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鑑定コラム2147)「「土地鑑定単価は土地課税単価より高い」の立証」のコラム記事の中で、私は次のごとく述べた。
「最高裁の固定資産税の課税標準額と適正時価の関係に関する判例がある。
「適正な時価とは、賦課期日における客観的な交換価値であり、それを上回った評価は、その上回った部分について賦課期日における適正な時価を越える違法がある。」(最高裁判決 平成15年6月26日 平成10年(行ヒ)第41号)
この最高裁判決は課税標準価格が適正時価を上回ったらそれは違法と云っているのであり、その事から適正時価(鑑定評価によって求められる価格)は、課税標準価格よりも高い価格にあることを判示している。」
この判決を導き出したのは吉田修平弁護士であり、その裁判に全面協力し援護した不動産鑑定士は、森田義男氏である。
激しい一審からの論戦で、行政訴訟はほぼ役所が勝つという裁判で、よくぞ東京都に勝ち、固定資産税の最高裁判決を作ったと私は2人を尊敬する。
私も行政裁判の原告側について争ってきたが、全て敗訴である。
「役所は悪いことをしない、役所は間違ったことをしない」という先入観が裁判官にあり、その先入観を打ち破り、行政裁判で勝訴を勝ち取ることは大変難しい。
上記固定資産税の裁判は、平成の地価暴落の時に、現実の地価は大幅に下落しているのに、地価公示価格はあまり下落していなかったことに生じたのである。
それ故、元々の原因は不動産鑑定士の怠慢にある。地価が下落しておれば、それを的確に地価公示価格に反映させなければならない。
それをある地域を担当した不動産鑑定士は、急激に大きく下落するのは具合が悪いと判断したのか、甘い下落率の判断で地価公示価格評価した。
地価公示価格と固定資産税価格との間には30%の価格差があり、本来は固定資産税の標準価格は適正時価を超過するハズがない。
ところが生じた。
例えで説明すれば、50%の地価下落が生じているのに20%の地価下落として地価公示価格を評価したとすると、
現実の適正地価 1×0.50=0.5
固定資産税の課税標準価格 1×0.7×0.80=0.56
固定資産税課税標準価格の方が 0.56-0.5=+0.06 6%高くなってしまう。
最高裁判決は、この事を指摘して適正時価を超過した課税標準価格は違法と判断したのである。
適正時価と課税標準価格との間に、当初から30%の開差の安全余地があるにもかかわらず、課税標準価格が適正時価をオーバーしてしまったのである。
平成バブル崩壊で引き起こした二の舞を、地価公示評価を行う不動産鑑定士はやらない様に。
東京のど真ん中区に都有地がある。
その都有地は、現在オリンピック選手村の土地売却価格で住民と東京都で争われている都有地である。
まだ課税標準価格が決まっていないが、近くの公示価格・基準価格より固定資産税を推定3660万円と推定し、収益還元法から収益価格を求めた土地鑑定書があった。
固定資産税3660万円から推定される課税標準価格は、u当り82,000円となる。
その鑑定書は、求められた収益価格をベースに開発法を行うという仰天する鑑定を行い、鑑定土地価格をu当り27,000円とした。
住民はその価格はあまりにも低額過ぎると東京都を訴え争っている。
例えば、「役所は悪いことをしない、間違ったことをしないという」先入観を持つ裁判官がいて、東京都の土地価格判断は適正であると云う判決を下したとする。
住民側敗訴である。
裁判所はu当り27,000円が適正時価と判断したことになる。
これは例えであるが、もしそれが起こった場合、どういうことが生じるのか。
分譲マンションで民間が土地取得する事になるが、裁判で土地価格が決まった事になるから、その分譲マンションの課税土地標準価格はu当り27,000円以下と云うことになる。
東京都は課税の公平として、周辺の課税標準価格から見て甚だ安い事から値上げしょうとした場合、
「不動産鑑定士がu当り27,000円が適正価格であると鑑定し、裁判所もそれが適正であると判決されているのではないのか。その価格で東京都は都有地を売却したのであろう。所有権が離れたら安すぎると云って課税標準額を上げるとは何事か。随分と身勝手すぎるのではないのか。」
という反論が出されるであろう。
その土地価格訴訟で、東京都はu当り27,000円が適正だと主張し続け、裁判に勝ったとしても、その後に上記のごとくの怖い事態が待っている。
この事を都庁の訴訟当事者及び主税局は承知しているのであろうか。
あれはあれ、これはこれと云う自分都合の主張は通らないと私は思う。
下記に、不動産鑑定士の森田義男氏が頑張り吉田修平弁護士とともに、最高裁で勝訴を勝ち取った判決文を掲載する。
裁判長裁判官は甲斐中辰夫氏である。サブリース自動改訂契約の地代は違法という判断を最初に示し、その後のサブリース自動改訂契約賃料は借地借家法違反と云う道筋をつけた裁判官である。
事件番号 平成10(行ヒ)41
事件名 固定資産課税審査却下決定取消請求事件
