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2145)収益還元法価格は開発法のベース価格にはならない

 更地の価格を求める手法の1つに開発法と云う方法がある。

 分譲マンション業者用に鑑定基準が認めた土地価格の鑑定手法の1つである。

 開発法を使用した不動産鑑定書を最近目にした。

 その鑑定書は、対象地上にマンション等の賃貸建物を想定し、想定賃料よりその賃貸建物の収益価格を求めていた。

 そこから建物価格を控除すれば、土地残余法で更地価格が求められることから、それで終わりと思って鑑定書を閉じようとしたが、まだ鑑定書の計算が続いている。何であろうと思って読み続けたところ、何と収益価格をベースにして開発法を行い更地価格を求めていた。

 建築工事費、開発負担金、販売管理費を投下資本収益率を使用して現在価値に割り戻している。

 「収益価格に販売管理費が必要なのか?」と首をかしげる。

 収益還元法で求められた収益価格も投下資本収益率で現在価値に割り戻し、収益価格の現在価値から建築工事費等の現在価値を差し引いて、土地価格を求めている。

 「何よこの開発法は? この不動産鑑定士は開発法とはどういうものか分かっているの?」
と益々首をかしげざるを得なかった。

 不動産鑑定評価基準(以下「鑑定基準」と呼ぶ。)は、更地価格の求め方について、次のごとく規定する。

 「更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。

 再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。

 当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。」
(平成26年改正鑑定基準 国交省版P49)

 鑑定基準は、更地の価格は取引事例比較法の比準価格と土地残余法による収益価格より求め、次に掲げる価格を比較考量せょと云っている。比較考慮せょと云っている手法は開発法による価格である。

 その開発法の適用で一体利用するのが合理的な場合の求め方について、鑑定基準は次のごとく云う。

 「一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格」 (平成26年改正鑑定基準 国交省版P49)

 開発法は、先に述べたごとく分譲マンション業者が土地買収する場合の土地価格を求める手法である。開発法のベースになる価格はマンション分譲価格、つまりマンション販売価格である。

 鑑定基準は、開発法のベース価格は「販売総額」つまり販売価格と云っている。収益還元法の収益価格をベースにして開発法を行えとは規定していない。

 ということは、私の見た開発法の前記鑑定書は間違っており、鑑定基準違反の鑑定書ということになる。

 鑑定基準違反の鑑定書では、その求められている価格を信用することは出来なく、その鑑定書は失当であり、適正価格の証明書にはなり得ないということになる。

 鑑定書を書いた不動産鑑定士は、当然自分の書いた鑑定書の正当性を主張してくる。

 「収益還元法の収益価格が販売価格であるから、鑑定書は間違っていない。」と。

 マンション業者の分譲マンション価格が収益還元法で求められた価格であろうか。購入する人はあちこちの分譲中の価格と比較検討して購入を決める。賃貸収入から収益価格を求めて購入などしない。

 不思議な鑑定書であるが、別のページで棟が違うが分譲マンションのu当り価格が記されている。

 賃貸建物の賃貸面積を分譲マンションの専有面積とみなして、掲載されている分譲マンション単価で計算した販売価格と収益価格をベースにした開発法の価格を比較すると、約2割程度安い水準である。

 開発法は、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定して分析する手法でもあることから、上記で約2割程度安い水準と分かれば、収益価格が販売価格であるという主張は成り立たないことになる。

 開発法はマンションの販売価格をベースにして土地価格を求める手法であって、収益還元法の収益価格をベースにして土地価格を求める手法でなく、その求め方は鑑定基準違反の求め方である。

 鑑定基準違反の求め方によって求められた価格を、適正な価格と認めることは出来ないであろう。それを適正な価格であると主張する方がどうかしている。

 不動産鑑定士の団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は、そうした不動産鑑定書が横行することを許すのか。

 不動産鑑定評価の監督官庁の国土交通省は、開発法は販売総額をベースにするものであるのを、収益価格をベースにした開発法の求め方の鑑定評価の行為とその不動産鑑定書を許すのであろうか。


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