして返すことを約束した借地権である。
一般定期借地権とか事業用定期借地権などがある。公正証書による契約が成立条件である。その他成立するためにはいろいろな条件が決まっているが、それらについては専門的に解説する書物があるから、そちらに譲る。
依頼案件は、企業の減損会計に対応するものであった。
オフバランスにするか。オンバランスにするか。
どちらにするか 、企業の内部で検討した結果、売却せずに定期借地権の設定によって資産の活用を選択したようである。
恐らく企業の経理部、総務部、財産管理部、或いは経営企画部の人々が討議を重ね、外部の公認会計士等の意見も聞いて決断したものと思われる。
超高級住宅地の土地は、一度手放してしまったら二度と手に入れることは出来ないという思惑も絡んだものと思う。
自らが資金を提供して賃貸マンション等を建てることは、新たな資金の借り入れを伴い、借入金を減らしたい企業に取っては、更に借入金のリスクを増やしたくない。
定期借地権の設定にすれば、リスクは定期借地権者が背負い、土地所有権者はリスクゼロである。
土地所有権者にとっては土地使用料として地代が確実に入ってくる。そして定期借地権の期間が満了すれば、土地は更地として戻ってくる。
これらを充分考えて定期借地権設定による土地活用の選択に、土地所有権者は踏み切ったものと思われる。
一方、定期借地権者にとっては、土地購入による莫大な資金の必要が無く土地利用が出来る。投下資本は建物建設費のみで済む。
土地購入による借入金の返済、金利負担を全く考える必要が無く、都心の高級住宅地の家賃は高いから、採算は充分合うことになる。
家賃は、定期借地権という借地の上に建つ建物であるからと云って、所有権の土地上に建つ建物の家賃より安いということは無い。
家賃は、土地が定期借地権だろうが所有権であろうが同じである。
もっとも、以前都内のある借地上に建つ貸ビルの家賃評価で、借地権上の上に建つ建物の賃料は、所有権の上に建つ建物の賃料より安くなるという妙ちくりんな信じがたい理論構成をして賃料鑑定した地裁の鑑定人不動産鑑定士が書いた不動産鑑定書があったが。
定期借地権者は土地価格がどれ程高かろうが、それを心配する必要はない。
せいぜい、支払地代が事業収益を著しく圧迫しなければ良いのである。
定期借地権者は土地価格を考える必要はないかもしれないが、定期借地権の地代を評価する立場としては、やはり、土地価格は地代算出に絶対必要なものであり、地代算出の基礎となるものであるから、土地価格を鑑定評価しなければならない。
土地価格、固定資産税、都市計画税、建物建築費、建物建築費の借入金返済額と支払金利、建物の賃料収入、必要諸経費、プロパティマネジメントフィー、建物所有権者の利益・投下資本の回収等を考えて定期借地権の地代を評価せざるを得ない。
案件は保証金等の一時金は一切授受しないという条件の定期借地権であった。
求められた地代を、土地価格を尺度として土地価格に対する割合を計算すると、即ち地代利回りは、
定期借地権地代×12 ────────── = 0.016 更地価格1.6%であった。