裁判年月日 平成15年6月26日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人金岡昭,同小林紀歳,同江原勲,同鈴木朗の上告受理申立て理由一ないし四について
1 本件は,東京都千代田区a町b丁目c番dの土地(以下「本件土地1」という)及び同番eの土地(以下「以下「本件土地2」といい,これらを併せて「本件各土地」という。)の固定資産税の納税義務者である被上告人が,東京都知事によって決定され,東京都千代田都税事務所長によって土地課税台帳に登録された本件各土地の平成6年度の価格について,上告人に対して審査の申出をしたところ,上告人から,平成7年6月2日付けで本件土地1の価格を10億9890万1690円,本件土地2の価格を1103万3010円とする決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,本件決定のうち本件土地1について1億3629万2820円を超える部分,本件土地2について91万8500円を超える部分の取消しを求めた事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの。以下「法」という。)349条1項は,土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を,当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格で土地課税台帳又は土地補充課税台帳(以下「土地課税台帳等」という。)に登録されたものとすると定め,同項にいう価格について,法341条5号は,適正な時価をいうと規定する。平成6年度は上記の基準年度であり,これに係る賦課期日は,法359条の規定により平成6年1月1日である。
(2) 法388条1項は,自治大臣2 が,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め,これを告示しなければならないと規定し,同項に基づき定められた固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成8年自治省告示第192号による改正前のもの。以下「評価基準」という。)は,主として市街地的形態を形成する地域における宅地については,市街地宅地評価法によって各筆の宅地について評点数を付設し,これに評点1点当たりの価額を乗じて,各筆の宅地の価額を求めるものとする。この市街地宅地評価法は,@ 状況が相当に相違する地域ごとに,その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,A標準宅地について,売買実例価額から評定する適正な時価を求め,これに基づいて上記主要な街路の路線価を付設し,これに比準してその他の街路の路線価を付設し,B 路線価を基礎とし,画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設するものである。
(3) 自治事務次官は,平成6年度の土地の価格の評価替えに当たり,各都道府県知事あてに,「「固定資産評価基準の取扱いについて」の依命通達の一部改正について」(平成4年1月22日自治固第3号。以下「7割評価通達」という。)を発出し,宅地の評価に当たっては,地価公示法による地価公示価格,国土利用計画法施行令による都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格(以下「鑑定評価価格」という。)を活用することとし,これらの価格の一定割合(当分の間この割合を7割程度とする。)を目途とすることを通達した。
(4) 自治省税務局資産評価室長は4 ,各都道府県総務部長及び東京都主税局長あてに,「平成6年度評価替え(土地)に伴う取扱いについて」(平成4年11月26日自治評第28号。以下「時点修正通知」という。)を発出し,「平成6年度の評価替えは,平成4年7月1日を価格調査基準日として標準宅地について鑑定評価価格を求め,その価格の7割程度を目標に評価の均衡化・適正化を図ることとしているが,最近の地価の下落傾向に鑑み,平成5年1月1日時点における地価動向も勘案し,地価変動に伴う修正を行うこととする。」と通知した。
(5) 本件決定においては,評価基準にのっとり,本件土地1と本件土地2を1画地として評点数が付設された。この画地が沿接する正面路線及び側方路線の路線価を付設する上で比準した各主要な街路の路線価の基となった標準宅地(以下,正面路線価の基準となった標準宅地を「標準宅地甲」といい,側方路線価の基準となった標準宅地を「標準宅地乙」という。)の価格の評定に際し,7割評価通達及び時点修正通知が適用された。すなわち,本件決定は,標準宅地甲については,価格調査基準日である平成4年7月1日における鑑定評価価格を基に同5年1月1日までの時点修正を行い,その7割程度である910万円をもって,標準宅地乙(地価公示法2条1項の標準地でもある。)については,同日の地価公示価格の7割である560万円をもって,それぞれの1u当たりの適正な時価とし,これを基礎に,本件各土地の価格を前記1のとおり決定した。
