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2156)都心3区の地価公示価格の開発法

1.開発法とは

 開発法は宅地見込地の価格を求めるために、更地価格を想定し、造成工事費、諸経費を差し引いて素地の土地価格を求める手法であったが、マンション土地利用が多くなるにつれ、住宅地の規模の大きい土地の場合にも利用する様になった。

 考え方は宅地見込地の場合と同じであり、更地価格をマンション価格に置き換えるだけである。

 マンションの開発法の求め方を簡略にすれば、下記の算式である。

     マンション価格−(建築工事費+諸費用+利潤+リスク等)=素地価格

 実務は、利潤とリスク等を投下資本収益率に置き換えて、開発スケジュールに併せて、投下資本収益率で割り戻して土地価格を求めている。

 上記式をより簡略化すれば、

     マンション価格−建築工事費等=素地価格

の算式となる。この算式が開発法の基本的な考え方であり、基本算式である。

 この算式をよく眺めて欲しい。

 基本算式を眺めていると、開発法の欠点が見えてくる。

 それは、マンション価格を一定にすると、素地価格は、建築工事費等によって変化するということになる。

 建築工事費等の中の最大のウエイトを占めるのは、建物の建築工事費であることから、この建築工事費が高ければ、素地価格は安い価格となる。

 建築工事費が安ければ、素地価格は高い価格となる。

 建築工事費が大変重要であることがわかる。

 同じことはマンション価格にも云える。

 建築工事費等を一定にして、マンション価格が高いと売れないからと云う最もらしい理由をつけて、マンション価格を安くすれば土地価格(素地価格)は安くなる。

 熟成した住宅地にあっては、土地価格水準はほぼ一定の水準にあり、それを著しく安く購入することは困難である。

 しかし、開発法を使用すれば、開発法優先で考えることから、販売するマンション価格を安くしないと売れないと云って安くし、建築工事費を高くすれば、素地価格(土地価格)は、いかようにも安くすることが出来る。

 そうした事を避けるためのブレーキになるのが、土地の取引事例比較法による比準価格である。

 比準価格のタガをはずせば、開発法のみとなるから、上記で述べたごとく土地価格はマンション開発業者・建設業者の利潤の餌食になり、周辺の更地価格の10%の価格にもなり得る。

 こうした現象が、開発法では生じるということを充分知っておく必要がある。

 この開発法の欠点を知っておかないと、とんでもない価格を求めてしまうことになる。

2.都心3区の住宅地の開発法

 地価公示価格の鑑定書が公開されるようになった。

 都心3区(千代田・中央・港)の住宅地の地価公示価格にも、開発法が採用されている公示地が千代田区3地点、中央区4地点、港区7地点、合計14地点ある。

 その公開されている都心3区の地価公示価格の開発法のデータから、総収入、総支出、建物建築費の関係を分析する。データ一覧は下記である。


東京都心3区 住宅地開発法          
    総収入百万円  総支出百万円  総支出割合 建築費 百万円 総支出/建築費
公示地番号 所在 a b b/a c b/c
             
千代田1 三番町6−25 6954 3036 0.437 2341 1.297
千代田3 六番町6−1 21331 8675 0.407 6542 1.326
千代田5 九段北2−3−25 10136 4347 0.429 3334 1.304
千代田7 一番町16−3 5021 2159 0.430 1556 1.388
中央6 佃3−3−9 4385 2462 0.561 1926 1.278
中央8 日本橋浜町3−28−2 3270 1938 0.593 1538 1.260
中央9 日本橋中州2−3 4238 2549 0.601 1990 1.281
中央10 晴海5−1−9 17341 10625 0.613 8461 1.256
港1 赤坂6−19−23 10129 3618 0.357 2605 1.389
港4 赤坂1−14−11 9259 3283 0.355 2357 1.393
港16 南麻布4−9−34 18982 5199 0.274 3301 1.575
港17 芝浦2−3−27 4272 2328 0.545 1858 1.253
港19 港南3−7−23 4364 2579 0.591 2142 1.204
港28 南麻布1-5-11 6272 2590 0.413 1963 1.319
港29 白銀台3−16−10 7498 3145 0.419 2320 1.356
平均       0.468   1.325
標準偏差       0.107   0.089


3.都心ど真ん中区の3つのマンション開発法

 都心ど真ん中区の3街区で、開発法を使った鑑定書がある。

 公示価格の開発法と同じ項目のデータは、下記である。


街区 総収入百万円  総支出百万円  総支出割合 建築費 百万円 総支出/建築費
  a b b/a c b/c
B 51753 43015 0.831 38197 1.126
C 111267 94950 0.853 84226 1.127
D 104990 89753 0.855 79719 1.126
平均     0.846   1.126


4.検討

 開発法が適正に行われているかどうかは、上記で記した数値の割合の値から判断できる。

 地価公示価格採用のマンション開発法と都心ど真ん中区の3街区のマンション開発法を比較検討する。

@ 総支出割合について

 総支出割合とは、 総収入に占める総支出の割合である。

   算式は、

                    総支出
                ────── = 総支出割合                         
                    総収入
である。

