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2150)出現確率百万分の2.6の収益還元法

 地価公示価格の鑑定書が公開されたので、令和2年の東京中央区の住宅地の賃貸マンションの家賃に占める公租公課の割合を調べて見た。

 公的評価のデータによる分析結果の方が信頼性が高い事から、地価公示価格の発表鑑定書のデータによった。

 中央区は商業地域の面積割合が高く、住宅地域の面積割合が低い。

 そのため住宅地の地価公示地は少なく、そのうち収益還元法を採用している地価公示地は6地点しか無い。

 その6地点の賃貸マンションの賃料収入に対する土地建物の公租公課の占める割合は平均で8.35%であった。

 東京の中心部にあり、土地価格が高いため土地の公租公課は高く、又建物も中層化となるため建物の固定資産税も高くなる。

 6データの分析一覧を記す。


公示番号 所在 年間賃料収入 千円a 土地公租公課 千円 建物公租公課 千円 公租公課:計b 公租公課割合 b/a
中央1 月島2−16−9 11697 134 829 963 0.082
中央2 明石町5−19 80569 1078 5482 6560 0.081
中央3 勝ちどき3−4−18 128100 1621 10115 11736 0.092
中央4 月島3−25−3 92551 1129 6927 8056 0.087
中央5 佃3−11−13 4350 83 213 296 0.068
中央7 佃2−12−12 118133 1464 9265 10729 0.091
平均           0.0835
標準偏差           0.009


 東京のど真ん中区にあって、土地面積約2万6,000u、延べ床面積約11.6万uで15階〜17階の建物4棟が建つ複合不動産の土地の鑑定書(以下「A鑑定」と呼ぶ)は、収益還元法を行っていた。

 賃貸面積は約7万uである。

 そのうち住宅が82%(他は店舗、保育所、高齢者住宅等)を占めている事から住宅地の賃貸マンションと云える。

 賃料収入は、月額255,890,000円である。

 年間収入は、

        255,890,000円×12=3,070,680,000円
である。

 この賃貸建物の必要諸経費の中の公租公課は、
       土地  36,600,000円
       建物  351,560,000円
       計   388,160,000円
であった。

 賃料収入に占める公租公課の割合は、
                     388,160,000円
               ────────── = 0.126                        
                   3,070,680,000円
である。

 東京中央区の賃貸マンション家賃の占める公租公課の割合は、0.0835であった。

 A鑑定の賃貸マンションの家賃に対する公租公課の割合12.6%が出現する確率を計算して見る。

 正規分布のZ値は、

                          データ値−平均値
               Z値 =───────────                        
                              標準偏差
である。

 標準偏差は0.009、データ値は0.126、平均は0.0835である。

 この数値を上記のZ値の算式に代入する。

                          0.126−0.0835
               Z値 =───────────                        
                              0.009
                     =4.7
 Z値は4.7である。

 Z値1.96の出現する確率は5%である。

 Z値2.57の出現する確率は1%である。

 Z値3.0の出現する確率は0.26%である。

 Z値4.7の出現する確率は、標準正規分布表によると1.3E-6とあるから、片側で百万分の1.3である。両側で百万分の2.6である。現実では出現はあり得ない率である。

 つまりA鑑定の収支のごとくの賃貸不動産が存在する事は現実としてはゼロであり、非現実も甚だしい絵そら事の賃貸収支計算である。

 約70%の出現率にするには、平均公租公課割合に、標準偏差×1倍の割合を加えた割合が、出現率約70%の公租公課割合である。下記の割合である。

               0.0835+0.009=0.0925

 A鑑定の求めている公租公課を、上記で求められた0.0925で割れば、出現率約70%の賃料が求められる。下記である。

              388,160,000円÷0.0925=4,196,324,324円
                                   ≒4,200,000,000円

 約70%の賃料出現率にするには賃料収入を42億円にすることである。

             4,200,000,000円÷3,070,680,000円=1.368≒1.37
 A鑑定の賃料を全体で37%アップすることである。

 A鑑定の賃料は大変安い賃料にあると云うことになる。市場性を全く考えずに意識的に賃料を低くする操作をしていることが窺える。

 意識的に低くしてもそれがバレることは無いと思っていたであろうが、数学的分析によって百万分の2.6でしか出現しない賃料収支であることがわかってしまった。

 出現率百万分の2.6の収益還元法で求められたA鑑定の収益価格が信頼できるハズがない。

 1つの街区でやっているのであるから、他の街区でも同じごとくの数字の操作をしていると云うことが大きく疑われる。A鑑定の信用など全く無い。かなり悪質な鑑定評価の行為である。

 店舗仲介情報会社の株式会社ビルズのホームページ「店舗相場タウン」2020年9月1日現在の調査によれば、当該地よりも南にある江東区豊洲の1階店舗の賃料は、坪当り33,979円である。

 A鑑定の1階店舗賃料は、u当り4,538円(坪当り換算 4,538円×3.30578=15,001円)である。賃料に相当の開きがある。

 賃貸住宅の2020年の賃料は、晴海2、3丁目で坪当り15,000円(u当り4,538円)前後である。最高値はタワーマンションの最上階の坪当り20,500円(u当り6,201円)である。居宅賃料は大幅に値上りするものではない。A鑑定のu当り3,660円は安い。

 当該地の南にある江東区豊洲5、6丁目で坪当り12,000円(u当り3,630円)前後である。中央区晴海と江東区豊洲では、豊洲魚市場が築地から移転したが、人々の受け取る場所的イメージの感覚は変わらず、川向うである。


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