(6) 標準宅地甲については,平成5年1月1日から同6年1月1日までに32%の価格の下落があり,同日におけるその1u当たりの客観的な交換価値は,890万6028円である。標準宅地乙については,平成5年1月1日から同6年1月1日までに33.75%の価格の下落があり,同日におけるその1u当たりの客観的な交換価値は,同日の地価公示価格の530万円である。
(7) 上記(6)の標準宅地の客観的な交換価値に基づき,評価基準に定める市街地宅地評価法にのっとって,本件土地1及び本件土地2の価格を算定すると,それぞれ10億7447万9380円及び1078万7810円となる。
3 原審は,@ 評価基準は,賦課期日における標準宅地の適正な時価(客観的な交換価値)に基づいて,所定の方式に従って評価をすべきものとしていると解すべきであり,その方式には合理性があるものの,本件決定で評定された前記2(5)の各標準宅地の価格は,平成6年1月1日のその客観的な交換価値を上回る,A同日における各標準宅地の客観的な交換価値と認められる前記2(6)の価格に基づき,評価基準に定める市街地宅地評価法にのっとって,本件各土地の価格を算定すると,前記2(7)の価格となるから,本件決定のうちこれを上回る部分は違法であり,同部分を取り消すべきであると判断した。
論旨は,原審のこの判断には,法341条5号,349条1項,388条1項の解釈適用の誤りがある旨をいう。
4 法410条は,市町村長(法734条1項により特別区にあっては東京都知事。以下同じ。)が,固定資産の価格等を毎年2月末日までに決定しなければならないと規定するところ,大量に存する固定資産の評価事務に要する期間を考慮して賦課期日からさかのぼった時点を価格調査基準日とし,同日の標準宅地の価格を賦課期日における価格の算定資料とすること自体は,法の禁止するところということはできない。しかし,法349条1項の文言からすれば,同項所定の固定資産税課税標準である固定資産の価格である適正な時価が,基準年度に係る賦課期日におけるものを意味することは明らかであり,他の時点の価格をもって土地課税台帳等に登録すべきものと解する根拠はない。そして,土地に対する固定資産税は,土地の資産価値に着目し,その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であって,個々の土地の収益性の有無にかかわらず,その所有者に対して課するものであるから,上記の適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。したがって,【要旨1】土地課税台帳等に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば,当該価格の決定は違法となる。他方,法は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を自治大臣の告示である評価基準にゆだね(法388条1項),市町村長は,評価基準によって,固定資産の価格を決定しなければならないと定めている(法403条1項)。これは,全国一律の統一的な評価基準による評価によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するために,固定資産の価格は評価基準によって決定されることを要するものとする趣旨であるが,適正な時価の意義については上記のとおり解すべきであり,法もこれを算定するための技術的かつ細目的な基準の定めを自治大臣の告示に委任したものであって,賦課期日における客観的な交換価値を上回る価格を算定することまでもゆだねたものではない。
そして,評価基準に定める市街地宅地評価法は,標準宅地の適正な時価に基づいて所定の方式に従って各筆の宅地の評価をすべき旨を規定するところ,これにのっとって算定される当該宅地の価格が,賦課期日における客観的な交換価値を超えるものではないと推認することができるためには,標準宅地の適正な時価として評定された価格が,標準宅地の賦課期日における客観的な交換価値を上回っていないことが必要である。
5 【要旨2】前記事実関係によれば,本件決定において7割評価通達及び時点修正通知を適用して評定された標準宅地甲及び標準宅地乙の価格は,各標準宅地の平成6年1月1日における客観的な交換価値を上回るところ,同日における各標準宅地の客観的な交換価値と認められる前記2(6)の価格に基づき,評価基準にのっとって,本件各土地の価格を算定すると,前記2(7)の各価格となるというのである。そうすると,本件決定のうち前記各価格を上回る部分には,賦課期日における適正な時価を超える違法があり,同部分を取り消すべきものであるとした原審の判断は,正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官甲斐中辰夫 裁判官深澤武久 裁判官横尾和子 裁判官泉徳治 裁判官島田仁郎)
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