 地価公示価格都心3区開発法(以下「公示開発法」と呼ぶ。)と都心ど真ん中区の鑑定書の開発法(以下「鑑定開発法」と呼ぶ。)の総支出割合を比較すると、下記である。

                                            
       公示開発法    0.468
              鑑定開発法        0.846

 鑑定開発法の総支出割合は、公示開発法の総支出割合の平均値とあまりにもかけ離れている。
 
 総支出割合の差額が土地価格と云うことになるのであるから、割合が高くなればなるほど、土地価格は安くなる。

 経費が多くなればなるほど土地価格は安く、経費が収入を超えれば土地価格はゼロ円からマイナスになる。

 鑑定開発法の価格は、前の鑑定コラムで建築工事費のかさ上げをしている事、収入であるマンション価格を低く設定していると述べたが、ここでその影響がはっきりと現れていることになる。

 公示開発法の平均割合が適正な割合値である。鑑定開発法の0.846の割合値は、公示開発法の平均割合値から大きく離れている。

 この事から、この割合値で鑑定開発法の価格が不当と判断できる。どれ程不当な価格であるかは、その割合値の出現確率を計算する事で証明出来る。

 確率Z値は、下記の算式で求められる。

         
                          事例値−平均値
             Z値   =──────────                          
                            標準偏差

 標準偏差は0.107である。平均値は0.468である。データ値は0.846である。

 Z値を求めると、

                          0.846−0.468
             Z値   =──────────                          
                           0.107

= 3.5
3.5である。

 正規分布表で、Z値3.5の出現確率を求めると、0.000466(正規分布表の右側片側表の確率数値は0.000233である。両側では、0.000233×2=0.000466である。)である。

 出現率は、1万分の5である。

 統計数学では出現率5%(百分の5)以下は、信頼性が無く使用不可である。

 0.000466は、%に換算すれば0.0466%の出現率であるから全くダメである。

 出現率0.0466%の鑑定開発法は、信用出来ない価格の烙印が押される価格である。これで鑑定開発法の価格の不当性が証明された。

A 建築工事費に対する総支出割合

 開発法では、建築工事費は支出の金額としては大きなウエイトを占める。

 総支出は、その建築工事費の何倍にあるのかを示す割合である。

 開発法ではその割合はある一定の割合水準にあり、その一定割合、すなわち標準的割合と大きくかけ離れているかどうかを検討することによって、開発法の不当性を見抜く事が出来る。

   算式は、
                    総支出
                ──────                                        
                  建築工事費
である。

 建物工事費の総支出に占める割合を、公示開発法と鑑定間接法で比較検討すると、下記である。

       公示開発法    1.325
              鑑定開発法        1.126

 標準的には、総支出と建築工事費の関係は、総支出は建築工事費の1.325倍程度にあるということである。

 鑑定開発法は、それが1.126倍にあると云うことは、建築工事費がかさ上げされて高すぎることによつておかしな倍率関係が生じたことである。

 この倍率の値から、鑑定開発法の不当性を立証できる。

 総支出の総収入に占める割合のごとく、鑑定開発法1.126の出現する確率を求めてみる。5%以上(Z値が1.96以下)の出現率であれば、鑑定開発法は妥当と云うことになる。

 Z値を求める。標準偏差は0.089である。平均値は1.325である。データ値は1.126である。

 Z値は、
                          1.325−1.126
             Z値   =──────────                          
                           0.089

= 2.2
2.2である。

 正規分布表でZ値2.2の出現確率を求めると、0.0278(正規分布の右側片側の出現率は0.0139である。)である。

 出現率は、百分の3である。

 統計学では出現率5%以下は、信頼性が無く使用不可である。0.0278は、%に換算すれば2.8%の出現率であるからダメである。

 建築工事費と総支出の割合関係の分析からも、出現率2.8%の鑑定開発法は、信用出来ない価格の烙印が押される価格である。

5.結論

 鑑定開発法の価格は、総収入に使用しているマンション価格、総支出に使用している建築工事費が全く合理性が無く、市場性を反映せずに恣意的に操作されて作成されている可能性が甚だ高い事が、上記の統計的分析の出現率で証明された。

 総収入に占める総支出の出現率が1%以下の確率である鑑定開発法(B・C・D街区)の価格に信頼性は全く無い。

 鑑定開発法の価格が適正であると主張する不動産鑑定士及び不動産鑑定業者は、公示開発法が間違っていて、自分の開発法の方が正しいということになるが、公示開発法都心3区14地点全てが間違っているといいきれる自信があるのか。

 いいきれる自信があるのであれば、国交省に都心3区にある公示開発法14地点は不当鑑定であると申し立てて欲しい。

 鑑定開発法を行った不動産鑑定士及び不動産鑑定業者は、自分の正当性を当然主張してくる。

 その中で、時点が異なる、つまり鑑定時点は平成28年4月であり、公示開発法の時点は令和2年1月であり、令和2年1月のデータ結果をもって平成28年4月の鑑定を不適切と云うことは出来ないという反論が当然なされるであろうが、物事の根本原理は年月で変わるものでは無く、令和2年の原理も平成28年も同じである。統計学の正規分布の確率に対する考え方が変わると云うことは無い。

 令和2年の原理で平成28年の価格が不適切であると主張するその事が間違っている。鑑定開発法側の反論は失当となる。

 鑑定開発法を行った不動産鑑定士及び不動産鑑定業者は、不適切な価格であることは誰も分からないであろうと思って価格評価し、不動産鑑定書を発行したのであろうが、その浅はかな考えは通用しない。

 もっとまともな不動産鑑定士、不動産鑑定業者になれ。

 不動産鑑定士への信頼を著しく貶めるような事をするな。



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