1.開発法とは
開発法は宅地見込地の価格を求めるために、更地価格を想定し、造成工事費、諸経費を差し引いて素地の土地価格を求める手法であったが、マンション土地利用が多くなるにつれ、住宅地の規模の大きい土地の場合にも利用する様になった。
考え方は宅地見込地の場合と同じであり、更地価格をマンション価格に置き換えるだけである。
マンションの開発法の求め方を簡略にすれば、下記の算式である。
マンション価格−(建築工事費+諸費用+利潤+リスク等)=素地価格
実務は、利潤とリスク等を投下資本収益率に置き換えて、開発スケジュールに併せて、投下資本収益率で割り戻して土地価格を求めている。
上記式をより簡略化すれば、
マンション価格−建築工事費等=素地価格
の算式となる。この算式が開発法の基本的な考え方であり、基本算式である。
この算式をよく眺めて欲しい。
基本算式を眺めていると、開発法の欠点が見えてくる。
それは、マンション価格を一定にすると、素地価格は、建築工事費等によって変化するということになる。
建築工事費等の中の最大のウエイトを占めるのは、建物の建築工事費であることから、この建築工事費が高ければ、素地価格は安い価格となる。
建築工事費が安ければ、素地価格は高い価格となる。
建築工事費が大変重要であることがわかる。
同じことはマンション価格にも云える。
建築工事費等を一定にして、マンション価格が高いと売れないからと云う最もらしい理由をつけて、マンション価格を安くすれば土地価格(素地価格)は安くなる。
熟成した住宅地にあっては、土地価格水準はほぼ一定の水準にあり、それを著しく安く購入することは困難である。
しかし、開発法を使用すれば、開発法優先で考えることから、販売するマンション価格を安くしないと売れないと云って安くし、建築工事費を高くすれば、素地価格(土地価格)は、いかようにも安くすることが出来る。
そうした事を避けるためのブレーキになるのが、土地の取引事例比較法による比準価格である。
比準価格のタガをはずせば、開発法のみとなるから、上記で述べたごとく土地価格はマンション開発業者・建設業者の利潤の餌食になり、周辺の更地価格の10%の価格にもなり得る。
こうした現象が、開発法では生じるということを充分知っておく必要がある。
この開発法の欠点を知っておかないと、とんでもない価格を求めてしまうことになる。
2.都心3区の住宅地の開発法
地価公示価格の鑑定書が公開されるようになった。
都心3区(千代田・中央・港)の住宅地の地価公示価格にも、開発法が採用されている公示地が千代田区3地点、中央区4地点、港区7地点、合計14地点ある。
その公開されている都心3区の地価公示価格の開発法のデータから、総収入、総支出、建物建築費の関係を分析する。データ一覧は下記である。
| 東京都心3区 | 住宅地開発法 | |||||
| 総収入百万円 | 総支出百万円 | 総支出割合 | 建築費 百万円 | 総支出/建築費 | ||
| 公示地番号 | 所在 | a | b | b/a | c | b/c |
| 千代田1 | 三番町6−25 | 6954 | 3036 | 0.437 | 2341 | 1.297 |
| 千代田3 | 六番町6−1 | 21331 | 8675 | 0.407 | 6542 | 1.326 |
| 千代田5 | 九段北2−3−25 | 10136 | 4347 | 0.429 | 3334 | 1.304 |
| 千代田7 | 一番町16−3 | 5021 | 2159 | 0.430 | 1556 | 1.388 |
| 中央6 | 佃3−3−9 | 4385 | 2462 | 0.561 | 1926 | 1.278 |
| 中央8 | 日本橋浜町3−28−2 | 3270 | 1938 | 0.593 | 1538 | 1.260 |
| 中央9 | 日本橋中州2−3 | 4238 | 2549 | 0.601 | 1990 | 1.281 |
| 中央10 | 晴海5−1−9 | 17341 | 10625 | 0.613 | 8461 | 1.256 |
| 港1 | 赤坂6−19−23 | 10129 | 3618 | 0.357 | 2605 | 1.389 |
| 港4 | 赤坂1−14−11 | 9259 | 3283 | 0.355 | 2357 | 1.393 |
| 港16 | 南麻布4−9−34 | 18982 | 5199 | 0.274 | 3301 | 1.575 |
| 港17 | 芝浦2−3−27 | 4272 | 2328 | 0.545 | 1858 | 1.253 |
| 港19 | 港南3−7−23 | 4364 | 2579 | 0.591 | 2142 | 1.204 |
| 港28 | 南麻布1-5-11 | 6272 | 2590 | 0.413 | 1963 | 1.319 |
| 港29 | 白銀台3−16−10 | 7498 | 3145 | 0.419 | 2320 | 1.356 |
| 平均 | 0.468 | 1.325 | ||||
| 標準偏差 | 0.107 | 0.089 |
| 街区 | 総収入百万円 | 総支出百万円 | 総支出割合 | 建築費 百万円 | 総支出/建築費 |
| a | b | b/a | c | b/c | |
| B | 51753 | 43015 | 0.831 | 38197 | 1.126 |
| C | 111267 | 94950 | 0.853 | 84226 | 1.127 |
| D | 104990 | 89753 | 0.855 | 79719 | 1.126 |
| 平均 | 0.846 | 1.126 |
総支出
────── = 総支出割合
総収入
である。
公示開発法 0.468
鑑定開発法 0.846
事例値−平均値
Z値 =──────────
標準偏差
0.846−0.468
Z値 =──────────
0.107
= 3.5
3.5である。
総支出
──────
建築工事費
である。
公示開発法 1.325
鑑定開発法 1.126
1.325−1.126
Z値 =──────────
0.089
= 2.2
2.2である。